試行錯誤しながら自立生活を営んでいる…『道草』宍戸大裕監督を迎え舞台挨拶開催!
重度の知的障害者と“自立生活“をめぐる問題を、障害を持つ複数の人たち、その家族や介護者たち、施設との関係を通して描き出す『道草』が、3月23日(土)より関西の劇場でも公開。初日には、大阪・九条のシネ・ヌーヴォに宍戸大裕監督とCIL豊中の渡辺亮さんと大岩裕司さんを迎え、舞台挨拶が開催された。
映画『道草』は、ヘルパー(介護者)付きでひとり暮らしをする知的障害者の人々を追ったドキュメンタリー。高校を卒業し自立生活をはじめて6年、スケボーや一輪車、絵を描くことが好きなリョースケ。20歳で自立し、街角の散歩道を介護者と丁々発止の掛け合いをしながら歩くヒロム。津久井やまゆり園の殺傷事件の被害にあい一命を取り留めたカズヤなどの日常を追う…
上映後、宍戸大裕監督とCIL豊中の渡辺亮さんと大岩裕司さんが登壇。自立生活の現場について触れる貴重な舞台挨拶となった。
知的障害の方を支援を2005年からしている渡辺さんは「僕らも一緒に散歩に出かけたり生活のサポートをさせて頂いたりしています。普段は利用者さんを見ていたんですが、映画を通して俯瞰で見られました」と本作の感想を話す。街中で様々な状況に遭遇しており「周りには微笑ましく観て頂ける方がおり、声をかけたり手を差し伸べて頂いたりするのは有難いです。しかし、冷ややかな目で見られることもある」と明かし「周りとの調和を保つ役割があるんだな」と本作から気づかされた。本作は、重度訪問介護制度を使って自立生活をされている方を描いている。元々は、身体障害者の方々が1970年代以降に切り開いてきた制度だったが、現在は、知的・精神障害者の方まで広がった。大岩さんは「身体障害者は話せるが、知的障害者は自分の思いが伝えらず、無理に思われる方も多くいると思います。でも、映画で描かれていたように、ずっと一緒にいる支援者が見えてくる」と感じている。さらに「この映画は僕が言いたいことが詰まっている映画で、支援者の方も含め多くの方に観て頂きたい」と訴えた。
宍戸監督は、2016年1月に岡部さんのお父さんから直接依頼を受け、撮り始めている。当時、知的障害者の入所施設で映画を制作しているなかで、行動障害のある女性が居て施設から退所依頼を受け、その後の行き場所が提示されない状況に遭遇した。その際に、岡部さんからもう一つの手段として自立生活を教えてもらう。最初は半信半疑で地域生活での意思表示に疑問があったが、実際に伺ってみて「介護者が自然と出来ていて新鮮だった」と話す。渡辺さんは自立生活の支援をしながら「最初は、周りの目を気にし過ぎていて、焦りが出た。そんな顔を利用者さんはよく見ていた。その方の行動をあまり制限しない方が、逆に周りの方への迷惑にならないようになる」と実感している。宍戸監督は「騒音問題など地域とのトラブルが起きないわけではないが、試行錯誤しながらやっている」とふまえ「自立生活をすれば皆が幸せになるわけではなく、試行錯誤の中で介護者も様々な思いを抱えながら関わっている」と率直に話し、自立生活への理解を訴え、舞台挨拶は締め括られた。
映画『道草』は、大阪・九条のシネ・ヌーヴォと京都・烏丸の京都シネマで公開中。また、4月13日(土)より、神戸・新開地の神戸アートビレッジセンターで公開予定。
- キネ坊主
- 映画ライター
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