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母ちゃんの死があったからこそ脚本が書けた…『洗骨』照屋年之監督(ガレッジセール・ゴリさん)と鈴木Q太郎さんを迎え舞台挨拶開催!

2019年2月9日

沖縄の一部の地域に残る““という慣習を題材に、ばらばらになってしまった家族が再び家族の絆を取り戻していく姿を描き出す『洗骨』が、2月9日(土)より全国の劇場で公開。公開初日には、照屋年之監督(ガレッジセール・ゴリさん)と鈴木Q太郎さんを迎えて舞台挨拶が開催された。

 

映画『洗骨』は、ガレッジセールのゴリさんによる監督・主演で、数々の映画祭で好評を博した2016年製作の短編映画『born、bone、墓音。』を原案に、ゴリさんが本名の照屋年之名義で監督・脚本を手がけた長編作品。沖縄の離島・粟国島に残る風習「洗骨」をテーマに、家族の絆や祖先とのつながりをユーモアを交えて描いていく。新城家の長男・剛が母・恵美子の「洗骨」のために故郷の粟国島に帰ってきた。母がいなくなった実家にひとりで暮らす父の信綱の生活は、妻の死をきっかけに荒れ果てていた。さらに、長女の優子も名古屋から帰ってくるが、優子の変化に家族一同驚きを隠せない。久しぶりに顔を合わせ、一見バラバラになったかにも思えた新城家の人びと。数日後には亡くなった恵美子の骨を洗う大事な洗骨の儀式が迫っていた…
父・信綱役を奥田瑛二さん、長男・剛役を筒井道隆さん、長女・優子役を水崎綾女さんがそれぞれ演じ、筒井真理子さん、大島蓉子さん、坂本あきらさん、鈴木Q太郎さんらが脇を固める。

 

上映後、照屋年之監督(ガレッジセール・ゴリさん)と鈴木Q太郎さんが登壇。本格的な映画出演が初めての鈴木さんはお客さんの反応に歓喜。とはいえ、照屋監督は「映画で一番最初に登場した時は、『お前が…!』と思ったでしょ」とツッコミを入れる。脚本づくりが2年前、撮影を終え1年が経ち、ようやく全国公開を迎え、照屋監督は「僕は今まで映画への出演が多かった。脚本・監督となると、役者がクランクインする前から役者の準備をしてスタッフと話し合い、何度も脚本が直される。苦労を重ね脚本が出来てキャスティングが決まり、撮影し編集し音を合わせて、ようやく作品が完成します」と感慨深い。最初から最後まで作品作りに関わり「我が子のように可愛い。早くお客さんに見せたい気持ちしかなかった。年賀状に子供の写真を載せる気持ちが解りました」と納得。全国公開初日、朝から大阪・東京のチケットは全て完売だと聞き、喜びを感じている。

 

照屋監督は、全国公開初日に大阪で舞台挨拶となった経緯を明かしながら「僕自身は小学校1年生から5年生まで阿倍野区の文の里に住んでいたので、大阪に馴染みがあり、好きな場所で知り合いも沢山いる」と大阪への親しみを込めていく。とはいえ、沖縄では多くのお客さんが入っているが「全国の方が果たして沖縄の風習に興味があるのか気になりました。果たしてゴリの映画に来てもらえるか」と心配だった。2006年から短編映画を毎年撮り続け、今年で12本も撮っているが「世間的には無名な監督なので、お客さんが入らないんじゃないか。2,3人入って、その方達がおもしろいってツィートしてくれて徐々に増えていく」と予想。舞台挨拶回も満員となり「何が起こったんだろう。我々2人の舞台挨拶があることを分かってくれて来てくれた。主要キャスト3人ではないのに…」と驚いた。

 

既に作品を観た方から様々な感想を受け取っているが、高安信子役である大島蓉子さんのファンになった方が多かったと照屋監督は受け止めている。「最高の演技ですよね。沖縄は、一番年上の女性であるおばあちゃんがヒエラルキーのトップなんです。トップが家庭の秩序を作っていく。毒を吐いたり汚い言葉を遣ったりする役ですが、嫌みがない。根底には愛がある」と解説。「現場では凄くパニック状態になるが、本番では完璧に演じられる」と太鼓判を押す。鈴木Q太郎さんについて、ドラマや映画への出演があまり無かったが「キャストとしてぜひ欲しいからお願いした。撮影では、『用意、スタート!』となった瞬間にバラエティーの癖で急にカメラ目線で台詞を話す。芸人だから、喋る時に手仕草をつける」とコメント。これを受け、鈴木さんは「『普段はそんなうごきをしないだろ』と監督に言われましたね。コントではついつい動いてしまう」と反省していた。

 

奥田瑛二さんについて、照屋監督は「最初はカッコいい役作りをしてした。ファーストシーンの後に『”奥田瑛二”が残っているので、捨ててもらっていいですか』とお願いしたら『お前、誰に向かって言ってんだ』と言われた。本人は冗談のつもりだったけど、冗談に思えずビクッとした。『監督が言うことは合っているから、全部言うこと聞くよ』と気持ちよく演じてくれた」と信頼を寄せている。水崎綾女さんは妊婦の役だったが、大きなお腹を撮休でもずっと付けており「妊娠の経験がないので、お風呂以外の時間はずっと付けており、役作りが凄い。町を歩いていたら、おばあちゃんに『もうそろそろ産まれるんじゃない』と話しかけられて『そうなんです』と、嘘をつくことに苦しみながら応えていた」と役者魂を称えた。撮影後に田舎に一軒しかない食堂で一緒に夕飯を食べていたが「奥田さんと水崎さんしかいない時、島の人に『奥田瑛二が若手女優を孕ませて、産むまでは沖縄に隠れてろと云われて潜伏しているんじゃないか』と思われて誰も声をかけない」と明かし「映画が始まってようやく分かってくれた」とホッとしている。なお、奥田さんから「監督、クランクイン前に、奥さん役の遺影がほしい。気持ちを作りたい」と云われ、奥さんの恵美子役である筒井真理子さんは台本を読み「遺影の写真はしっかり撮りたい」と撮影に挑んだ。何百枚も撮ったが「恵美子の優しさが出ていない」とネバる程にストイックで、棺桶に入るシーンも何度もメイクを重ねたことを監督は明かしていく。鈴木さんは、初めて映画の現場で演技がわからず「映画は同じシーンを様々な角度で撮る。ちゃぶ台にゴツンと頭をぶつけるシーンを全て本気でやっていたら、正面から撮る時に頭が血で滲んでしまい、必死で隠してもらった」と振り返る。また、俳優が泣くシーンへの挑み方に驚いていると、照屋監督は「2パターンある。役作りし過ぎると精神的に疲れるから、わざと違う話をして気を紛らわして急に本番に集中する人。逆に話しかけられることを拒んで役になりきる人がある」と解説した。

 

照屋監督は、これまでに、沖縄や様々な場所で話してきたが「質問コーナーの際には、ご自身の親が亡くなったことに重ね合わせて、感情が昂って泣く方が多い。沖縄では古謝美佐子さんに来てもらい生で『童神』を歌ってもらって泣き出す方も多い」と振り返る。本作を制作した経緯について「僕自身も母親を亡くした。”母親って死ぬんだ…”と不思議だった。産まれた時から母親が当たり前のようにいて、世話を焼いてくれて、40歳になって子供が出来ても、いつまでも僕を子ども目線で見てくれる。親からすればいくつになっても子どもは子ども」と母親の重みを語っていく。「パワフルな母ちゃんが心臓の病気で亡くなり、通夜では寝ずの番を行った。母ちゃんの死に顔を見ながら『母ちゃんって死ぬんだな』」と感慨深げに、昔の思い出を辿った。「『自分が今生きているのはこの人が産んでくれたかぁ』と思った時に、ご先祖様を辿って感謝していた。祖先を上っていき、人類が何万年も前に誕生し、その人達が生きることを諦めずに様々な困難を乗り越えて命を繋いできてくれたから今の自分がいる」と思思い「祖先から母ちゃんへと通じて僕まで繋がった長細い一つの体と祖先が一体化した感覚を覚えている。母ちゃんの死があったからこそ、この脚本が書けた」とお母さんに感謝している。

 

最後に、鈴木さんは「自分が出演している作品ではありますが、良かったですよね。様々な人に観て頂きたい」と期待を寄せた。照屋監督は「テレビと違い、映画館は自分で時間を作り、赤の他人と隣同士で座って観る特別な空間。これだけの方々が時間を作ってくれた」と感謝を表す。また「映画は物凄く多くの方が関わっている。皆が本気で頑張って表現してくれる。汗と血が混じったこの作品が我が子のように可愛く、どうやったら報われるか。出来るだけ多くの方に観て頂きたい」と思いを込め、舞台挨拶は締め括られた。

 

映画『洗骨』は、2月9日(土)より、大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマ、京都の T・ジョイ京都、神戸の109シネマズHAT神戸など全国の劇場で公開中。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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