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監督生活20周年を迎えた今じゃないと撮れない…!『ハード・コア』山下敦弘監督を迎えトークショー開催!

2019年2月2日

社会に溶け込めない不器用な男たちの人生が、謎のロボットの出現によって一変していく様を、おかしくも切なく描き出す『ハード・コア』が、全国の劇場で公開中。2月2日(土)には、大阪・十三の第七藝術劇場に山下敦弘監督を迎え、トークショーが開催された。

 

映画『ハード・コア』は、伝説的コミック「 平成地獄ブラザーズ」を実写映画化。あまりにも純粋で不器用なために世間になじめずに生きてきた男・権藤右近。群馬の山奥で怪しい活動家の埋蔵金堀りを手伝って日銭を稼ぐ彼にとって、心優しい仕事仲間・牛山だけが心を許せる相手だった。右近の弟でエリート商社マンの左近は、そんな2人の無為で自由な日々を歯がゆい気持ちで見守っている。ある日、右近と牛山は、牛山が暮らす廃工場で、古びた1体のロボットを見つける。その分野に詳しい左近が調べると、実は現代科学すらも凌駕する高性能なロボットであることが判明。彼らはロボットと不思議な友情を築いていく一方で、その能力を使って巨額の埋蔵金を密かに発見してしまう…

 

上映後に、山下敦弘監督が登壇。和やかな雰囲気のなかでトークショーは始まった。

 

5,6年前の頃、本作のラインプロデューサーでもある原田耕治さんから、狩撫麻礼さん原作で、いましろ たかしが書いた「タコポン」のドラマ化を提案された。そこで、山下監督は同じコンビによる「ハード・コア」を提案。読んでもらったら「おもしろいですね」と反応、「勇者ヨシヒコ」のラインプロデューサーでもある原田さんに「山田孝之が原作を好きなんですよ」と伝えた。以降、映画製作に動いてもらい、クランクインできたのが4,5年後。ようやく昨年公開となった。

 

いましろたかしさんの大ファンである山下監督は、大学生の頃、いましろさんの漫画が手に入らず「ハーツ&マインズ」の1巻を古本屋で見つけて読んでいた(2002年に再発売された)。ダメな人達が主人公であり、山下映画に通底する人物像と重なる。山下監督の初期作品『リアリズムの宿』はつげ義春さん原作の映画であるが、ラストシーンはいましろさんの漫画に同じシーンがあり「少しずつ、いましろさんの漫画からのエピソードやニュアンスを取り入れている」と意識しており、今作は念願の映画化。出演の荒川良々さんとは10年前に出会った際に「ハード・コア」で盛り上がった。佐藤健さんのキャスティングに驚くが「山田君と共演している作品がいくらかあり、可能性にかけて声をかけた」と明かす。結果的に、メジャー級のキャストなのにアングラ感が勝った様相となった。なお、本作で印象的なAIロボット、ロボオには、スーツアクターではなく、オシリペンペンズの石井モタコさんが入っている。「荒川良々さんと石井モタコさんは元々仲が良い。2人がずっと一緒にいて、健君が出る日は山田君と2人でいる。」と明かした。また石橋けいさんがモンスター的な存在感がある女性として出演しているが「原作よりモンスター度も凝縮した。原作にはお茶目さがある。『松ヶ根乱射事件』や『オーバーフェンス』の女性像は『ハード・コア』の多恵子に由来する」と解説する。

 

2019年は山下監督にとって監督生活20周年を迎える。なお、1999年のデビュー作『どんてん生活』は第七藝術劇場で上映された。今作が20年の集大成となったが「20周年は偶々だった。作っている時は、とにかくバランスをとったり力を出し切ったりしないことをテーマにしていた」と慎重に。夜のシーンが多く、寝れない日が続いて辛かったが「とにかくどんな形であれ『ハード・コア』を世に出したい。今じゃないと撮れない。誰かがやる前に作り上げたかった」と自身を煽っていた。だが、山田孝之さんは冷静に山下監督を鑑みており「途中から俺の状態に気付いてフォローしてくれた。前のめりな俺に対して冷静になってくれた」と信頼を寄せている。

 

なお、今回の映画では、原作とはラストシーンが違う。山下監督は脚本の向井と2人で話し「これじゃ終われないかな」と決断。自分達なりに考え直しながらも「若い頃はグッと来たが、40歳を過ぎて、原作のラストがロマンチックに感じる歳でもなくなってきた。ロボオの判断はどうなのか?自分達の願望もあったが、プロデューサーや出演者らに相談もしながら、ギリギリまで迷った」と告白。20代の頃に影響を受けた漫画だったが「正直言えば20代の頃に読んだ時は感動して映画化したいと思った。40代を迎え、映画化するために再読すると、あの頃の感動はなかった。映画化が難しい」と痛感。当時の頃の自分に向けて「20代の頃の自分になったつもりで、あの頃の自分はこの漫画に感動し、興奮した塊を再現するためを目指して作った」と振り返る。今の思考から発するアイデアは却下した上で「唯一、今の視点を入れなきゃいけないと思ったのはロボット。ロボオの在り方。漫画が描かれた当時よりも進歩している。現代に置き換えるうえで必要」と熟慮した。基本的には20代の頃にあった自身の感覚に向けており「現場では冷静。原作が好きだからこその興奮度と現場にいる歳下の子達との興奮度は違う。20代のあの頃の自分の気持ちや純度が違う。当時を想像しながら作った」と顧みる。

 

山下監督の自主映画時代への愛情を感じる作品となったが「インディペンデントな取り組みはこの先はやらない。これを最後にしよう」と徹底的に取り組んだ。40歳を迎えた現在は「良くも悪くも、今自分が持てる力を出し切って、思いを持った自分が好きな作品を作った時に言い訳が出来ない一本が待っている。そこからリスタート。これが新人監督らしさが抜けた後の一本として、次はどうなるのか。1つの基準になる」と意気込んでいる。

 

映画『ハード・コア』は、大阪・十三の第七藝術劇場で公開中。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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