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二度と観たくない、でも、何度も観て気づいてほしい…『飢えたライオン』松林うららさんと緒方貴臣監督を迎え舞台挨拶開催!

2018年10月14日

性的動画に映っているというデマを流され自殺した生徒の虚像が加熱する報道によって社会に飢え付けられていくさまを描く『飢えたライオン』が関西の劇場で10月13日(土)より公開。10月14日(日)には、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田で松林うららさんと緒方貴臣監督を迎えて舞台挨拶が開催された。

 

映画『飢えたライオン』は、報道やネットなどがもたらす情報の加虐性を描いたドラマ。ある高校の朝のホームルーム。瞳のクラス担任が未成年の淫行容疑で警察に連行された。担任の性的な動画が流出し、その相手が瞳だというデマが学校内に流れ出す。最初は軽く考えていた瞳だったが、彼氏や妹からも動画の噂について聞かれるほど、デマがさも事実かのように広がり、追いつめられた瞳は自殺という道を選択してしまう。担任の逮捕、生徒の自殺という流れにより、マスコミの報道はさらに加熱。ネットなどにより瞳の「虚像」が作られていく…

 

上映後、松林うららさんと緒方貴臣監督が登壇。映画の世界観を引きづったお客さんを和らげるように、2人による舞台挨拶が行われた。

 

昨年の春、松林さんが24歳の時に撮影された本作。高校生を演じるにあたり、女子高生の研究から始まり、感情面を監督と一緒に脚本から分析しながら役作りに励んだ。松林さんが主人公となった決め手について、緒方監督は「いい意味で女優っぽくない」と挙げる。主人公の瞳はSNSでは人気があるという設定。写真や動画で自身を盛り上げて、実際とは違う虚像を作っているため「女優っぽさがあると違う」と判断。700人以上の候補から、最終的に松林さんが選ばれた。だが、唯一のネックとして、年齢を挙げる。可能なら高校生に近い年齢の人達でやりたかったが「こういう作品なので、若ければ若い程、演技力が障害になる」と分析。高校生は特別な存在であるため「社会に出ておらず、純粋無垢で、人の顔色を伺わない。それらを表現するにあたり、彼女を最初に見た時に迷った。見た目も本当の女子高生を隣に置くとあからさま」と告白。さらに、制服審査も行ったが「制服が似合うかどうか。コスプレに見えてしまったらダメ。写真を以って僕を騙してほしかった」と意図を明かす。松林さんが送ってきた写真を見て「ヒドかった。もしかしら高校生に見えないかもしれない」と不安が増した。松林さんは「私は私立高校出身で、セーラー服しか持っておらず。田舎っぽいブカブカなセーラー服を着て、お母さんに撮ってもらって緒方監督に送った。それがあまり気に入られなかったみたいで…」と告白。緒方監督は「本当にどうしようかと考えた。場所を用意しヘアメイクさんと準備して、本当に高校生に見えるかどうか最終チェックさせてもらい、OKになった」と、どうにか一安心。なお、緒方監督は衣装についても細かくチェックしていった。松林さんが「緒方監督は非常に下着にこだわりがありますね」と指摘すると、松林監督は「衣装部さんに事前に依頼して、衣装合わせの際に用意していたが、依頼通りではなかった。埒が明かなかったので、僕が買いに行きました。クランクイン前日に原宿の下着やさんを周り時間をかけ見つけた」と明かす。さらに、松林さんが「上下の柄違い等、拘っていました」と話すと、緒方監督は「彼女は、ホテルに行くことを前提にしていないので、細かい箇所を気にかけ、シングルマザーのお母さんが下着を買っている設定にした。お母さんは娘がまだそこまで性的な興味を持っていない子供だと思っている。そんな僕の中の設定があるので、拘りました」と説明した。

 

本作の好きなシーンについて、松林さんは、女子高生4人がトイレで化粧しているシーンを挙げる。リハーサルに時間をかけており「女子高生のキャピキャピ感を出すのが難しく、共同作業で作り上げた努力の証が出ている」とお気に入り。さらに、襲われるシーンについて「車のバックミラーに映る演出が素晴らしい」と気に入っている。緒方監督は、まず、瞳が屋上への階段を上っていくシーンを挙げた。特に何も起きないシーンではあるが「よくある映画やドラマのシーンと違って、実際は鍵が閉まっていることを本作で描きたかった」と重要度を解説。さらに、ゴミ捨て場のシーンを挙げ「瞳の家が引っ越して部屋が空っぽになっているシーンを描いた後に、ゴミ捨て場を映している。ゴミに集っている虫やカラス等を画に入れているので、それまで観てきた作品の世界観を一枚の画に僕は凝縮している」と述べた。なお、主人公の瞳は、過酷な状況に追い込まれながらも、一度も泣かない。松林さんは、脚本を読んだ時に「私だったら、お母さんの前で涙を流しながら訴えると思う。監督に、この感情について相談すると『ここでは泣かない』とずっと言われてきた。瞳は強いわけではないが…何故泣かなかったんだろう…」と思慮に思慮を重ねた。緒方監督は「彼女の家庭にはお父さんがいない。長女として、お母さんを心配させたくない」と説く。演出にあたり「彼女が泣いている顔を正面から映してしまうと、観客は完全に感情移入してしまう。泣いているシーンは必要だったが、感情移入させたくない」と心がけ、背部から撮影した。

 

最後に、緒方監督は「僕はこの映画を二度と見たくないと思ってもらえるように作っている。矛盾しているが、映画は2度3度と観てもらわないと気づかない場所が沢山あるので難しいですね」と苦笑しながらも、本作の意図を伝える。松林さんは「私からしても何回も観る映画ではないし、観た後に胸糞悪くなる映画ですし…でも、幸せになる映画とかばかりではなく、たまにはこうこう映画で考えさせ想像させる映画を観るのは貴重なこと。珍しい映画です。本作には日常にありふれたシーンがあると思うので、明日以降も本作を思い出してくれたらいいなという作品です」と思いを込め、舞台挨拶は締め括られた。

 

映画『飢えたライオン』は、10月13日(土)より、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田、神戸・元町の元町映画館で公開中。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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