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”何だ、これは!”言葉に出来ない思いが渦巻く…『愛しのアイリーン』安田顕さんと吉田恵輔監督を迎え先行試写会開催!

2018年8月3日

女性を知らない中年男性がお金で買ったフィリピン女性と国際結婚する様を通じて日本が抱える社会問題を映し出す『愛しのアイリーン』が9月14日(金)より関西の劇場含め全国ロードショーされる。公開に先駆け、8月3日(金)に、大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマに安田顕さんと吉田恵輔監督を迎えて先行有料試写会が開催された。

 

映画『愛しのアイリーン』は、国際結婚した主人公を通して地方の農村が内包する問題を描いた新井英樹さんの漫画を実写映画化。42歳まで恋愛を知らず独身でいた岩男が、久しぶりに寒村にある実家に帰省する。しかし、実家では死んだことすら知らなかった父親の葬式の真っ最中だった。そんなタイミングで帰ってきた岩男がフィリピン人の嫁アイリーンを連れていったため、参列者がざわつき出し、その背後からライフルを構えた喪服姿の母親ツルが現れる…

上映前、安田顕さんと吉田恵輔監督が登壇。安田さんと吉田監督は、感謝を込めてご挨拶。

 

今回の大阪でのキャンペーンで、安田さんは、浜村淳さんにお会いし、一入の喜びを感じた。舞台公演で大阪に来ることが多く「大阪のイメージはお客様の印象が第一にある。感情を表に現し、表現が豊かな方達が多い。良かった時の拍手が強く、面白さに関わらず、エンターテイメントに対してビビッドに反応される方が多い印象がある。この作品を観てどう感じられるか」と楽しみにしている。吉田監督は「ここ10年、作品ごとに大阪へ来ている。大阪の方は観た後の感想や言いたいことをわぁっと言いそうなイメージがある」と率直に話す。これを受け、安田さんも「大阪の取材では、吉田監督への熱い想いがヒシヒシと伝わってくる。質問というより自分の感想をずっと述べ続けている方もあり、情熱が凄いですね」と今作での取材を振り返る。

 

主人公の宍戸岩男を演じるにあたり、安田さんは「撮影前に監督と一席を持ち、監督が20年に渡ってずっと温め続けた、無茶苦茶に思いのある映画だとを伺った」と明かし、覚悟を以って役に向き合い撮影に臨んだ。作品の公開を目前に控え、吉田監督は「甲子園の夏が終わったような気分。燃え尽きた感じになっています」と感慨深い。撮影中の安田さんについて「役が乗り移っている、役者だから当たり前だが、安田さんはホテルを出た時から。撮影後に帰ってもまだ暫く同じ状態だから、岩男としてしか会っていない気分」と振り返るが「作品に賭ける思いを強く感じ有難いが、オフの気分でいると、私がサボっているみたいだ」と本音を漏らす。これを受け、安田さんは「監督は立場上、作品全体を見ないといけないから。僕は役に集中するだけでいい」とフォローする。また、アイリーンを演じた、フィリピンの女優であるナッツ・シトイさんについて、吉田監督は「役の入り方や作り方は、本当に尊敬する。フィリピンの女優はその場で作り上げるんです」と敬意を表す。

 

長年の経験で、各々の共演者とパッションやグルーブを与え合い影響を受けてきた安田さんは、今作では「何よりナッツ・シトイさんのお芝居は、情熱があり、テンションも上がる。僕も監督も皆も思っていたアイリーンがそこにいた。僕も片言の英語でコミュニケーションをとり、足りないところは、ボディーランゲージでやろうとしたので、アイリーンと岩男のようなコミュニケーションを現場でもやっていました」と振り返る。木野花さんについても「芸能界における大切な素晴らしい方ですが、この映画を観て改めて脱帽しました」と驚愕。安田さんが本作では主役を担っているが「木野花さんとナッツ・シトイさんと僕の3人の主役がいる。僕を入り口にして、この作品がもっと様々なところで感じてもらえる人が増えたらいいな」と期待している。

 

フィリピンでの撮影について、安田さんは「現場の雰囲気も含め楽しかった。監督や制作スタッフは大変だったと思いますけど、僕は気楽でしたね」と思い出す。吉田監督は「日本から5人ぐらいしか参加していない。あとはフィリピンのスタッフが30人程度いたが、何のスタッフかよくわからない。とにかく手に毎回消毒液をかけてくれて、”welcome!”と言ってくれるだけの役割の人もいた。エンドクレジットにどう書けばいいの?」と困惑したことも。安田さんは、本作について「日本の夏と冬とフィリピンでのシーンがなければこの作品は成立しない」と解説。これを受け、吉田監督は「冬は雪が降るシーンもあるから、制作スタッフは必要だし、運転も大変ですよね。過酷だけど、テンション上がり”祭りだ!わっしょい!”みたいな気持ちになって、盛り上がって楽しく撮影していましたね」と懐かしんだ。雪が降る中での撮影では「照明部さんは、担当外の時間に雪の階段を作って皆が歩きやすいようにしてもらった」と感謝しており、安田さんも「共に助けわなきゃ、命の危険を感じる」と共感した。

 

最後に、吉田監督は「今作、どういう物語か言葉にするのが難しく、僕自身も良い言葉が見つからない。皆さんが観て、もし良かったらSNSにアップしてください。素敵な言葉があったら次の取材でパクろうと思います」と和ませる。安田さんは「先に観させて頂いたが”何だ、これは!”と感じた。凄いものを観たなという感覚があり、その日一晩全然眠れず、次の日の朝にドラマのロケがあったが、全然頭から離れない。”何だったんだ、あれは!”とずっと感じるような、何年かに1回あるかないかのような渦巻くものを感じた」と鑑賞後の感想を吐露する。さらにボクシングでの例えを用いながら「とにかく、この映画を観て、肯定否定問わず、素直な感想を僕は知りたい。一人でも多くの人に届けたいという思いは絶対変わりません。ぜひ、リアクションをSNS等でして頂けたら幸いです」と思いを込め、舞台挨拶は締め括られた。

 

映画『愛しのアイリーン』は、9月14日(金)より、大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマ、難波のTOHOシネマズなんば、西宮のTOHOシネマズ西宮OSほか全国ロードショー!

(C)2018「愛しのアイリーン」フィルムパートナーズ(VAP/スターサンズ/朝日新聞社)

寒村を舞台に四十男とフィリピン妻を取り巻く、欲望と憎悪の嵐

日本の縮図のような少子高齢化・嫁不足・外国人妻・後継者不足、様々な問題を抱える寒村を舞台に、欲望と憎悪に振り回される人々の悲喜劇を濃密な性描写と胃の痛くなるような人間描写で描き出していく。

 

現実と誇張のギリギリのすき間を射抜く絶妙の「人間描写」

原作者の新井英樹氏は強烈な生々しさを抱えた人間描写に定評のある漫画家。現実世界においてはリアリティを多少欠いてさえ見える彼の人間描写が、実写という媒体にどこまでマッチするかは心配していたが…リアリティが壊れるギリギリまで誇張された欲望を抱えた人間たちの姿を、見事に実写に落とし込み、濃厚なリアリズムを醸し出す映像空間を産み出した。「久しぶりに出会った同級生」を題材に人間の闇を描いた大傑作漫画「ヒメアノ~ル」を映画化した吉田恵輔監督の切れ味は健在!

 

実は田舎だけの話じゃない、愛を欠落したすべての人々の物語

四十年かけて孤独をこじらせた独身男・岩男、子宝に恵まれなかったことから子どもを執拗に抑圧する岩男の母、そして田舎の村社会を体現するような登場人物達…皆、愛が欠けたゆえに孤独に呪われながら、刹那的な性欲や憎悪に身を任せていく。「金で買われた」身でありながらも天真爛漫さを失うことなく、一服の清涼剤に見えたアイリーンさえもやがて孤独に蝕まれる。彼らの姿は、決して、清く・正しく・美しいものではない。ただ、それでも欠け落ちた愛を求めるように、もがき苦しむ彼らの姿には愛おしささえ感じる。彼らが私たちの隣にいる「厄介なあの人」の分身、あるいは「私自身」の分身だからなのではないか。この物語は欲望と憎悪の寒風吹きすさぶ地獄の果てに、ほんの少しだけの優しさにたどり着く。胃のキリキリ傷む思いをした皆様の胸にもその優しさはきっと届くと確信している。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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