多くの女性に観てほしい作品!!『私は絶対許さない』いよいよ関西の劇場で公開!公開目前、和田秀樹監督に聞く!
15歳で集団レイプの被害に遭い、加害者たちへの復讐を胸に生きてきた雪村葉子さんによる手記を映画化『私は絶対許さない』が4月28日(土)よりいよいよ関西の劇場で公開。今回、大阪での公開タイミングに和田秀樹監督にインタビューを行った。
映画『私は絶対許さない』は、15歳で性的集団暴行の被害に遭い、加害者の男たちへの復讐だけを胸に生きてきた雪村葉子さんによるセンセーショナルな手記を映画化。東北地方の田舎でごく普通に暮らしていた中学3年生の葉子。そんな彼女の平凡な日々が若い男達に無理やり輪姦されたことで崩壊する。ひょんなことから出会ったレイプ犯の1人の養父と援助交際の契約を交わした葉子は、地獄からの脱出、そして男たちへの復讐のためにひたすら金を貯め続ける。高校を卒業し、東京へと向かった葉子は全身整形を施し、昼間は真面目な学生、夜は学費や生活費を稼ぐために風俗で働くという生活をスタートさせるが……
精神科医である和田秀樹監督は、1994年から1年間アメリカに留学し、精神分析について学んだ。当時のアメリカでは、トラウマが研究対象となり、レイプや暴力の被害が主なテーマ。和田さんが摂食障害に関する病棟に配属された時に「性的なトラウマがない人はいない」と病徴医長の先生が仰ったことがショッキングだった。精神分析の視点では「食べ物は愛情の象徴。日本人は過保護により、愛情は要らないことによる拒食症が多い。アメリカでは、愛情不足のために食べ物を大食いし、食べ物が父親の性器だと気がつき吐く。子供時代に性的虐待を受けた人がブリミア(食べて吐く症状)が多い」と診られ、和田さんも日本にいる時は聞いたことがなかった。帰国後、ブリミアの症状があらわれる人が摂食障害の中でも増えていることを知る。日本でもレイプやトラウマを扱っている映画があるが「教科書的。PTSDになって悪夢に苦しんだり、復讐の鬼になったりする」と感じていた。だが、映画『ブレイブ ワン』の解説を頼まれ「時間の連続性がなくなったり、複雑な心境から憎しみが爆発したりする作品」だとリアルな感覚を覚える。日本でトラウマの問題を取り扱う良作がないかなと思っていた時、『私は絶対許さない』の解説執筆依頼を受け、出来事にリアリティがあると感じ、映画化を決意した。
本作は主人公の主観撮影が多くを占めている。和田監督は、黒沢久子さんが執筆した脚本を称えながら「普通に撮っても、主人公の数奇な人生を追いかけただけの作品になる。レイプ被害を受け父親にも殴られた気持ちを追いかけることが出来るかもしれないと思い、どうなるか分からないがやってみよう」と主観撮影に挑んだ。撮影監督の高間賢治さんがカメラを主人公の前に置いた手法となり「高間さんも多くの演技をしている。主観撮影は私が思いついたことだが、カメラマンや役者の協力がないと成り立たない。これまで見たことのない映像になっている」と自信満々。衝撃的な映像となり「試写会では女性の方が逃げ出す方もいた。それほど酷い体験だと分かって頂ける。様々な人に出来るだけ観てもらいたい」と期待する。さらに「モニターで観るより、映画館の大きなスクリーンで観た方が怖い。音響スタッフが頑張り、自分の視線より前の音と後ろの音を変えてもらった。音声が立体となり、映画館で観る方が緊迫感がある」と解説。
主観撮影であることから、主演のキャスティングは難易度が上がる。主演でありながら映らないため「有名な役者を起用しづらく、オーディションで選び、難しい役を演じてもらった」と振り返った。主演の2人について「平塚さんは本格的な映画は初めてだったが、勘が良く、頑張ってくれた。西川さんは演技が上手く、NHK大河ドラマにも出演するほど」だと太鼓判を押す。なお、和田監督は原作者の雪村葉子さんに実際にお会いし十分に話を聞いた上で撮影を敢行。雪村さんの視点に重点を置き「一見悪い人として現れた男性は良い人として印象が残る。素敵な人として現れたパートナーが怖い人に変わる。彼女が見た世界がそこにある」と表現する。
衝撃的な作品となった本作の評価について、和田監督は「男性は賛否が分かれる。女性は共感する方が多い」と捉える。性暴力の被害について「未だに男性目線が語られることが多い。性暴力を受ける側に落ち度があるような考え方への怒りもあって制作した」と告白。本作について「被害者にも様々なタイプの方がいることも分かってもらえれば。映画を通じて追体験となる。できれば多くの女性に観てほしい」と訴える。
映画『私は絶対許さない』は、4月28日(土)から大阪・十三の第七藝術劇場で公開。公開初日には主演の平塚千瑛さんと西川可奈子さん、和田秀樹監督を迎えて上映前に舞台挨拶を開催する。また、京都・出町柳の出町座で6月公開予定。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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