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写真家ソール・ライターの回顧展、伊丹で開催!「ソール・ライターと1950 年代アメリカ文化」柴田元幸さん迎え講演会開催!

2018年4月7日

2015年に日本でもドキュメンタリー映画『』が公開され、その名前と作品が知られるようになった写真家ソール・ライターの回顧展「ニューヨークが生んだ伝説 写真家 ソール・ライター展 Photographer Saul Leiter : A Retrospective」が兵庫県の伊丹市立美術館で4月7日から開催。初日には、映画の日本語字幕を手掛けた翻訳家の柴田元幸さんを迎えて講演会が開催された。

 

写真家のソール・ライターは、1923年にアメリカのピッツバーグで生まれ、絵画のように豊かな表現力でニューヨークを撮影したカラー写真の先駆者として1940年代から活躍。「Harper’s Bazar」や「VOGUE」といった有名ファッション誌の表紙も飾ったが、写真に芸術性よりも商業性が求められるようになった1980年代、表舞台から姿を消してしまう。それから時を経た2006年、写真集の印刷に定評のあるドイツのシュタイデル社から初の写真集が発表され、80歳を超えた「巨匠の再発見」に世界が沸いた。

 

2015年には、ドキュメンタリー映画『』が日本でも公開され、彼の名前と作品は多くの人々の知られることになる。2017年に日本では初めての回顧展を東京のBunkamura ザ・ミュージアムで開催。今回、いよいよ関西での回顧展を伊丹市立美術館で開催する。ニューヨークのソール・ライター財団の全面的な協力を得て、財団所蔵の写真作品(モノクロ、カラー)をはじめ、絵画作品やスケッチブックなどの貴重な資料を含めた約200点を一堂に紹介。「私たちが見るものすべてが写真になる」という彼自身の言葉にもあるように、日常のなかで見過ごされがちな一瞬のきらめきを天性の色彩感覚でとらえ、「カラー写真のパイオニア」と称された伝説の写真家の軌跡に迫る。

 

開催初日には、映画の日本語字幕を手掛けた翻訳家の柴田元幸さんを迎えた夜の講演会「ソール・ライターと1950年代アメリカ文化」を開催。事前申込の段階で定員満了となり、多くの方が美術館に集った。

 

柴田さんは、アメリカ文学の翻訳を手掛け、日本の文学シーンに多大な影響を与えている。伊丹市立美術館には、2年前の「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密展」開催時に講演会で登壇しており「また戻ってこられて嬉しい」と感激。エドワード・ゴーリーさんについて「変わったタッチの絵本を書く作家。ソール・ライターが醸し出す独特のテイストを持った写真を撮る人と繋がらないように思えますが、考えてみると、繋りが多い」と捉える。

 

エドワード・ゴーリーさんは1925年生まれ、ソール・ライターさんは1923年生まれ、共に青春時代を経て第二次世界大戦を経験。戦後、アメリカの強さや正しさが信じられていた1950年代から60年代にかけての激動の時代、価値観が大きく転換した時代のアーティストとして生き抜いた。柴田さんは、2人について「時代の流れに沿って変化したことは全くない。1950年代を全く彷彿させない仕事をしており、意外と繋がる」と考察。チェックのマフラーや、棲家を大きく変えず動かない人だと2人の共通点を挙げ「アメリカのアートとしては珍しくアメリカ全体を考えないことも共通する」と解説する。アメリカの芸術家について「皆がアメリカのことを考えているわけではないと思われるかもしれない。だが、アメリカの特殊事情として、どんなアーティストも大抵は何らかの形でアメリカをテーマにする特徴がある。自分とは何だろうと考えた時、アメリカとは何だろうという問いに直結してしまう」と説く。

 

続いて、柴田さんは、ソール・ライターと同時代に活躍した写真家のロバート・フランクさんと比較する。ロバート・フランクさんは1959年に『THE AMERICANS』という写真集を出版。今では20世紀のアメリカ史の中で最も重要な写真集の一つと言われるようになった。フランクさんは60年前に写真界で一気に中心になったが、ライターさんは、21世紀になって本格的に認められ始めた。2人の写真家について「全然違う時間軸に属しているような気がするが、実は、同時代に仕事をしていた2人の写真家である」と解説。ロバート・フランクさんについて「東ヨーロッパからのアメリカに渡ってきた移民。外国人としてアメリカ人になるために、アメリカ中を旅して写真を撮り、アメリカ人としてのアイデンティティをつくっていった」と説明。逆にソール・ライターさんは「『THE AMERICANS』のような写真集をつくるとは考えられない。21世紀以降、ドイツのシュタイデルという出版社から、50年代に撮ったカラー写真が主である写真集『Early Color』が出版され、認められた」と述べる。2人の写真を比較し「写真全体を大きな幕のようなものが覆っている構図は同じ。フランクはアメリカを思考しているが、ライターは、全く興味がない。フランクは人間が主人公、ライターは写っているものが主役」だと、違いは一目瞭然。

 

写真家は、写っている人間の内面を想起させる写真を撮るが「ライターの写真では、顔が見えないから内面に入り込めなず、彼の大きな特徴になっている。人間の内面に興味がないが、人間として冷酷さはなく、人間の内面を特権化しない。世界に様々なものがあり、人間はその一つの要素に過ぎない」と、柴田さんが写真を見て伝わってくることを表現。ソール・ライターさんの写真について「普通の人が考える構図や背景があった上で、中心になる主材があることが成立しない。他の写真だったら主人公にならないものがある。内面に入っていくように誘われている気がしない」と鑑賞時のおもしろさだとコメント。柴田さん自身は写真の専門家ではないと謙遜しながらも「ライターはいかにも撮り方にギミック(しかけ)があるように感じるが、写真になるとギミックがあるように感じず、あざとさが全くない」と感じ「実像と虚像の区別が成立しない世界の捉え方をしているのではないか」と考察した。

 

他にも、ナイジェリア系アメリカ移民作家テジュ・コールさんによるソールライターの評論を朗読。また、同時代を生き、ソール・ライターさんにつながるアーティストとして、詩人のチャールズ・レズニコフさんを取り上げ、詩の朗読をしたり、アーティストのジョゼフ・コーネルさんの作品を紹介したりした。さらに、柴田さんが字幕監修を担当した映画『わたしはあなたのニグロではない』原作のジェームズ・ボールドウィンさん、詩人であり小説家のシルヴィア・プラスさんを紹介し、小説家のWilliam Gojerさんの『there are ravens to feed path』を朗読。最後に、1950年代のアメリカの空気を捉えたもう一つの文章としてポール・オースターさんが昨年出版した約1000ページの小説『4 3 2 1』の一節を朗読し、講演会は締め括られた。

 

ニューヨークが生んだ伝説 写真家 ソール・ライター展 Photographer Saul Leiter : A Retrospective」は、4月7日(土)から5月20日(日)まで、兵庫県の伊丹市立美術館で開催(休館日は月曜日、但し4月30日は開館、5月1日が休館に)。4月15日(日)には、ソール・ライター財団創設者のマーギット・アープさんを迎えた記念講演会も開催される。他にも、4月29日(日)と5月12日(土)には映画『写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと』の特別上映会を開催。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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