1人1人の繋がりが大事だと教えてくれる…『一陽来復 Life Goes On』関西公開2日目舞台挨拶開催!
東日本大震災から6年目を迎えた被災地に暮らす人々にカメラを向けたドキュメンタリー『一陽来復 Life Goes On』3月24日(土)より関西の劇場で公開。上映2日目も各劇場にて出演者・スタッフによる舞台挨拶も開催された。
映画『一陽来復 Life Goes On』は、東日本大震災から6年目の岩手・宮城・福島で、前を向いて生きる人々の姿を追ったドキュメンタリー。女川町の復興を記録した「サンマとカタール 女川つながる人々」で制作プロデューサーを担当した尹美亜が初監督を務め、2016年夏から2017年春にかけて撮影を敢行。子どもを亡くした夫婦、そろばん好きな少女、震災を風化させないため活動を続ける語り部、原発30キロ圏内で伝統を守り続ける農家、被爆した牛の世話を続ける牛飼い、新しい漁業に挑む漁師など、困難の中で一歩ずつ前に進もうとする人々の姿をとらえ、復興6年目の小さな幸せや希望を浮かび上がらせていく…女優・藤原紀香と声優・山寺宏一がナレーションを担当。
上映2日目、京都・出町柳の出町座では上映後に本作の題字を書かれた書画家の小林芙蓉さん(以下、小林さん)とユンミア監督(以下、ユン監督)が登壇。
ユン監督:
本作は、東日本大震災発生から6年後の岩手・宮城・福島に生きる皆様のありのままの姿を収めたドキュメンタリーです。
小林さん:
出演された皆さんは心明るく生きていますね。
ユン監督:
被災した方の話は可哀想なお話や泣きそうな場面を思い浮かべがちですが、実際に行ってみると、皆さんが本当に明るい。笑いがあって仲間同士で冗談を言い合って楽しそうに生きている。心の傷は無くなっておらず、きっと今もある。それをグッとこらえて仲間同士で笑っていくことで前を向かれているんだなと感じます。
小林さん:
頂いたメッセージを感じます。これからも地震は起きますから、どのように乗り越えていくべきか。皆で支え合い深い悲しみに寄り添って、思いやりを持つことから始まります。
ユン監督:
石巻の遠藤伸一さんに初めてお会いした時に「被災された方で前を向いている方の希望を含めた映画にしたい」と言ったら「僕達は協力します」と応えて下さった。遠藤さん達には伝えたいことがあるんです。1個目は、絶望のどん底にいたけれども、今まで精神を壊さないで生きてこられたのは寄り添ってくれた人がいたから。人間は人間によってしか救われないことを学んだので皆さんに伝えたい。2個目は、日本全国どこで災害が起こっても10日後に必ず助けが来る。まずは10日間を生き延びてほしい、ということでした。
小林さん:
映画を通じて私達が忘れてはいけないことは、次に同じようなことが起きないようにするための対策。映画を通じて細く長く伝えていきたい。
ユン監督:
”一陽来復”という字を先生に書いて頂いた。元々は古代中国における易の言葉。冬の後には春が来る。転じて、悪いことが続いた後には良い方向に向かうという意味。希望を感じるタイトルにしたく、意味を説明することが私達の想いを説明することになる。
小林さん:
この映画を残していきたい。皆で支え合って広げていきたいですね。
ユン監督:
震災に関する映画は、悲しい内容は嫌だ、と敬遠されてしまう。被災された方は観たくないと思う方が多いが、私はこの映画を撮影させてくれた皆様に観てほしい。この映画では目に見える世界しか表現していない。その中から目に見えないことを感じ取ってくれたらいいなと思い、悲惨なところは入れないようにしました。
小林さん:
心が癒されます。女性監督ならではの思いやりを感じました。音楽の使い方も上手ですね。
ユンさん:
音楽も映像を観ながら、どのように入れようかと音楽監督が考えた。音楽チームは私が以前に仕事をしたスタッフ。この辺りは音楽は要らないんじゃないかと言われながら付けて頂いた。小林先生も含め夫々に拘って下さった方ばかり、1人1人が仕事以上の関わりをしてくれた。気持ちを入れてくれてこの映画を皆さんに届けられている。この映画では制作者の色を消したかった。出演して下さる皆様のありのままの姿を届けようと思い、私達の意図的な撮り方や編集は一切していない。
小林さん:
映画を拝見し、皆さんの思い出が詰まっていました。真面目で純粋な方が多いですね。
ユン監督:
私達が普段は忘れているような隣近所を気にしてみることが大事。人と人の繋がりが重要。全てが失われた方々にとって人の繋がりが如何に大事だったか。私達が普段はそれをいかに忘れているかを教えてもらったような気がします。
小林さん:
7年目の今、これからが大事。この映画は大切なことを教えてくれる。題字を書かせて頂いたことは嬉しくありがたいと思っています。
ユン監督:
初監督した作品ですが、多くの方々に出演頂いた。当初は3県でそれぞれ1組の出演予定だった。現地に行くと皆さんが喜んで話をして下さった。こんなに喜んでくれるなら皆さんに出演して頂いたらもっと喜んでくれる。様々な立場の方が境遇は違えど同じ方向を見て頑張っている姿を伝えたくて、最終的に本作の構成になりました。私は自信があるわけではなく不安がいっぱい。完成させて頂き、皆さんが観て感想を伝えて頂けるだけで、作って良かったと思います。何より出演者の方々が喜んで下さったので、作品を作らせてもらうことが出来て幸せです。
映画『一陽来復 Life Goes On』は、京都・出町柳の出町座で公開中。また、4月21日(土)からは大阪・十三のシアターセブンでセカンドラン上映、初日上映後にはユンミア監督と構成を担当した西尾孔志さんによるトークイベントも開催予定。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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