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主人公に救いを与えなくてよかった…!フィルムコミッションの悲喜こもごもを描く『エキストランド』前野朋哉さんと田中雄之P迎えトークショー開催!

2018年2月3日

過去の失敗から映画を製作できなくなったプロデューサーが地方の市民をだまして映画を作ろうと画策する様子を描く『エキストランド』が2月3日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場で公開。公開初日には、上映後に出演の前野朋哉さんと田中雄之プロデューサーを迎えてトークショーが開催された。

 

映画『エキストランド』は、地方の市民をだまして映画製作を画策する悪徳プロデューサーと市民たちの姿を描いた作品。過去のある大失敗により映画を作れなくなったプロデューサーの駒田は、映画製作で地元を盛り上げたいと思っている市民たちを巧みに欺き、自分のためだけに映画を作ろうと画策。当初は駒田の指示におとなしく従っていた市民たちだったが、彼の横暴な振る舞いに次第に疑問を感じるようになる。自分たちは利用されているだけだったと気がついた市民たちは、撮影最終日に駒田への逆襲を企てる…

 

上映後、 前野朋哉さんと田中雄之プロデューサーが登壇。挨拶と共に乾杯し和やかな雰囲気の中でトークショーが始まった。

 

今作は坂下監督と田中さんの共同脚本による作品。元々、2人は大学院時代の同級生。卒業後、しばらくは映画を作れなかったが「オリジナルで1本作ろう」と話し合っていた。田中さんは映画の題材を探し続けたが、なかなか最適なものが見つからず。映画に関する作品を検討していくうちに、自身の映画制作を思い返し「フィルムコミッションを映画にすれば、おもしろい」と気づいた。しかし、フィルムコミッションの方達について「なぜ無料で一生懸命に手伝ってくれるのか」と疑問を抱き、お世話になった人に会いにいき「なぜこんな大変なことをやっているんですか」等、質問し様々なエピソードが集結。坂下監督に「決めたよ、フィルムコミッションの映画だ」と伝え、4年前に題材が決定し粛々と制作に至る。前野さんは、脚本が届いた時「主人公のプロデューサーについて、最初はあまりに印象が悪かった。もう少し救いがあった方がいいんじゃないか」と監督に伝えたが、変わらず。だが、「主人公に救いを与えなくてよかったんだな」と完成作品を観て気づいた。

 

関係者向けの初号試写を行った際、田中さんは鑑賞後の表情を伺うと「皆が凄く苦い顔をして出てきた」と振り返る。前野さんも「おもしろかったねと言えない空気があった。皆が少し下を向いて、とりあえず佇んでいた」と思い出す。編集時、坂下監督と田中さん、録音部と音楽担当で観た際に「おもしろくて笑える作品ができたね」と盛り上がったが「あれ?」となった。前野さんは、かつて地方で撮影した際に「街の方々がスタッフをやる光景を初めて目の当たりにした時にビックリした。それは大丈夫か?心のどこかでスレスレな気持ちがある。そこまでやっていいのか?お金を払わなくていいのか?」とモヤモヤとしたことがある。田中さんも「自分もそんな行為を全くしたことがないことはない。良くないとは思いつつも、次第に感謝の気持ちが行動に伴っていなかった。 感覚が麻痺していたことに気づき皆で謝った」と明かし、反省の気持ちも込めて、本作を制作した。

 

坂下監督について、前野さんは「自分からは喋らない。俳優部から聞かないといけない。次第に現場では役者が考え監督の表情を見るようになる。『カット!』を言った時に、どういう表情をしているか。一日の撮影を終え、俳優部で呑んでいた時『今日は、坂下君が笑っているのを見ました』『え、笑っていた!?どこで!?』と盛り上がった」と術中にはまる。田中さんは「彼は頭の中に完成図が出来ている。方針はあるが自ら言わない。『こうですか?」と聞くと『違う』とあしらわれる」と受けとめた。前野さんも「監督は頑固で、自分の意見を曲げず突き進める人。皆が坂下監督の気持ちを読み取ろうとする。本来は逆。結果的におもしろいことが起こる」と捉えている。さらに「彼が冗談を言ったなんて聞いたことがない。彼自身がおもしろい。謎めいた頭の中を覗いてみたい」と注目。監督と長く接してきた田中さんは「お笑い番組をよく見て、ニヤニヤしている。本来はそういうことをやりたいが、自身では表現せず、映画を使って表現している」と考察する。

 

前野さんは、映画監督を経て俳優となった。主演・監督・脚本を務めた『脚の生えたおたまじゃくし』が評価を得たが、後の映画づくりは大変で悩んでいた時に周りから「本腰入れて役者やった方がいいんじゃない?」と言われた。その後、役者として事務所に所属し、まずCMのオーディションに合格。以降、映像作品を中心に活動してきたが、自身について「圧倒的にポンコツ。劣っている部分が多い。現場で他の俳優さんの芝居を見て頭が上がらない。だからこそ張り合おうとする。影響を受けたことは自分でもやってみる」と冷静に分析する。田中さんは『霧島、部活やめるってよ』に出演している時の前野さんがお気に入り。前野さんが演じる内川のキャラクター設定は東大卒であり「聡明に話すイメージと違う感じにしたかった。聡明なキャラクターを演じる前野さんを見たい。理路整然と打ち負かす雰囲気が似合う」と考察。演じた前野さんは「内川という役は難しかった。基本は、ですます口調。脚本を最初に読んだ時に『これって俺なんだ』と思った。間違いではないかと思う程にやったことがない役」だと気づき、真面目に演じる意識になった。なお、今作は、田中さんが設立したコトプロダクションの1社のみで制作。通常は映画制作委員会を組むことになる。田中さんは「一度、制作委員会なしで誰にも文句言われずにやってみたかった」と話し、今後も「同世代の仲間達で好きなものを作り続けられたら」と計画中だ。

 

最後に、前野さんから「この映画は全くのフィクションではない。実際にあるようなエピソードを暴露している。別の作品を観た時、見え方が変わったらおもしろい」と期待する。田中さんは「『エキストラエンド』のポスターを見るとシネコンで上映していそうに見えるが、中身はインディペンデントな作品。こんな作品がやりたいという想いで作った映画なので、世の中に届けるのが難しい内容ではある。昨年の11月に東京で公開し、何カ月もかけて様々なところで上映させてもらっている。観に来て頂ける方がいて本当に嬉しい。粛々と全国で上映していきます」と宣言し、感謝の気持ちを伝え、トークショーは締め括られた。

 

映画『エキストランド』は、2月3日(土)から2月16日(金)まで大阪・十三の第七藝術劇場で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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