『堕ちる』大阪で上映開始 初日ゲストトーク開催
4月29日(土)より大阪・十三のシアターセブンで、無口な織物職人が地下アイドルにハマっていく映画『堕ちる』が上映されている。公開初日には、村山和也監督とヨーロッパ企画の土佐和成さんを迎えてのゲストトークが行われた。
映画『堕ちる』は群馬県桐生市を舞台に、寡黙な中年の織物職人が、ひょんなことからローカル地下アイドルにハマり、彼女の衣装作りのために奮闘する姿を描いた短編作品。かつては織物産業が盛んだった桐生市の老舗織物工場で、熟練の織物職人として働く無口な耕平。ある日、散髪に出かけた理髪店で、店主の娘である中学生の少女めぐみと出会った耕平は、なぜかめぐみに心ひかれてしまう。めぐみが歌手を目指していることを知り、彼女がステージに上がっているというライブハウスを訪れた耕平は、そこでめぐみが地下アイドルの「めめたん」として歌って踊っている姿を目にする。最初は驚いた耕平だったが、めめたんの歌声とダンス、笑顔に魅了され、気が付けば握手会にも参加。瞬く間にめめたんの魅力にのめり込んでいく……
映画上映後、村山和也監督と土佐和成さんによるトークショーが開催された。なお、村山監督と土佐さんの二人は初対面。村山監督は、ヨーロッパ企画の永野宗典さんと以前話す機会があった。だが、今回は永野さんが福岡で舞台に出演のため、ヨーロッパ企画社長の吉田さんに相談し、今回、土佐さんに登壇頂くことになった。村山監督は「東京での上映時にトークショーを行っていたが、俳優の方に来てもらったのは今回が初めて」だという。
村山監督は、プロの映像監督として仕事をしており、大阪ではUSJのCMやNMB48のPVの監督をしてきた。村山監督は「映画を撮りたい想いがあったなかで、群馬県桐生市で開催されている『きりゅう映画祭』の企画コンペに本作の企画をつくり応募した。その結果、製作権を勝ち取り、今まで仕事をしたことがあるスタッフを集め、プロが作った自主映画として制作した」と本作の成り立ちを明らかにした。その後、映画祭で上映された本作がWeb上で評判を呼び、映画館での上映オファーを受けた。
本作を鑑賞した土佐さんは、村山監督にオタク気質があるか伺った。村山監督は「実は、その気質はある。アイドルに対してではなく、ものづくりに携わっている方が持つ職人独特の気質があり、ハマりやすいタイプの人間である。例えば、好きになった曲をずっとリピートして聴き続けたり、ひたすら映画を鑑賞し続けたりする」と自身を分析する。本作について「自己投影であり、自分自身のつもりで描いている。アイドルには仕事で接するが、アイドルのファンではない。本作の為に、地下アイドルのライブに取材として行ったり、アイドルファンのオフ会に行ったりして、細かいエピソードを抽出した」と制作秘話を明かす。土佐さん自身は「オタク気質ではない。アイドルの方と仕事をすることもあり、仕事の一環としてライブに行ったら、自分を見ているかのようになって、泣いてしまう。手を振りたいが、仕事だと認識してコントロールしている。仕事でなければ、映画に登場するファンのようになってしまうだろうな」と共感を示した。
主役の耕平を演じた中村まことさんは舞台を中心に活躍しており、土佐さんは「共演の機会はないが、普段から仲良くしている。一番凄いと感じるのは、いつもは物静かな方だが、時に振り切れた演技を芝居ですることもあり、スクリーンで観てみたい。黙ってても絵になる役者だ」と語る。村山監督は「まことさんは、女性のファンが多く”こうへいたん”と萌えキャラで呼ばれることもある。普段はシャイだが、役に入り込む方で、シーンごとに役になりきっている」と述べる。めめたんについて、村山監督は「所属するLuce Twinkle Wink☆のPVを2本監督したことがあり、作品にはまりそうだ」と出演の経緯を話す。土佐さんは「めめたんは危さがある」と感じ、村山監督も共感。「だからこそ、めめたんに夢中になるかも」と土佐さんは分析する。主人公がめめたんの為に作った衣装について、村山監督は「織物にある和のテイストに洋風のドレスを足したと捉えられる」と考えており、「切り織の布で細かいものを頂いて、衣装担当に作ってもらった」と明かす。
村山監督は、「作品に様々な思いや意味を込めている」と話し、「タイトルの”る”の文字は、アニメーション加工で垂れている。『堕ちる』イメージにしている」と示す。これを受け、土佐さんは、最初から『堕ちる』というタイトルだったのか尋ねた。村山監督は「最初はどうしようかと色々考えていた」と明かし、「映画に『おちる』の意味をいくつか込めている。『恋に落ちる』、『堕落する』、『話がオチる』、『つきものが落ちる』等の意味を込めた。日本語にある同音異義語のおもしろさを楽しんでもらえれば」と話す。なお、タイトル文字については「衣装担当の方がスターバックスのナプキンに書いた文字」だと明かし、「最初は紙を用意して書いてもらったが、納得のいくものにならなかった。スターバックスのナプキンに書くことで、ざらついた質感が出た」と述べる。
また、土佐さんは、村山監督の次回作について伺った。村山監督は「ビジュアル系バンドについての作品がつくりたい」と話し「以前は、ヴィジュアル系バンドのPV製作に携わっていたことがあり、過去の経験を活かしたい。アイドル映画はたくさん作られているが、ビジュアル系バンドの映画についてはあまりない。テーマとしてもおもしろく、海外の方から観ても、変わった文化だとも捉えられる」と考えている。「バンギャルではなく、アーティストを描いた方がおもしろい」と村山監督は考えている。
イベントの最後には、本作に登場する「めめたん」タオルのプレゼントをかけた土佐さんとのじゃんけん大会が行われた。非売品ということもあり、最後の一人となるまでじゃんけんが続けられ、大いに盛り上がりゲストトークは締め括られた。
映画『堕ちる』は4月29日(土)より5月5日(金・祝)まで大阪・十三のシアターセブンで上映。4月29日(土)~4月30日(日) 20時~20時37分[ゲストトーク有り]、5月1日(月)~5月5日(金)19時40分~20時17分にて、料金は4月29日(土)~4月30日(日) 1,000円、5月1日(月)~5月5日(金) 800円となっている。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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