今この瞬間を誠実にささやかに大切に生きている…『静かな雨』衛藤美彩さんを迎え先行プレミア試写会開催!
若い考古学研究助手と記憶障害を持つ女の子の交流を描く『静かな雨』が2月7日(金)より公開。1月17日(金)には、大阪・心斎橋のシネマート心斎橋に衛藤美彩さんを迎え、先行プレミア試写会が開催された。
映画『静かな雨』は、映画化もされた本屋大賞受賞作「羊と鋼の森」で知られる宮下奈都が2004年に発表した小説デビュー作を映画化。大学で生物考古学研究助手をしている行助は、こよみという女性が1人で経営するたい焼き屋に通うようになり、2人は徐々に親しくなっていく。しかしある朝、こよみは交通事故に遭い、意識不明となってしまう。こよみは奇跡的に意識を取り戻すが、事故の後遺症で記憶に障害があることが判明する。事故以前の記憶は残っているが、意識を取り戻してからの記憶は1日経つと消えてしまう。行助は新たな記憶が刻まれることのないこよみと、以前と変わらずに接していこうとするが…
『ポンチョに夜明けの風はらませて』『町田くんの世界』の仲野太賀さんと、「乃木坂46」を卒業し、これが映画初出演となる衛藤美彩さんのダブル主演。監督は『四月の永い夢』の中川龍太郎さんが務める。
上映後、衛藤美彩さんが登壇。満員御礼状態の中で「1年前に撮りましたが、皆さんの目に触れて頂くのがいよいなんだなぁ」と感極まる面持ちで舞台挨拶を行った。
九州出身の衛藤さんは、大阪に馴染みがあり、乃木坂46のメンバーも大阪出身が多く「何年間も握手会で毎月来ていた場所なので、ホームのように思っています」と親しみがある。先日、1週間に2度も大阪に来る機会があり「お好み焼きをスタッフと5人で5,6枚も食べて、店長さんに『もぉえぇやろ』と言われました」と振り返っていく。
映画は今作が初出演であり初主演のヒロイン。2年前に舞台『三人姉妹』に出演していた時、中川監督に来て頂いており、直筆のお手紙でオファー頂いた。「舞台での佇まいや雰囲気がこよみに合っていると思った」とコメントして頂き「最初は不安もありましたが、そのお言葉で勇気を貰えました」と感謝している。直ぐに原作を読み「こよみ(の人間像)が具体的に描かれておらず、謎が多い印象が大きく、脚本に上がってきても、こよみさんの強い女性像、何故この女性は強いんだろう」と当初は演じづらい印象があった。中川監督は、クランクイン1ヶ月前から仲野太賀さんとスタッフ達を集めディスカッションして考える場を設け「クランクインの時には探り探りながらも不安は消えてました。自信を持って挑まないとクランクイン後に困ってしまうのは駄目だ」と一念発起。初めての役作りを果敢に取り組み準備していった。なお、中川監督は衛藤さんより三歳年上、仲野太賀さんとは同い年。若いスタッフさんが多い撮影現場となり、助監督さんに不安を打ち明けると『僕達もこの作品は初めてだよ」と言ってもらい「初主演の不安が恥ずかしくなり、皆で作っていくものなんだ」と気づき、皆に引っ張ってもらいながら、必死についていった。
たい焼き屋の店主を演じた衛藤さんだが、クランクイン前には、21,22時までのお仕事を終えてから、監修をして頂いた師匠のお店に通う。背中で語るタイプの方だったので、横でジッと見ながら、実践し褒めてもらいながら、一丁焼きを当たり前に作れるレベルまでに至った。「器具の温度が高過ぎても焦げるし、温くても焼けないので、生地を流し込むのが一番大変でした」と振り返りながら「今でもココにセットがあれば、皆さんのために焼けます」と自信満々。撮影現場では、たい焼き屋さんのセットは握手会のブースのように受けとめながら「たい焼き作りだけに集中しても駄目。お客さんの目をずっと見ても違う。焼くことに集中しながら偶にお客さんを見るバランスが大事」だと中川監督にも教えて頂いた。
乃木坂46ではプリンシパルの立場にいた衛藤さん。映像関係のお仕事はドラマに一度出演した程度で「カメラを意識しないで意識する演技は難しかった」と告白。「LIVEや歌番組だと完全に意識するし、ミュージカルも自分がどこに立っているか意識する。皆でバランスをとって画を作る」と述べながら「映像になると意識しないことの難しさはありましたけど、楽しかった」と満足している。完成した作品を3度も観ており「観た時の自分によって、こよみと行助の日常が違うように映る」と語り「(乃木坂46を)卒業した今、昔よりゆっくり過ごせるようになってみると、とても愛おしく映ったり、観る人によって変わったりする映画なんだな」と現在の心境を明かしていく。さらに、ヒット祈願として、シネマート心斎橋から最寄りにある「福八」さんからたい焼きが届けられた。
最後に、衛藤さんは、本作について「当たり前にある毎日が描かれています。記憶を1日しか留めておけない体験はなかなかないけど、SNSで思い出を残す時代だからこそ、この映画が伝えたいメッセージ性は、明日でも昨日までの過去でもなく、今この瞬間を二人は誠実にささやかに大切に生きている映画です」と述べ「皆さんの中で共感して頂ける部分があったら、この映画を作った意味がありました。このままずっとこよみと行助がどこかの片隅で生活しているような気持ちにさせてもらえる映画になっています」と伝え、舞台挨拶は締め括られた。
映画『静かな雨』は、2月7日(金)より大阪・心斎橋のシネマート心斎橋、堺のMOVIX堺、2月21日(金)より京都・出町柳の出町座で公開。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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