作品に出る度に山崎さんは上手くなっている…!『影踏み』篠原哲雄監督に聞く!
“ノビ師“と呼ばれる泥棒の主人公が難事件に立ち向かい、幼馴染のヒロインとの恋に奮闘する姿を描く『影踏み』が11月15日(金)より公開される。今回、篠原哲雄監督にインタビューを行った。
映画『影踏み』は、作家・横山秀夫さんの小説を、歌手の山崎まさよしさんが『8月のクリスマス』以来14年ぶりの主演を務めて映画化。住人が寝静まった深夜の民家に侵入して盗みを働く、通称「ノビ師」と呼ばれる泥棒の真壁修一は、忍び込みの技術の巧みさから、警察から「ノビカベ」とあだ名されるほどの凄腕ノビ師だった。そんな真壁は、ある日の深夜、県議会議員の自宅に忍び込むが、そこで偶然、未遂となる放火殺人現場を目撃。これをきっかけに、真壁がずっと心の底に押し込めていた20年前の事件の記憶が呼び覚まされ…
山崎さんの映画俳優デビュー作『月とキャベツ』を手がけた篠原哲雄監督が、23年ぶりにタッグを組んだ今作。制作にあたり、群馬県中之条町の伊参スタジオ映画祭が重要なきっかけとなっている。『月とキャベツ』をロケーションを考えていた頃、初めて群馬県に行き1週間のロケハンをして、中之条町にある廃校を見つけ、制作に至った。2003年からはシナリオ大賞が合わせて開催され、審査員まで担う。横山秀夫さんは上毛新聞の出身であり、3年間も一緒に審査員をやっている。『月とキャベツ』が公開20周年となり、映画祭で上映された際には、横山さん原作の『64-ロクヨン-』も同年に上映され、山崎さんと横山さんが同席した。また、山崎さんが横山さんのファンだと判明し、山崎さんと篠原監督による次作に期待が高まっていく。とはいえ「横山さんの小説はある程度映画になっているんじゃないか」と思っていたが『影踏み』だけは映画になっていなかった。横山さんからも「『影踏み』の映画化はどうでしょうか」と提案があり、伊参スタジオからも後押しがあり、現在に至る。
映像作品に出演するたびに山崎さんは演技が上手くなっている、と篠原監督は感じており、俳優らしくなっていることを喜んでいる。初演技の際には、俳優としては未知数だったが「他の候補がいるなかで、一人前に演じられる人だな」と感じていた。LIVEを観に行くと「お客さんに対する話し方や巻き込み方は惹きつけるものがあった。彼はエンターテイナーだな」と気づき、演技は未経験だが「資質があるんじゃないか」と直感。特に演出はしておらず「細かい演技指導は不要。自身の力で役柄を表現していき、本当にその人物に見えてくれば良い。そのキャラクターに導いていくことが監督の仕事」だと心得ている。
本作への出演にあたり、山崎さんは「自分は音楽家としての職人性を持っている。ノビ師も職人という意味では共通するものがあるのではないか」と云っており、演じられるという認識があった。あくまでも「俳優ではない」と言っているが、既に映画とTVドラマで6作品も主役を演じており、篠原監督は「十分に俳優だ。本業が俳優の方に失礼だ。今後は俳優と名乗っていくと思います」と後押しする。さらに「俳優はこうあるべき、と凝り固まっている俳優は好きじゃない。演技には人間性が表れる。人間的な魅力が俳優には大事」と持論を展開した。
ミュージシャンは自分で考えている人達であると捉えており「竹原ピストル君も北村匠海君もミュージシャンを兼ねている。ミュージシャンは俳優ではないと仰っているが、俳優にはない魅力があり表現している」と確信している。山崎さんと竹原さんは同じ事務所に所属しており「竹原さんが山崎さんを敬愛し、”山さん”と慕っている」と明かした。2人のやり取りを見ながら「2人とも俳優として人物を演じようとしている瞬間はおもしろい。他では観たことのないシーンになり、観ていて幸せな気持ちになった」と大いに満足している。なお、北村さんの佇まいについて「さらりとした身のこなしがあり、撮りやすかった。演技指導も特にしていない。自分なりに考えて演じていた」と称えていた。
尾野真千子さんについて「日本の同世代の女優の中では、映画に拘っている女優の一人」であると考えており「一緒に仕事していて気持ちが良い」と気に入っている。山崎さんとの共演を楽しみしており、この作品のオファーについて内容に関係なく座組だけで引き受けてくれた。撮影現場では「映画の撮影は俳優だけを中心にしてやっていない、と認識している。スタッフに面倒をかけず、役柄を認識して現場を一緒に作ってくれる」と、仕事のしやすさを評価している。
劇中の音楽についても、山崎さんが担当していった。篠原監督からはあまりオーダーしておらず、あくまで「音楽家・山崎まさよしの領域」だと認識している。今作では「途中で、ゴスペル・讃美歌的なボーイソプラノを使ったらいいんじゃないか」と山崎さんから相談があり「それはおもしろい。今までになかったアプローチであり、いいじゃないか」と承諾し「許しのテーマ」がソプラノになっている。音楽は全体を繋げてみた時にどういうものが必要であるかを話し、実際に映像と合わせてみて変化していった。「最後の曲は相当悩んで作っていました」と明かし「僕らに苦悩している様子は見なせなかった。プロデューサーを通して、悩んでいると聞き、じっと待っていた。最後の最後にようやく出来上がった」と万感の思いがある。『月とキャベツ』以降、20年以上を経て、様々な苦労をしていると認識しており「人柄も良く、人に楽しんでもらうことを分かっている人」と信頼は揺るぎない。画になる人だと理解しており「当時の顔立ちよりも今はさらにキリっとしており、チャーミングさは欠かさない」と不思議な魅力に魅了されていた。
映画『影踏み』は、11月15日(金)より全国の劇場で公開。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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