孤独を好むデルの行動に共感する部分が多く、物語にスムーズに感情移入できた。デルに共感できない人は、誰かと一緒にいたいというグレースのほうにおそらく共感できると思うので安心して観てほしい。

デルが孤独を好み平穏を求めるところにグレースが介入してくる。だが、作品全体を通して孤独を好む者に対する説教もなければ、恋愛要素も全くなく、驚きを隠せない。私自身はこのシチュエーションに肯定的で、観ていて不快感がない。終末というSF要素も加わり、繰り返し観たくなる。

劇中語られない部分も多いので観終わった後に『こういうことだったのかな』など想像しながら劇場を後にしよう。１人で孤独を感じながら思う存分この作品の余韻に浸ってほしい。

fromねむひら

美しくも不気味な空気を纏い続ける作品だった。時たま流れる溌剌としたロックミュージックが良いアクセントになっている。デルとグレースによる仲間とも恋人とも言えない独特の空気感もお気に入り。

「俺が孤独と感じたのは、この街に１６００人の人間がいた時だ。」見た目、価値観、生活。もう誰とも比べる必要のなくなったこの世界は、どれほど虚しくて楽だろうか。荒れ果てたこの街は彼の聖域となった。彼は己が決めたルーティーンをこなし、ひとつひとつ、カオスを減らしていく。

グレートーンの世界に突然打ち上がる花火。あれは、カウントダウンの合図だった。彼の心地よい不穏な世界が終わるまでの…！

fromナカオカ

世界の終わりのマン・ミーツ・ガール。 孤独であることを愛している男性がいた。ひっそりと元・図書館で生活する。静寂とひとり対話するデルは死者がそのままになっている家へ上がり、無骨に死体を片付けていく。決して綺麗ではないが、彼なりのルールがあった。ゴム手袋をはめ、布切れで顔を覆う。そして家主のいなくなった家から燃料を頂く。電池は貴重だ。息をする者のいない世界で、彼はそうして粛々と生きてきたのだ。

ある夜、突然花火が上がった。あっけに取られるデル。嘘だ。もうこの世界には僕しかいないはず。呆然と光を見つめるデルの、驚きに似た絶望にも希望にも捉えられる表情が素敵である。筆者はその険しい瞳の中に希望を見た。 グレースがデルの前へ現れたことによって世界はゆっくり軋み出していく。彼女は彼(の世界)を少しずつ侵食していくのだろう。 「質問し合うのが人間でしょ？」あっけらかんとグレースは言う。嫌がりながらも少しずつ会話するデル。

カットの中には生きた人間が一人か二人、もしくは死者ばかりが映るが、太陽の光が降り注いでいたり、自然が多く映ることによって終末世界をポジティブに描く。誰もいない世界ってこんなにも美しい。彼が最後に下した選択肢が好きだ。大切にしている世界がある筆者にとって繰り返し観たい作品。夕方から夜にかけてゆっくり流れる時間の中で鑑賞しよう。 独りでいることは寂しくも、悪いことでもない。

from君山