生きていくなかで必要な出会いが描かれている…『心魔師』生津徹さんと今野恭成監督を迎え舞台挨拶開催!
猟奇殺人事件を追う刑事が、抜け出せない大きな謎に飲み込まれていくさまを描く『心魔師』が関西の劇場で公開中。12月8日(土)には、大阪・十三の第七藝術劇場に生津徹さんと今野恭成監督を迎え、舞台挨拶が開催された。
映画『心魔師』は、日本と中国が手を組んで新たな才能を発掘する、日中若手映画人合同プロジェクト第1弾作品として製作されたサイコサスペンス。ワーファリンという血液凝固を止める薬品を注射して失血死させるという猟奇殺人事件が発生した。犯人を取り逃し、謹慎中だった捜査一課の今村刑事は最初の現場復帰でこの事件の担当となった。被害者の下山宅に残された睡眠薬の袋から下山が通院していた精神病院にたどり着くが、精神科ではワーファリンは処方していないという。不審に思い、その晩こっそりと診療所内に忍び込んだ今村は、入院患者の少女・夕子と出会う…
今回、上映前に生津 徹さんと今野恭成 監督が登壇。二人の人柄が滲み出る舞台挨拶となった。
本作は、日本と中国による合作映画。その経緯について、今野監督は「僕の東京藝術大学院の同期である張丹妮さんが、卒業後は中国の制作会社で働いている。会社には製作費の余裕があると聞き、出資して頂き一緒にやることになった」と明かす。数年前から中国の映画市場が急成長しており、現在は、中国政府の審査を通過して輸入されたり制作されている。若手プロデューサーが携わった映画はネット配信が主流であるが、審査は比較的通過しやすくなっているようだ。そこで「中国ではネットムービー、日本では映画館公開だと嬉しい」と願いながらの企画となった。
生津さんは、演じた今村刑事について「監督による役のイメージが合った。撮影期間は短く、現場に入ってからはアッという間に過ぎながら、最後まで演じました」と振り返る。今野監督に対して「以前にも監督作品に出演しております。信頼しており、現場では監督のイメージを表現したい」と心掛けていた。これを受け、今野監督は「ダーティな役柄を演じたが、生津さんは清潔感のある方」と評する。生津さんがどこまで真っ当な人なのか測りかねていたので「東京での舞台挨拶で『生津さんは人を殴ったことがありますか?』と聞いたら、笑いながら『あるわけないでしょ』と言っていた。凄い怖かった」と明かすが、生津さんは「いやいや」とすぐさま否定した。
今野監督は、生津さんについて「不眠症を患いながら暴力的であるキャラクターを演じた。歩くスピードや目線の動かし方は細かく演出させて頂いた。役者さんによっては嫌がられたり怒られたりするが、自然に受け止めて頂いた」と感謝している。何度もテイクを重ねて撮影しており、生津さんは「ガムを口に入れたりかんだりするスピードも」と添えた。
上映前のお客さんに向けて、生津さんは「緊迫した環境では人がどんなことを起こしてしまうか、と完成した作品を観て改めて感じました。様々な視点を以て感じて貰えれたら嬉しいです」とメッセージを送る。今野監督は「美術スタッフとカラリストと編集と音響効果を中国のスタッフが務めている。美術の色合いや音の付け方が良い意味で違和感があり、不思議な映画になっている。ぜひ楽しんで頂ければ」と思いを込めた。
舞台挨拶後、さらに2人にインタビューを実施。自身とは異なる役柄について、生津さんは「ギャップはあまりない。不眠症を抱えるギリギリの人間だと認識しておく必要があった」と振り返る。これを受け、今野監督は「単なる荒くれ者でもない役なので、生津さんの本性とは別なのかもしれない。新たなキャラクターを一緒に現場でリテイクしながらつくっていった。僕自身も正解はなかった」と告白。生津さんとしては「一緒に監督と作れて、嬉しかったし楽しかった」と感謝している。
夕子役を演じた真崎かれんさんについて、生津さんは「凄かったですね。真っ直ぐ演技に向かっていたので、僕もスタッフも刺激を受けた。監督の指示を受けてすぐに場面に合わせて演じられていた」と感心。今野監督としては「『他の人の演技を観ていて下さい』と指示しただけ」と明かす。オーディションによる採用だったが「他の女性による演技では鑑賞に値しなかった。唯一、真崎さんだけは大丈夫だった。自然な仕草による表現が可能で、現場で迷いがなかった。指示なしでも感情を演技に昇華してくれた」と絶賛した。
なお、生津さんは本作で多くのベテラン俳優と共演しており「皆さん素敵でしたね。柳憂怜さんは存在感があった。撮影時以外でも頼ってしまう。信頼している先輩と思って演じられた。感謝しています。ご一緒出来て嬉しかった」と素直に話す。もし、今村刑事や夕子がいたことを想像してみると「今村とは関わりたくないですよね。でも、日々を生きていく中で、どうしてもこの人が必要だという時に出会いがある。それが描かれている」とコメントする。
今作を通して、今野監督は「お客さんは、登場人物が最終的にどうなったか気になっている。僕は脚本を書きながら全く気にしていない。勉強になりました。全体的にはブラックコメディ要素を大きくしたかった」と振り返り、今後も果敢に作品作りに挑戦していく。生津さんは、年末に舞台「色は匂へど散りぬるを ジョリージョリーに花は咲く 乙女の姿しばしとどめむ」に出演。来年以降も映画や舞台での活躍を予定している。
- キネ坊主
- 映画ライター
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