台湾版に負けない7人の物語が出来上がった…!『あの頃、君を追いかけた』公開目前、長谷川康夫監督に聞く!
台湾の人気作家ギデンズ・コーさんが自伝的小説を映画化し、本国で大ヒットを記録した青春映画を2000年代の日本に舞台を置き換え、お調子者の男子高生とクラス一優等生の女子高生が織り成す恋模様を描く『あの頃、君を追いかけた』が10月5日(金)より全国ロードショー公開される。公開を目前にした今回、長谷川康夫監督にインタビューを行った。
映画『あの頃、君を追いかけた』は、台湾の人気作家ギデンズ・コーが自伝的小説を自ら映画化し、台湾で大ヒットを記録した同名作品の舞台を日本に移し、再映画化。地方都市の高校に通う水島浩介は、クラスの仲間たちとバカなことばかりしながら、お気楽な高校生活を楽しんでいた。ある日、浩介の度を越した悪ふざけによって授業が中断。激怒した教師が浩介のお目付け役として任命したのが優等生の早瀬真愛だった。クラス一の優等生で真面目で堅い真愛を疎ましく思う浩介だったが、彼と4人の仲間たちにとって中学時代からの憧れの存在だった真愛に浩介の胸はざわつきはじめていた…
主人公・浩介役を山田裕貴さん、ヒロイン・真愛役を齋藤飛鳥さんが演じるほか松本穂香さん、佐久本宝さん、國島直希さん、中田圭祐さん、遊佐亮介さんらが脇を固める。監督は、脚本家として『ホワイトアウト』『亡国のイージス』などに携わり、舞台の演出なども数多く手がける長谷川康夫さん。
長谷川監督はオリジナル版を観た折、”思い描いた未来など決して待ってはいない”との作品のメッセージに共感。昨今”夢に向かって突き進めば必ず叶う、それが今、分かりました!”などという言葉をやたらと聞くが「それは叶ったから言えるのであって、その何千倍も叶わなかった夢があるんだということを、この映画はちゃんと伝えている」と受けとめる。「でもここからが大事で、夢を追いかけた時間はかけがえがなく、決して後悔なんかするようなものでもない。それを大人になった僕らは知っている。無駄じゃなかった人生の大切な時間をちゃんと思い出させてくれるから、観客はどの世代であっても胸を打たれる。別の意味でハッピーエンドであり、前向きな映画ですよね」と賞賛する。
今回、日本版の制作にあたり、台湾版では分からなかったそれぞれの背景や家庭環境を丁寧に描いた。映画自体のタッチも少し落ち着いたものに変化させている。主人公の天然パーマは、原作小説にあったものだという。「父親との関係性や、学校教師との対立は、主人公の天然パーマのおかげで分かりやすくなったと思います。原作では軍事教官が存在し、台湾の政治や歴史的な要素が物語をより興味深くしていますが、日本版ではそういうわけにはいかないので、女性教師一人に役割を集約しました」と説明する。
主要キャスト7人に対し「彼らが現実に仲良くなってお互いを思いやり、それが芝居に表われるのを、どれだけ映像に収められるかが勝負」と賭けていた。実際に7人に会い「このメンバーなら大丈夫だ、とホッとしました。台湾版に負けず、この7人がいてくれれば日本版ならではの物語ができる」と確信。なお、長谷川監督がこれまで手がけた脚本の中でも気に入っているという、青春群像劇『深呼吸の必要』も、主要キャストは7人。「青春映画の基本は7人なんですよね。アメリカの青春映画で大好きな『セント・エルモス・ファイアー』も7人。男女比は様々だけど、7人という数にこだわりは持っています」と話す。オリジナル版を観た時に「堤防に並んだ7人は見事な画。王道をちゃんとやってくれている」と感激した。
なお、本作は台湾での撮影も行われている。デートシーンは台湾で、とプロデューサーからの発案だった。「どこだかわからない物語にしたかった。舞台を誰にでもある故郷、どこか特定できない日本の地方都市として、季節感のようなものもあえて無視した」と明かす。その狙いについて「パラレルワールドというのが、オリジナルからの一つのテーマ。つまり、あのデートも二人どちらかの心の中にだけあったものかも知れない」と説く。台湾版で素晴らしいと思ったシーンは、何かを狙おうとせず、まったくそのままにした。「構図やカット割りも同じです。でもその中で演じている俳優達が異なるので、観え方の違いは大きい。完全コピーにはならない」と捉える。また、高校時代のシーンは台湾版よりかなり密度濃く描かれており「台湾版は余韻のようなものを沢山残している。日本版では登場人物の背景を含め、物語的要素を強くした」と明かした。クライマックスの印象も違っており、日本版ならでは作品となっている。
映画『あの頃、君を追いかけた』は、10月5日(金)より大阪・梅田のTOHOシネマズ梅田他にて全国ロードショー。
- キネ坊主
- 映画ライター
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