ロンドンの路上で暮らす男の、どうしようもなく、だが目が離せない悲喜こもごもの人生を描く『URCHIN/アーチン』がいよいよ劇場公開!
©Dream Space Films Ltd/British Broadcasting Corporation/The British Film Institute 2025
路上生活を送るはみ出し者の男のジレンマと、負のスパイラルから抜け出せない人生を描く『URCHIN/アーチン』が10月23日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『URCHIN/アーチン』は、生活力もモラルもない路上生活者の青年が、変わることを切望しながらも転落していく姿をユーモアを交えて描き、社会の隙間に落ちた人々と、そこから抜け出せない社会システムを映し出す。ロンドンの路上で暮らすマイクは、通行人に小銭を要求したり、炊き出しの列に並んだりと忙しい日々を過ごしている。そんなある日、彼は親切にしてくれた男性から衝動的に金品を奪ってしまい、逮捕される。出所後は更生することを誓うマイクだったが、順調な生活はふとしたことで崩れ、再び転落していく。
本作は、『逆転のトライアングル』『ベイビーガール』で世界的に注目を浴びたイギリス出身の俳優ハリス・ディキンソンの長編映画監督デビュー作。路上生活者や依存者の支援団体をサポートしてきた経験に着想を得て、ディキンソン監督が自ら脚本も執筆した。『ハリー・ポッターと謎のプリンス』のトム・リドル役などで知られるフランク・ディレインが主演を務め、『午前4時にパリの夜は明ける』のメーガン・ノーサム、『LUCY ルーシー』のアムール・ワケドが共演。タイトルの「URCHIN」という言葉は、社会に居場所を作れない、はみ出しものを意味する。2025年の第78回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され、最優秀男優賞(フランク・ディレイン)と国際批評家連盟賞を受賞、ディキンソン監督もカメラドール(新人監督賞)にノミネートされた。

©Dream Space Films Ltd/British Broadcasting Corporation/The British Film Institute 2025
映画『URCHIN/アーチン』は、10月23日(金)より全国の劇場で公開。関西では、10月23日(金)より大阪・梅田のテアトル梅田や京都・烏丸御池のアップリンク京都、10月30日(金)より兵庫・神戸のシネ・リーブル神戸で公開。
自分自身の弱さに気づくことは難しい。気づいたとしても、それを克服するのはさらに難しく、隠して済むならそうしてしまうことの方が多いだろう。誰しもがそれを少しだけ許しつつ、上手く付き合っていける環境が整っていればいいのだけど、現代社会に於いてはなかなか難しいと言わざるを得ない。
清く正しく生き、人に迷惑をかけず、波風を立てないことが求められる現代。社会のモラルや暗黙のマナー・ルールから少しでも外れた者は社会から見放されてしまう。当たり前のように感じるかもしれないが、窮屈さもある。高ストレス社会の中で、ちょっとした気の緩みから踏み外す者もいるかもしれないし、必要以上の競争に揉まれ、敗れ、立ち行かなくなる者もいるかもしれない。自分のせい、といえばそれまでだが、少しの緩みも許容できない社会でいいのだろうか。敗れたものは去らねばならないのだろうか。また、そうならずに済んでいる人は誤魔化し誤魔化しなんとか生きているのではないだろうか。そんなギリギリでいいわけない。社会が貧しくなっている中、そういったURCHIN(はみだし者)に構っていられないのだろうけど、どんどん悪くなる一方に感じてしまう。
本作の主人公、マイクはロンドンの路上で生活している。何があったかは知らないが、ギリギリの生活だ。他者からの善意の振る舞いすら恰好の機会と捉え、暴行と窃盗を働いてしまう。正真正銘のクズかもしれない。そんな彼も変わるためにもがいている。彼以外から見たら舐めてるとしか思えないかもしれないけど、それでも変わりたいと思っているはず。ただ、一度踏み外した者が辿り着く先には、誘惑も隣り合わせに存在し、抜け出すことは容易ではない。
全てを自己責任、自業自得と言ってしまえば簡単だけど、そんな彼も社会の一員であることは間違いない。負の連鎖を断ち切る術をキッチリ社会が用意できていれば、少しは変わったのでは?見放してしまうから悪や闇が絶えず、要らぬ恐れを生んでいる側面もあるはず。彼は本当に酷い部分も多い。きっと日本の観客には”救いようのないクズ”と思われるのだろうし、そんな人は断罪の対象なのかもしれない。そんな彼をハリス・ディキンソン監督は、じっと見つめる。私たちは、たまたま弱い部分が人を傷つけなかっただけかもしれない。たまたま弱さを受け入れてくれる人がそばにいてくれたのかもしれない。たまたま恵まれていただけでしかないのだ。今すぐ何かが変わるようなことはできないけど、誰もが社会からはじき出さないように、頼りが必要な時に適切な頼りを受け取れるような社会にできるように意識したい。
fromブライトマン
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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