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あるがままではなくて、成長したいと願う人、強かに生きていかなければならない人を描きたい…『ゴールド』出演の幸田純佳さんと知多良監督に聞く!

2025年11月28日

高円寺の路上ライブで出会い、交際を始めたふたりが理想と現実の狭間で生きる様を描く『ゴールド』が11月29日(土)より大阪・十三のシアターセブンで公開される。今回、山中由美役の幸田純佳さんと知多良監督にインタビューを行った。

 

生活と恋愛を題材にした自主制作の短編作品で高い評価を受け、2023年には池袋シネマ・ロサで特集上映も行われた知多良監督の長編デビュー作となる映画『ゴールド』。本作では、終わりのある時間の中で、誰かとともに生きるために言葉を尽くす人々の姿が描かれている。主人公は、中小企業で事務職として働くミキと、家事好きで清掃のバイトをしている弘樹。ふたりは、高円寺の路上ライブで知り合い、恋人になる。ミキの強さにひかれた弘樹は、自立した大人になろうと正社員として働くことにするが、ミキは弘樹に無理をせず、専業主夫でもいいから家にいてほしかった。結局、弘樹は男ばかりの職場になじめず、毎晩ため息をつくようになっていく。一方のミキも、何かと社会のせいにしがちな後輩や、悪意なくセクハラ発言をする上司の間で疲弊し、お酒の量が増えていく。ミキの周囲の人々は、稼ぎのない男との付き合いを反対し、ミキの「あるがままでいてほしい」という思いは単なる甘やかしだと腐すなど、さまざまな言葉を投げかけてくる。ミキはただ弘樹と一緒にいて、同じ時を過ごしたかっただけなのだが…
2020年に東京・高円寺の路上でシンガーソングライターのグッナイ小形さんと知り合った知多監督は、グッナイ小形さんの楽曲「きみは、ぼくの東京だった」のミュージックビデオ(MV)を製作。このMVを出発点に、知多監督が実体験をもとに取材を重ね、3年をかけて本作を完成させた。「きみは、ぼくの東京だった」のMVにも出演した小畑みなみさんが佐藤ミキ役を演じ、『この日々が凪いだら』のサトウヒロキさんが恋人の西弘樹役を務めた。『愛のくだらない』『思い立っても凶日』等で知られる野本梢監督が共同プロデュースを担当している。

 

先述の通り、グッナイ小形さんの「きみは、ぼくの東京だった」のミュージックビデオから生まれたという本作。どういったいきさつであったかを尋ねると、「ミュージックビデオを撮影する際に、映画作りを共にしてきたサトウヒロキさんと小畑みなみさんが出演する恋愛ドラマに仕立てるべく、リハーサルに使用することを目的とした脚本も用意した。あくまでリハーサルで使用するために書いた脚本だったが、おもしろいんじゃないかと盛り上がり、短編作品として撮影してみることに」なったそうだ。しかし「弘樹側ばかりが描かれていたため、男性視点が強く、女性が悪者のように見えてしまうな」と気づき、「主人公のミキが携わる仕事の話を取り入れよう」と今度は中編映画を目指して書き足していった。そして、知多監督が清掃会社や映像制作会社で働いていた経験やその際に感じたことも具体的に脚本に盛り込んでいった結果、気づけば120分の規模となるシナリオに至ってしまい、知多監督は困惑してしまう。だが、共同プロデューサーである野本さんがサトウさんに長編映画を撮る旨を伝えてしまっており、サトウさんからは「楽しみにしています」と快く承諾をいただいたことにより、「撮るしかない」と一念発起する。なお、主人公は「弘樹は生きることや働くことが苦手な弱い存在。ミキは、強くて働くことが好き」と、対になる存在として設定されている。「ミキは職場でも強かに生き抜いていける人。対して弘樹や、幸田さんが演じる山中は打たれ弱い人。この立ち振る舞い方は、性別が変わると見え方も変化する」。そういったジェンダーバイアスに縛られてしまう中で、「弘樹はあるがままではなくて、成長したい」「ミキは弘樹にあるがままでいてほしい」と、それぞれの考え方にズレが生じていく。では、「あるがまま、とは何だろう。自由かな。自由って何だろう」と、知多監督は登場人物たちの欲望を深堀して、ラストシーンまで仕上げていった。

 

キャスティングにあたり、サトウさんと小畑さん以外はほとんどの役でオーディションを実施して、役柄に合っている方を選んでいるのだが、オーディション前、知多監督は、「ミキの職場の後輩である山中の『女性は今まで虐げられてきたんだから、声を挙げないとダメですよ』といった台詞を自然に言える人がいるのかな?と、不安だった」と告白。オーディションで台詞を読んだ幸田さんは「自分が女性として生きることに対して、感覚が変わったんです」と、当時言葉から力を得たそうだ。その幸田さんの様子に、知多監督は「幸田さんは発する言葉を心から信じている」と実感し、山中役での出演をお願いした。幸田さんは山中について「本当の自分に近い。内気で真面目すぎて、周りが見えていないところとか」と実感。改めて台本を受け取り、全編を読んでからは「繊細な言葉が物凄くあります。そして、バイト先にこういう人がいたな」と、他の登場人物にも関心を寄せ、「弘樹とミキのやり取りが可愛らしい。日常と地続きである場面がたくさんあって、おもしろいな」と映画を通して現実を見つめたという。

 

撮影現場では、働くことが苦手な弘樹と自身を重ねていた知多監督は辛くなるときもあったそうで、撮影前の朝に川をずっと眺めていたこともあったという。だが、撮影中には、俳優たちの演技が良かったことから、現場を楽しむことが出来たそうだ。そんな知多監督を見ていた幸田さんは、「穏やかな撮影現場でした。そのままでいられる環境を作ってくださっている」と撮影を振り返る。山中由美を演じることについて「思ったことをキツく言わないけど、小出しでツンツンと突いているような人だった」と難しさを感じながらも「大げさではなく、日常のように変わらないようにしよう」と心がけた。知多監督は「山中のモデルになっているのは、女性としての信念を持っている女友達」と明かし、終盤のとある展開について「山中は、会社でうまくいかないときに、ミスをしてしまうことがある。注意されるけど“悪いのは自分だけじゃない”とつい考えてしまう。だから、“悪いのは自分だけじゃない”ということに、仲間であるはずの女性が完全に賛同してくれないとき、結果としてあのような行動をとってしまう」と、自身の人間関係において困惑した経験から執筆したことを打ち明けた。(“とある展開”はぜひ劇場でお確かめください。)一方で幸田さんは「実際に見下されたようなことを言われても、私自身はあまり言い返せないし、このモヤモヤした感覚を表に出せない」と自身を顧み、「山中はその感覚を言葉にして伝えられる人だったから、私はそこに喜びを感じていた。目標にできる人が見つかったので、嬉しかったですね」と振り返る。

 

また、映画『ゴールド』の見どころの一つであるラストシーンについても話を聞いた。俳優の演技を見ながら、作品に対する手応えを感じていた知多監督は、ラストシーンが撮れたときに「ようやく完成したな」と達成感があったという。16分にも及ぶラストシーンであるため、終電やライティングの関係で1日に3回しか撮ることが出来ない。どうにか撮り終えたものの、撮影した翌日に撮影した素材を見返してみると、どうも納得ができず、再び最終日の夜に3回撮ったそうで、「最後の最後で“これはいいな”というシーンを撮ることができた。そのラストシーンが撮れたときに“ようやく完成したな。映画になるかも”と思った」と思い返す。

 

2022年に一旦クランクアップ後、編集作業を経て2023年の夏に128分の作品として完成試写を実施。その後、追加撮影を経て120分に縮めた上で正式に完成に至っている。その後、映画祭に応募した当初は、思った結果が得られず、手応えがなかったものの、2024年以降、様々な映画祭で上映していただけることになり、初めて「この映画は誰かに届いて響いていく映画なんだ」と感じられるようになっていく。観客からは「職場であんなことがあった」と話してもらったり、主人公より上の世代から共感する声があったり、弘樹に自身を重ねたお客さんもいらしたりしたことから「ぜひ映画館で上映して、もっと多くの方に観てほしい」と決心できた。幸田さんも観終わったお客さんからいただいた言葉を通して「様々な登場人物の中で、どこかで見たことのある人や、“こういう人いるな”と感じた人が1人でも見つかるだけで救いになります。苦手な人にも人生があり裏側があることを想像できる。『ゴールド』を観ていただくことで、世界が優しくなったら嬉しいな」と願っている。

 

本作を撮ったことで、知多監督は「弱い部分を抱えながらも孤独に生きている人を描きたい」と考えるようになったことから、『ゴールド』の後に、幸田さんと『掘る女』という3分間の短編作品を撮っており、いつかは長編作品として手掛けたいそうだ。また、コロナ禍や各地で起こる災害によって死を身近に感じるようになり、「死とどのように向き合っていけばいいのだろう、といったことを突き詰めて描く作品を手掛けたい」と模索中だ。知多監督との短編作品を経て、幸田さんは「知多さんが紡ぐ言葉や世界観は『ゴールド』から一貫している。山中由美のように、自身の気持ちを器用には伝えられない役をまた演じられたら嬉しいな」と願っており「日常と地続きのキャラクターを、ありのままの自分で背伸びせずにたくさん演じられたら嬉しいな」と楽しみにしている。

 

映画『ゴールド』は、11月29日(土)より大阪・十三のシアターセブンで公開。

[上映スケジュール]
11月29日(土)・30日(日)17:40~19・45
12月1日(月)~12月5日(金)19:00~21:05

[連日上映後 舞台挨拶開催]

11月29日(土)上映後:小畑みなみさん、幸田純佳さん、知多良監督、野本梢さん(MC)
11月30日(日)上映後:小畑みなみさん、知多良監督、野本梢さん(MC)
12月1日(月)上映後:小畑みなみさん、幸田純佳さん、知多良監督、野本梢さん(MC)
12月2日(火)上映後:相田冬二さん(Bleu et Rose)(映画批評家)、小畑みなみさん、知多良監督
12月3日(水)上映後:松井敏喜さん(福井映画祭実行委員会/中之島映画祭 初代企画長)、小畑みなみさん、知多良監督
12月4日(木)上映後:小畑みなみさん、幸田純佳さん、いとうたかしさん、知多良監督
12月5日(金)上映後:小畑みなみさん、幸田純佳さん、知多良監督

現在の日本の日常の問題を、こんなに上手く破綻なく映画にできているのがすごい。自分が被害者なのか加害者なのか容赦なく考えさせられる。ゴールデンタイムという言葉は、この映画の中であのタイミングで出た途端に、何を言わんとしているかが直感で分かる秀逸で見事な言葉だ。傷ついた時に出会う音楽と、辛い時に飲む酒と、人生で一瞬しかないゴールデンタイムは、きっと多くの人が自分のこととして共感できるはず。

fromとっしー

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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