古語版の公開に向けて頑張りたい!『後朝の花雪』栗栖直也監督を迎え舞台挨拶開催!

下級貴族の恋模様を怪談として描く『後朝の花雪』が10月17日(金)より全国の劇場で公開中。10月19日には、大阪・梅田のテアトル梅田に栗栖直也監督を迎え舞台挨拶が開催された。
映画『後朝の花雪』は、2016年に個人制作で作りあげた3DCGアニメ『ねむれ思い子、空のしとねに』で国内外から高く評価された栗栖直也さんが、9年ぶりに完成させた短編3DCG怪談アニメ。今昔物語の1編をモチーフに、美しき平安の悲恋を徹底した時代考証により描き出す。1000年前の京都。かつて捨てた女の家を訪ねた時正は、その館の中で朽ちずに残っている女の骸と、周囲を漂う不気味な光を目撃する。自分を恨んで死んでいった女の祟りを恐れる時正は、陰陽師である賀茂忠行のもとへ向かうが…
物語の舞台となる建物は、平安京・右京六条一坊五町の発掘資料の図面をベースに、現存する平安時代の神社仏閣や資料から構造を導き出し3DCGで再現。1980年代から多くのゲーム音楽を手がけてきたサウンドコンポーザーのKawagenが音楽を手がけ、平安時代に存在した和楽器およびシンセサイザーのみを使用してサウンドトラックを制作した。テレビアニメ「BORUTO ボルト NARUTO NEXT GENERATIONS」の木島隆一さんが時正役、ボーカロイド”結月ゆかり”のボイスを担当する石黒千尋さんが小浜役で声の出演。なお、『ねむれ思い子、空のしとねに』のデジタルリマスターバージョンが同時上映。
今回、上映後に栗栖直也監督が登壇。手掛けてきたCGアニメーション制作を振り返る舞台挨拶が繰り広げられた。
2004年、平安CG短編『文使』を最初に制作した栗栖監督。作中の台詞は平安時代の古語を用い、現代語訳による字幕を映し出すアイデアを思いつき、東京国際アニメフェア優秀賞等いくつかの賞を受賞した。以降、個人によるアニメーション制作を続けている。その後、友人からの誘いがあり、大学と手を組み半年SF短編『Turquoise Blue Honeymoon』を作り上げた。
なお、東京国際アニメフェアに参加した際の懇親会で、株式会社ウォーターオリオン代表で声優の福島おりねさんと出会っており、その10年後、『ねむれ思い子、空のしとねに』が作品となっていく段階で主人公である入之波織音役にオファー。個人制作の内容に感心し、出演していただいた。福島さん自身が、母親との関係性に共感したようだ。台詞が吹き込まれた作品を公開するため、インディペンデント作品であるが、メジャー作品と同じような手間暇をかけていく中で、配給会社とつながることができ興味を持ってもらい、ロードショー公開に至ると共に、その後はレンタルビデオ店でよく借りられていた。
2016年に『ねむれ思い子、空のしとねに』がロードショー公開されて以降、配給会社と共に長編作品を検討。「江戸時代が舞台のファンタジーで、5歳と16歳の女の子2人が、茸みたいなものに閉じ込められた怨霊と旅するお話の第一稿を作り、声優さんによる声が入ったパイロット版ができた」と明かす。だが、『ねむれ思い子、空のしとねに』と同じ声優で準備していた中で、田中敦子さんの訃報を受けることに。
そして、本作については『ねむれ思い子、空のしとねに』のキャストからも継続して出演していただいており「イメージがぴったり」と喜んでいる。今回、劇場公開されているのは現代語版であるが、『文使』と同様に古語による台詞+現代語訳による字幕によって構成されているバージョンも制作されており、お客さんによる応援次第ではあるが公開する機会を伺っているようだ。なお、古語の台詞は関西弁・京都弁風の発音を用いており、時正役の木島隆一さんと小浜役の石黒千尋さんが北海道出身であるため、忠行役の武虎さんが兵庫県出身であることからイントネーションを指導してもらい、アフレコ収録を皆で頑張ってもらった。それ故に「今後の公開に向けて頑張りたい」と意気込んでいる。
映画『後朝の花雪』は、10月17日(金)より全国の劇場で公開中。関西では、大阪・梅田のテアトル梅田と京都・烏丸御池のアップリンク京都で公開中。

- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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