Now Loading...

関西の映画シーンを伝えるサイト
キネ坊主

Now Loading...

関西の映画シーンを伝えるサイト
キネ坊主

  • facebook

どのようにして攻めながら、”受け”の演技ができるか…『火喰鳥を、喰う』水上恒司さんに聞く!

2025年10月2日

若い男性が戦死したはずの祖父の兄の日記を読んだことをきっかけに、自分の身の回りで不可解な出来事が起こり始める『火喰鳥を、喰う』が10月3日(金)より全国の劇場で公開される。今回、水上恒司さんにインタビューを行った。

 

映画『火喰鳥を、喰う』は、第40回横溝正史ミステリ&ホラー大賞を受賞した原浩さんの小説を映画化したミステリーサスペンス。『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』『九龍ジェネリックロマンス』の水上恒司さんが映画単独初主演を務め、『六人の嘘つきな大学生』『山田くんとLv999の恋をする』等で活躍する山下美月さん、人気アイドルグループSnow Manの宮舘涼太さんが共演。『超高速!参勤交代』『シャイロックの子供たち』など幅広いジャンルの作品を手がける本木克英監督がメガホンを取った。信州のとある村に暮らす久喜雄司と夕里子の夫婦のもとに、謎めいた日記が届く。それは雄司の祖父の兄で、太平洋戦争末期に戦死したとされる久喜貞市の遺品だった。日記には異様なほどの生への執着が記され、最後のページには「ヒクイドリ、クイタイ」という文字がつづられていた。その日を境に、墓石の損壊や祖父の失踪など、雄司と夕里子のまわりで不可解な出来事が起こり始める。2人は夕里子の大学時代の先輩で、超常現象に造詣が深い北斗総一郎に、不可解な現象の解明を依頼する。しかし、存在しないはずの過去が現実を侵食していき、彼らはやがて驚愕の真相にたどり着くが…
主人公の雄司役を水上さん、雄司の妻である夕里子役を山下さんが務め、彼らとともに怪異に対峙することになる、どこか怪しく危険な空気をまとわせた男である北斗を宮舘さんが演じる。そのほかの共演に森田望智さん、吉澤健さん、豊田裕大さん、麻生祐未さん。脚本は『ラーゲリより愛を込めて』『ディア・ファミリー』等の林民夫さんが手がけた。

 

「僕は、原浩さんによる原作小説は読んでいないんですよ」と正直に話す水上さんは「今回は、しっかりとした脚本がある。自分が活きる脚本の中に足りない部分があるな、と感じた時にこそ、僕は脚本を読む。或いは、オファーを頂いた時、脚本が完成していない時に原作があれば読む」と真摯に話す。撮影中に、原さんとお会いする機会があり、原作を読んでいないことを伝えた上で「僕の芝居は合っているんですか?」と尋ね「合っています」と仰っていただいた。翻って、原作を読んでいる方に向けて「読んだ時の解釈と僕の演技には、どれぐらいの驚きや疑問があったりしますか?否定的、或いは、肯定的になりますか?」と尋ねたい気持ちもある。自身としては、原作から欠落している部分があるとは感じておらず「僕は、周りのキャラクターたちを立てていく役割。この動きによって自分の役が立っていく。キャッチャーの立場です」と真摯に述べていく。

 

役作りは事前に行い、演じていく中で形作られていくこともあるが「自分の意図していないことによって形作られていくことが一つの理想だ」と説く。本作の撮影前には『九龍ジェネリックロマンス』を撮っており「現場では、大きく体を作っていたので、その名残として大きく見えるのは仕方がないな」と覚悟していた。「元々、僕が持っている力をいかにして消すか。水を沢山入れて味を薄くするようなこと。自分からは何色であるかも分からない」と感じながらも「そこから滲み出てくるものが『火喰鳥を、喰う』の久喜雄司の大事な部分。作品の序盤でお客さんに対して与える情報によって、雄司がどういう人間であるかを表現することが役作り。そして、相手の芝居を受けて反応していく中で、自分が意図する反応などを選んでいく。今回は、攻めながら受けていった」と思い返す。本作では、夕里子との夫婦として過ごすシーンがあるが「僕は、夫婦になったことがない。夫婦とは何なのだろう」と思いながらも「夕里子は雄司に期待しているものがある。でも、それをしっかりとした言葉にはしない。だからといって、お互いにはっきりとした目的地を見つけて、そこに向かってやっていこうぜ、という2人ではない」と受けとめていく。「そういった関係性の人間達は、この世の中たくさんいる」と思いながら「お互いを思い合っているシーンでは、俺はお前のことをこういうふうに思っているんだよ、と言いがち」とツッコミ。「雄司には、夕里子に対する寄り添いが随所にある」と気づき「それらをベースにして、様々な物事に対して友人が立ち上がり、変わっていくお話。それは、まさに雄司らしいな」と実感している。なお、物語が中盤になる頃、超常現象に造詣が深い北斗総一郎が登場することで、雄司は変化していく。北斗が現れた瞬間の異質さに対して「僕は、ひたすら受ければいい」と考えていたが「自分が相手をするまでもないような人物こそが侵食してくる。終わった今だからこそ、演じる人間ならではの怖さはありますけどね」と思い返していた。雄司が変化していく中での攻撃性にも気を遣っており「僕の攻撃性は、雄司ほど静かではない。僕にはどこかで激しい時があるので、それを突発的に表現する。例えば、痛みを感じた僕は、怒りに変わりやすい」と認識した上で「瞬間的で瞬発力がある感情を雄司らしくすることを常に忘れない、ということが大変でした。雄司の中では瞬発的だけど、そこで僕の瞬発力を使っていくと、それは雄司じゃなくなる。このバランスのチューニングを常に考えていましたね」と振り返る。

 

もし、この物語の世界に飛び込んだことを考えてみると、水上さんは「北斗のポジションでありたい」と意外な反応を示した。「この作品において、北斗は一辺倒に攻め続けているような人物ではない。雄司を真ん中に置いている作品だから、雄司にとっては脇の存在。だが、北斗を真ん中に置いた時、雄司は脇役になる」と述べ「見せ方や見せるべき物事は、作品やポジションによって違ってくる。今回、北斗は受けている立ち位置をあまり見せてはいない。だからこそ、雄司が主人公だったら、僕は北斗の位置にいたいですね。 仕掛けているように見えるかな」と受けとめている。また「藤村さんと話してみたい」と思っており「実際に、どのような言葉で喋っているか、文字に起こしてみたいな。”火喰鳥ほにゃらら~”と話す人を厳密に書いたらどういった文字になるのか、インタビューしてみたいです」と好奇心旺盛だ。なお、カトウシンスケさん演じる玄田記者を気に入っており「物語の冒頭、先祖の手帳に魅了されている中で、玄田記者が西瓜を喰っている咀嚼音に与沢が気づく。皆が汗をかいて話を聞いているのに、何故スイカ食っているんだ…と。登場人物それぞれの心情を切り取っていきながら、引きのグループショットの中で魚眼レンズが玄田記者にあてられるのは変で好きですね」と独自の視点で力説する。そして、以前に『死刑にいたる病』で共演したことがある吉澤健さんと再び共演しており「今回は、血の繋がった人間同士の役で共演する。縁側で将棋をさすシーンは、夏休みのじいちゃんとの時間みたいなイメージがありましたね。風鈴の音や風が吹き抜けている時の気持ち良さや清良さがある」と懐かしんだが「雄司の背後で様々なことが起き始めていく恐ろしいシーンであることも好きですね」と作品を楽しんでいた。

 

戦後80年である今年に本作が公開されるにあたり「若い世代の僕らが、被爆された方々のお話を伺いに行くこともしています」と明かし「普遍的で動かさざる歴史や事実がある中で、それらに対する思いがあるからこそ、作品の中では、殺人犯を演じることもあります。それは、フィクションであるエンターテイメントとして捉えています。役者である水上恒司はそのように捉えていることを、できる限り世の中に僕は発信しているつもりです。現実とフィクションを分けて考えていただいた上で、作品を観て納得してくださる方が1人でもいれば幸せです」と俳優としての向き合い方を考えている。なお、本作においては「どのようにして攻めながら、”受け”の演技ができるか」をテーマにしていたことから「反省点はあるが、僕の中で、演技に関する引き出しの1つになった」という感覚があった。同時に「世の中に対して自分がやるべきことや取り組みたいことを見つけていく時、能動性は大事。受動ばかりになる役者も良くない」とも考えている。とはいえ、現段階では「能動的に演じるには、少しまだ早過ぎる気がする」と実感しており「基本的に、役者は選ばれる立場。選んでいただいた時に力をどれだけ発揮できるか。ご期待に対して、様々な意味で裏切られるか。お客さんがどう思うか。まずは、現場のスタッフ達をおもしろがらせるか。いい撮影だね、いい芝居だね、と思わせられることが大事だと思っている。そこに向かっていくためにも、待つ立場として、どういったことをやりながら待つか」と熟考中だ。「こういった作品に出演したいです」といった自らの希望はあまりなく「様々な映画に携れば携わるほど、1本の映画を作ることはどれだけ大変か、ということを思い知らされます。 能動的な活動は、まだ早いんじゃないかな」と冷静に自らを見つめていた。

 

 

映画『火喰鳥を、喰う』は、10月3日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のTOHOシネマズ梅田や難波のTOHOシネマズなんば、京都・二条のTOHOシネマズ二条や三条のMOVIX京都や九条のT・ジョイ京都、神戸・三宮のOSシネマズミント神戸等で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

Popular Posts