億万長者の趣味は人間狩り…終末的世界をシニカルに描く『我来たり、我見たり、我勝利せり』がいよいよ劇場公開!

©2024 Ulrich Seidl Filmproduktion GmbH
充実した毎日を送る億万長者が、趣味の”狩り”と称して無差別殺人を行う姿を描く『我来たり、我見たり、我勝利せり』が6月6日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『我来たり、我見たり、我勝利せり』は、「狩り」と称して人間を狙撃するエレガントな億万長者の姿を通し、資本主義の終末的世界をシニカルなユーモアで描いたオーストリア映画。起業家として成功し、莫大な財産を築き、幸福で充実した人生を送るマイナート家。家族を愛する父アマンは趣味の狩りに情熱を注いでいるが、狩りの対象は動物ではない。“上級国民”である一家は何を狩っても許され、アマンは何カ月にもわたって無差別に人間を射殺し続けていた。時にはその様子を目撃する者もいるが、誰も彼を止めることはできない。娘のポーラはそんな父の傍若無人な姿を目の当たりにしながら、上級国民としてのふるまいを着実に身につけていく。そしてある日、ついにポーラは父と一緒に狩りに行きたいと言いだす。
本作では、『失恋セラピー』のローレンス・ルップが父アマンを演じ、『さよなら、アドルフ』のウルシーナ・ラルディ、『フィリップ』のゾーイ・シュトラウプが共演。『パラダイス』3部作のウルリヒ・ザイドル監督が製作を手がけ、ダニエル・ヘースル&ユリア・ニーマンが監督を務めた。
©2024 Ulrich Seidl Filmproduktion GmbH
映画『我来たり、我見たり、我勝利せり』は、6月6日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のテアトル梅田、京都・烏丸の京都シネマ、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開。

富裕層が娯楽として行う”人間狩り”を題材にした映画として『ザ・ハント』を思い出す。得体の知れない環境に身を置かれた主人公が如何にして打破していくか、おもしろいストーリーテリングであった。そして、本作も、億万長者の趣味が人間狩りであり、その億万長者が主人公である。よくぞ、そんな物語を描いたな。観ている誰もが嫌いになってしまう人物を主人公にしていることに意味がある、としか考えようがない。金持ちはどんなに酷いことをやったとしても、最終的にはお咎めなし、であろうか。富を持つ者は自由にどのような行動もすることができ、法でさえ彼らを裁くことはできない。真相を分かっている人間はいくらでもいるはずだ。だが、こんなフィクションであっても、現実の世界においても同様のこと、或いは、それに近しいことが起こっている…と思えば、象徴的な描かれ方だろうか。そして、その血は受け継がれていくことを本作は象徴的に描いている。また、ミイラ取りがミイラになるが如く、人間はこんな風にも洗脳され、繰り返されていくのか、と愕然としてしまう。このような一種の”終末的世界”が現実にならないことを切に願うばかりだ。

- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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