日々の生活や人生に疲弊して苦しい人の心に、ポッと温かい蒸気をかけられる…『死に損なった男』水川かたまりさんを迎え公開記念舞台挨拶開催!

殺伐とした日々に疲れ、駅のホームから飛び込もうとするも、タイミング悪く死に損なった男性の数奇な運命を描く『死に損なった男』が2月21日(金)より全国の劇場で公開中。2月23日(日)には、大阪・梅田のT・ジョイ梅田に空気階段の水川かたまりさんを迎え、公開記念舞台挨拶が開催された。
映画『死に損なった男』は、お笑いコンビ「空気階段」の水川かたまりさんが映画初主演を務め、死に損なったうえに幽霊にとり憑かれて殺人を依頼された男の数奇な運命を描いたオリジナルストーリー。長編監督デビュー作『メランコリック』が国内外で数々の映画賞を受賞した田中征爾さんが、監督・脚本を手がけた。お笑いの道にあこがれて構成作家になったものの、殺伐とした社会と報われることのない日々に疲弊してしまった関谷一平は、駅のホームから飛び降りる決意をする。しかし、隣の駅で人身事故が起こったことにより、一平の状況が一変する。死に損なった一平の前に男の幽霊が現れ、「娘に付きまとっている男を殺してくれないか?」と、一平に殺人依頼を持ちかける。しかも、男を殺すまで幽霊は一平にとり憑くという。幽霊にとり憑かれてしまう主人公の一平役を水田かたまりさんが演じた。そのほか正名僕蔵さん、唐田えりかさん、喜矢武豊さん、堀未央奈さん、森岡龍さんら個性的なキャストが共演している。
今回、上映後に水川かたまりさんが登壇。劇場公開を迎え、安堵した気持ちと共にたっぷりと話を聞かせてくれる舞台挨拶となった。
劇場公開を迎え「嬉しく思います」と言いながらも「一昨日、公開初日に合わせて、11ヶ月の娘が初めて立ったので。そっちの方がちょっと嬉しかったです」と父親の立場でも話していく。作品への周囲からの反応としては「義理の母は、役と僕が重なって見えたらしくて…『途中からは”かたちゃん”が可哀想な目に遭っている、と思って涙が止まらなかった』という感想を頂きました」と伝えた。相方の鈴木もぐらさんは、設定だけを聞いて、どのような映画であるか考察しており「彼の考察では、自殺願望のある男が無人島に送られて、そこで正名さん演じる教師が『人生はゲームです』と言って、最後の1人になるまで殺し合いを始めさせられる、という映画なんじゃないかと…全然外れていまして…」と明かしていく。なお、実際に作品は観たようで、一昨日の舞台挨拶にはサプライズで登壇する手筈だったが、マネージャーがうっかり漏らしてしまったようで「本当に、来ると思っていた人が来たので…なんとも思わず…元気に歩いていたので…」と話すしかない。
改めて本作を振り返り「喜矢武さんとの戦闘シーンが外と家の中で2回あった。家の中での戦闘シーンを撮った時、撮影後、TV番組で相方と金玉を取り合う収録があった。戦闘シーンの撮影があったので、上手にできました。動きが良くなったので、本気を出せば金玉を取れたと思います」と自信があった。戦闘シーンの撮影は、1週間前に稽古日があり、アクション部の方から殺陣を教えてくださっており「ダンスの振り付けのように教えてくださった。今まで一度も格闘をしたことがなかったので」と打ち明け「実際に撮った映像を観たら、しっかりと戦闘になっていた。アクション部の方々が凄いな」と感心している。また、感情を露わにするシーンもあり「1ヶ所、涙をツーと流すようなシーンがあったんです。そこで、撮影が進んだ後で、役者の皆さんと色々と話していて、”自分も役者なんで…”という気持ちになってきた段階だったので。一応、スタッフさんが目薬を用意して下さったんですけど”大丈夫です、いけます”と言った」と自信があったが「そこから”用意スタート”より1分間ただ目を開けている映像を撮らせてしまった。カットがかかった瞬間に”はい、目薬いきましょう”と言われたので。それは凄く恥をかきました」と告白。「自分の犬が死んだことを…」と当時に思い浮かべていたことも打ち明けるが「ぜひとも、目薬をみなさん買ってください」と呼びかけるしかなかった。さらに、見えない役柄の人がいるシーンについて「僕は見えている側なので、わりと普通に正名さんが存在しているものとしての目線だった。唐田さんと喜矢武さんの方が難しそうでした。見えていないことを貫かなきゃいけない時に、正名さんがおもしろい顔(ひきつった顔)をして、2人が笑っちゃった」と明かしていく。
好きなことを続ける理想と現実も描いている本作。水川さんが芸人になろうと思ったのは、18~19歳の頃で「大学で友達が出来ず、全然行かなくなった。その期間にお笑いにハマった。爆笑問題さんに憧れて芸人になりました」と振り返る。なお、当初は教職課程を履修し、歴史か国語の教師を目指すと共に、サッカー部の顧問も担いたかったが「友達ができず、1回も授業に行っていません。友達がいた方がいいと思います」と言わざるを得ない。もし、教師役のオファーがあったら「やります。どの教科でもやります」と意欲があるが、あくまでも「銃を撃ちたくて。アクションシーンが好きで」と興味津々。なお「濡れ場はNGとさせていただきます」と留めていた。
今作へのオファーを受け、初日は緊張していたが「正名さんとの2人のシーンで、正名さんと初めてお会いして最初は緊張していた。家族や好きな映画の話をして打ち解けていって、何処にも出せないようなスケベな話をしてくださって緊張が解れた」と思い返す。唐田さんとの共演も最初は緊張していたが「『極悪女王』が撮られていたので、共演の芸人と仲が良く『劇場に行くんです』と話して下さったので、この人は芸人をバカにしない人なんだ」と感心。喜矢武さんは、初めて会った時に「ネルソンズの和田まんじゅうさんと麻雀をやったことがあります」と聞き、緊張が解けたようだ。田中征爾監督は口数が少なく、撮影中に演技指導のディスカッションが無かったが「僕も、バイト先で分からないことがあった時に聞きかず怒られることが多かったので」と共感。とはいえ、ランチを共にした時に「かたまりさんは、むっちゃ映画見ますか?」と聞かれ「観ますけど、人並みだと思います」と応えると「動き方や自分の存在のさせ方から、この人、無茶苦茶に映画を観る人なんだなぁ、と思いました」と受け、嬉しくなり、当日の日記に書いたようだ。演じた関谷一平について「自分とかけ離れ過ぎている役ではなかった。構成作家という職業や神経質なところは自分から離れている人物ではなかったので、やりやすかった」と振り返り「いきなり、人を殺すピエロをやれ、と言われても戸惑っていた。構成作家だったので、助かりました」と安堵している。なお、春に向けて新しい環境に飛び込む人に向けた緊張せずリラックスできる方法としては、お酒とタバコを挙げ「緊張は、わりかしします。体質的に、緊張すると…」と話そうとするが、”お昼にそぐわない話”ということで断念した。
仕事で大阪に来ることも多くあり「馴染んできたな、という感覚はあります。大阪で泊まる時、呑み屋に入ってみよう、と東京と同じようになってきた」と親しみがあるが「芸人なので、関西出身以外の人間なのに、関西弁を喋るのは、絶対にやってはいけないことだと分かっているので。吉本の新入社員が、5年後に、”自分、なんとかしいや”と使い出している時に、吉本興業は恐ろしい会社だな、と思ったりはします」と本音を話していく。とはいえ「関西出身じゃない人が関西弁を使うと、ピキッとなりますよね」と感じており、岡山出身の水川さんは「関西弁に近いようなイントネーションがあるので、絶対に関西の人間だと思われないように」と気をつけている。家族や地元の友達と話す時は岡山弁を使っており「でぇこん、てぇてぇて(大根、炊いといて)」と代表例を挙げた。
2024年度を振り返り「東京の自宅に両親が泊まりに来ていた。今朝帰る時、母親から『風呂場の入り口に血みたいな染みがついていた』と言われた…めっちゃ今怖いですね。実は、いちごの汁をこぼしちゃった、というわけでもなく。リアルに憑いているのかもしれないです、映画が公開されたので。正名さんが憑いている!?やだなぁ」といきなり告白。改めて、本作の見どころについて「最後、電車の中で、僕と堀さんが楽し気に会話しているシーンがある。”台詞は使わないので、2人で楽しく話していて下さい。ここはBGMで楽しそうな雰囲気を撮るので”と言われた。その間は、飼っている犬の話を2人でしている。お互いにチワックスを飼っていて…読唇術が出来る方は注目して観てもらえたら」と提案。今回の撮影を経て「武術は、やってみたいですね。アクションシーンが楽しい、と分かった。銃を撃ちたいですね。2とかで、喜矢武さんと銃撃戦などの戦闘シーンを作ってもらえたら嬉しいかな」と期待しており「銃を撃つのと、馬に乗って弓矢を射るのをやりたいんです、一生懸命に頑張るので。タイトルが変わってきそうですね。『死に損なった男』じゃねぇだろ、ということになってきそうなんですけど。なんとか上手いこと台本に組み込んでほしいですね」と楽しみにしている。
最後に「一生懸命に撮りました。このビジュアルはホラー映画っぽいかな、という感じなんですが、入り口がそういうテイストが入って来るだけで、様々な展開をしていって、日々の生活や人生に疲弊して苦しい人の心に、ポッと温かい蒸気をかけられるような作品になっていると思いますので、ぜひともよろしくお願いします。そして、アカデミー賞が欲しいので、ください!」と伝え、舞台挨拶を締め括った。
『死に損なった男』が全国の劇場で公開中。関西では、大阪・梅田のT・ジョイ梅田やなんばパークスシネマ、京都・三条のMOVIX京都や七条のT・ジョイ京都や烏丸御池のアップリンク京都、神戸・岩屋の109シネマズHAT神戸等で公開中。

- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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