現在はダムの底に沈む新潟県の奥三面での生活を記録した『越後奥三面-山に生かされた日々』(デジタルリマスター版)がいよいよ関西の劇場でも公開!
©民族文化映像研究所
ダム建設で閉村した奥三面の四季折々の様子を、1980年から4年間記録した『越後奥三面-山に生かされた日々』(デジタルリマスター版)が6月1日(土)より関西の劇場でも公開される。
映画『越後奥三面-山に生かされた日々』(デジタルリマスター版)は、日本各地の生活や民族を記録する作品を数多く手がけた記録映画作家・映像民俗学者の姫田忠義さんの率いる民族文化映像研究所が、新潟県の最奥で自然に寄り添う暮らしを続けてきた山村である奥三面(おくみおもて)の最後の姿をとらえたドキュメンタリー。新潟県北部の朝日連峰に位置する奥三面では、山の恵みを隅々まで利用する生活が昭和の終わりまで奇跡のように保たれてきた。冬の深い雪に覆われた山では、ウサギなどの小動物や熊を狩る。春には山菜採りや、慶長2年の記録が残る古い田での田植え。夏の川では仕掛けやヤスでサケ・マス・イワナを捕らえ、秋になると木の実やキノコ採り、仕掛けや鉄砲による熊狩りが行われる。ダム建設による閉村を前に、映画スタッフは1軒の家と畑を借り、1980年から4年間にわたって村の暮らしを撮影。村人たちが連綿と続けてきた山の生活を、四季を通じて丹念に映し出す。今回、デジタルリマスター版でリバイバル公開となる。
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映画『越後奥三面-山に生かされた日々』(デジタルリマスター版)は、関西では、6月1日より大阪・十三の第七藝術劇場で公開。
1967年にあった羽越水害を契機に、新潟県の三面川流域の洪水を防止するとともに、流水の正常な機能維持や発電を目的として奥三面ダムが着工し、2001年に完成した。その裏側では、ダムに沈んだ村があった。それこそが、新潟県村上市(旧朝日村)の奥三面地区だ。縄文時代から受け継がれてきた奥三面集落の暮らしを映像に残すべく、1980年から4年間にわたって村の暮らしを撮影したのが本作である。本作を手掛けた姫田忠義監督が2013年に亡くなり、没後10年を経て、デジタルリマスター版が完成した。撮影を終えた1年半後には全戸移住が行われており、村がなくなることが決まるまで営まれていた村の生活を丁寧に撮られたものが本作には収められている。四季の移ろいをカメラが捉えながら、自然の変化と共に如何にして生活していたか、十分に伝わってきた。令和の時代を迎えた今となっては、ついこの前だと思っていた古き良き昭和の生活に慈しみすらも感じてしまう。特に印象深かったのは、丸木舟づくりの映像だ。巨木を刳りぬき一本の木から船を作り上げていく姿が神々しかった。山で生きていく人々のダイナミズムを感じてしまう。そんな村での生活がなくなってしまったことの意味を考えさせてくれる意義ある一作である。
- キネ坊主
- 映画ライター
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- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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