あまりに乱暴で行く先々で問題を起こしてしまう制御不能な子供を描く『システム・クラッシャー』がいよいよ関西の劇場でも公開!
©2019 kineo Filmproduktion Peter Hartwig, Weydemann Bros. GmbH, Oma Inge Film UG (haftungsbeschrankt), ZDF
福祉施設や病院など現場での5年間にわたるリサーチを基に、トラウマが原因で里親や施設で問題を起こしてしまう少女の成長を描く『システム・クラッシャー』が5月3日(金)より関西の劇場でも公開される。
映画『システム・クラッシャー』は、社会に居場所をなくしてしまった9歳の少女の姿を繊細かつ強烈な描写で描くドイツ映画。父親から受けたトラウマを抱える9歳の少女ベニーは手のつけようがないほど攻撃的で、里親やグループホーム、特別支援学級など行く先々で問題を起こしていた。ベニー本人は母親のもとへ帰ることを望んでいたが、母親はベニーに愛情を持ちながらも接し方がわからず、施設に押しつけ続けている。そんな中、非暴力トレーナーのミヒャは3週間の隔離療法を提案し、ベニーと2人きりで森の山小屋で過ごすことに。はじめのうちは文句を言い続けていたベニーだったが、徐々にミヒャに対して心を開き始める。
今作では、本作出演後に『この茫漠たる荒野で』でハリウッドデビューを果たしたヘレナ・ゼンゲルが主人公ベニーを熱演し、『西部戦線異状なし』のアルブレヒト・シュッフがトレーナーのミヒャを演じた。監督・脚本は、本作が長編デビュー作となるノラ・フィングシャイト。2019年の第69回ベルリン国際映画祭アルフレッド・バウアー賞(銀熊賞)など世界各地で数々の賞に輝いた。
©2019 kineo Filmproduktion Peter Hartwig, Weydemann Bros. GmbH, Oma Inge Film UG (haftungsbeschrankt), ZDF
映画『システム・クラッシャー』は、関西では、5月3日(金)より大阪・梅田のテアトル梅田や京都・烏丸御池のアップリンク京都、5月4日(土)の神戸・元町の元町映画館で公開。
父親から受けたトラウマによって、自身に対して少しでも歯向かってくる者がいれば、攻撃的になってしまい収拾がつかなくなってしまう主人公である9歳の少女ベニー。最終的には物理的に拘束するしかないのだが、いつまでも拘束することはできない。穏やかになったとしても、少しでも気に入らないことがあれば、反抗的な態度をとってしまう。そんな中で非暴力トレーナーのミヒャがベニーに相対することに。様々な子ども達の相手をしてきたように伺えるが、ベニーに対しては、それまでの経験を活かすことが出来るのか定かではない。大人から与えれた環境の中では順応に生活することはできなかったが、逆に何も与えられず、自らで作り出さないといけない環境に身を置くと変化が起きていくのか。興味深いストーリーテリングである。とはいえ、やはり一筋縄ではいかないのがベニーだ。心を開くことで穏やかな生活になりそうであるが、一瞬の緩みによって崩壊してしまう。ベニーが”システム・クラッシャー”ではなくなる時が本当にやって来るのか、その問いを観る者に委ねているかのような作品であった。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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