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人生の中では、皆さん1人1人が主人公…!『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』舞台挨拶開催!

2024年3月23日

愛知・名古屋に作られたミニシアターのシネマスコーレを舞台に、映画と映画館に吸い寄せられた若者たちの群像劇が展開される『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』が全国の劇場で公開中。3月23日(土)には大阪・十三の第七藝術劇場に井浦新さんと芋生悠さんと杉田雷麟さんと井上淳一監督を迎え舞台挨拶が開催された。

 

映画『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』は、若松孝二監督が代表を務めた若松プロダクションの黎明期を描いた映画『止められるか、俺たちを』の続編で、若松監督が名古屋に作ったミニシアターのシネマスコーレを舞台に描いた青春群像劇。熱くなることがカッコ悪いと思われるようになった1980年代。ビデオの普及によって人々の映画館離れが進む中、若松孝二はそんな時代に逆行するように名古屋にミニシアター「シネマスコーレ」を立ち上げる。支配人に抜てきされたのは、結婚を機に東京の文芸坐を辞めて地元名古屋でビデオカメラのセールスマンをしていた木全純治で、木全は若松に振り回されながらも持ち前の明るさで経済的危機を乗り越えていく。そんなシネマスコーレには、金本法子、井上淳一ら映画に人生をジャックされた若者たちが吸い寄せられてくる。前作に続いて井浦新さんが若松孝二を演じ、木全役を東出昌大さん、金本役を芋生悠さん、井上役を杉田雷麟さんが務める。前作で脚本を担当した井上淳一さんが監督・脚本を手がけ、自身の経験を基に撮りあげた。

 

上映後、井浦新さん、芋生悠さん、杉田雷麟さん、井上淳一監督が登壇。ティーチイン形式の舞台挨拶が繰り広げられ、登壇者4人による会話の絶妙なアンサンブルが繰り広げられた。

 

井浦新さん演じる若松孝二監督の似せ方について聞かれ、井浦さんは他のお客さんに確認してみると「下唇がそっくり」という回答が。とはいえ、井浦さんは「若松監督を知らなくても、作品を観ていなくても、この映画は青春映画として楽しめるんじゃないかな」と提案。「登場人物は、芋生さん演じる⾦本法⼦ら以外は実在する人物なんです」と踏まえ「知っている必要は全くなく、一つの映画として楽んで頂けるように監督は作っています。この映画を観終わって、名古屋のシネマスコーレに行ってみようかな、若松監督の映画を観てみようかな、と掘り下げて楽しむ余白が沢山あります。知っている必要は全くないですね」と若松プロダクション初心者にも優しく話しかける。そこで、井上監督は「シネマスコーレで観ると、4D体験なんです。客席で観終えて、リアル木全さんがいるんです。不思議な感覚ですね。マルチバースですね」と加えていく。

 

 

製作の経緯について聞かれ、井上監督は「そもそも『2』を作るつもりが全くなかったんです。2022年2月19日、シネマスコーレ会館記念日から、コロナ禍のシネマスコーレを伝えるドキュメンタリーが上映された。その中では、木全さんはコロナ禍の危機を楽しみ、イキイキしているんです」と回想。「『止められるか、俺たちを』のような激動の時代はないから『2』は製作出来ない」と言っていたが「シネマスコーレを作る話なら出来るんじゃないか。パンフの寄稿に、冗談で『止められるか、木全を』と書いたら、反応があり真面目に考えた」と打ち明け「レンタルビデオが台頭してきた時代の物語なので、今なら配信の台頭と同じで、取り組み始めた。100%で木全さんの話をするつもりだった。ただ、木全さんだけではドラマが作られなかった。ドラマにある対立と葛藤がないんですよ。シナリオを書き始めたら、15分程度の分量でシネマスコーレが出来てしまった。ならば自分自身を出すしかない」と正直に話す。キャスティングにあたり、『福田村事件』で杉田雷麟さんに出会い「別の惑星から来たような存在感。あ、井上が来た」と直感。井上監督自身に似ているか、は求めなかった。監督の若かりし頃を実名で演じる作品はあまりなく、杉田さんはオファーを受けた際にプレッシャーを感じ「『俺じゃない』と言われたら、どうしよう」と困惑。だが、『福田村事件』の撮影当時、宿泊したホテルでは向かいの部屋だったこともあり、話す機会も多く「監督からも『僕を意識せず自由に演じてもらって良い』と言ってくれた。気負いせず演じながら、拘るところは演出して頂きながら、自由に演じさせて頂きました」と振り返る。2人の姿を見ながら、芋生さんは「二人はどんどん似ていっている」と指摘すると、井上監督はうっかりミスなエピソードを打ち明けざるを得なかった。本作の台本を読んだ芋生さんは「井上さんの話なんですけど、井上さんの目で見た様々な景色が映画の中に詰まっているから、様々な映画や映画館等の要素が詰まっていておもしろいな」と率直に話す。なお、撮影期間では、芋生さんは杉田さんと話す機会があまりなく、井浦さんが杉田さんと話すことが多かったようで、井浦さんは「2人が主演の作品なんです。とにかく、木全さんと若松監督が目立ってもしょうがない。青春映画として2人が煌めいていないと成立しない。2人には『この映画は君にかかっているから』と伝えた」と打ち明ける。なお、これは、若松監督が使った手法のようで「『お前が頑張れよ、お前が仕掛けろよ』と皆に言っていた。僕も若松監督役として…」と意識していた。杉田さんが演じる井上青年については「雷麟君がのびのびと演じている姿を見たい。井上役として、若松監督にいきなり馴れ馴れしかったら違う。不安な状態の中で演じているのは良いな。若松プロに加わった頃には活き活きとして、要らないことまでやり始めて、井上さんっぽいな。ノっていく姿を見ていられた。役を楽しんでいる姿を観ていたいな」と気に入っている。井上青年が若松監督に弟子入りを志願するシーンがあり、杉田さんは分岐点となるシーンと捉え、井上監督に演技の相談をしていたことがあり「新さんが本番を促してくれた。まさに監督が2人いたんですよね。葛藤がありつつも、本番に臨みました」と振り返ると、井浦さんは「躊躇ったままやった方が絶対に良いな。テストもしたくないな。台本通りに俳優は演じてしまう。『弟子にしてくれ』は勇気が要ること。不安定なままでドキュメンタリーでいいんじゃないかな。間と掴み始めると、つまらない。言いづらくて怖い中でも『弟子にしてくれ』と、人生を決めてしまうような大事なことを言う顔が見たい。完全に僕は”監督”になっていました」と思い出す。これを受け、杉田さんは「他のシーンでも、自由で良い、と行動を見せてくれる」と加え、信頼していた。芋生さんは、杉田さん演じる井上少年に対して「滑稽に見えた。同時に、目障りな存在。イライラしているんですけど、最終的には、恋愛感情ではなく、いなくなってほしくない特別な存在ではありました」と率直に話す。

 

 

ミニシアターに初めて来た高校生の素直な感想があり、井浦さんは「映画館は、シネコンもミニシアターも映画を観る場所としては全く変わらない。どちらも同じように文化体験できる特別な施設。ミニシアターは知っている人しか知らない認識がまだあります。でも、ミニシアターや小さな映画に出会って下さることがありがたいことです。大阪にも頑張っているミニシアターがあります。他の映画も観に来てもらえたら嬉しいです」と伝えていく。芋生さんも「ミニシアターは、支配人やスタッフの方々とお客さんの距離感が近い。一つ一つの映画に愛情を持ってくださっている。直で人と人が繋がっていると感じられます。ミニシアターに来るといつも励まされます」と実感している。杉田さんは「ミニシアターは色や愛があります。僕は、ミニシアターで上映してくれる映画で育ててもらい、今後もずっとやっていくつもりなんです。監督をやったら、ミニシアターで上映していく。日本映画界の基盤になっている」と受けとめており、井上監督も「才能のゆりかごだ」と添えていく。

 

 

ラストシーンにある若松監督の台詞について聞かれ、井上監督は「アメリカン・グラフィティ」を意識したことを話し、井浦さんのアドリブが加わったことを明かす。井浦さんは「若松監督が井上さんに言葉をかけるなら、と想定して井上さんが書いているので、的が外れている。若松監督だったら、こう言うだろう。井上さんの話しながら違う話をする。井上さんの話をしていない」と指摘し「『カットをかけるまで、聞いていてください』と言って、あのシーンをスタートさせた。”映画を作る”映画の物語で残しておくなら、違う話をしながら、あんなシーンにした」と振り返る。また、若松監督が本作を観て声をかけるなら…と尋ねられ、井浦さんは「1作目の時から『バカヤロー!』しかないだろうな。『人の名前で映画を作りやがって』と」と断言すると、井上監督も「1作目で白石監督が『恩返しできたんじゃないか』と言っていた。若松さんは明快です。『また、俺で金儲けしやがって』と」と添えていく。芋生さんは困りながらも、井浦さんに言ってもらうことをお願い。井浦さんは「芋生さんは、若松監督が好きなタイプ。知らず知らず『次の作品にもスタンバイしとけよ』って言われるかな。そして、巻き込まれていくタイプかな」と考え「雷麟君は、まず現場で怒られている。
終わって後は何も言わない。近くにいる俳優部は『言われていて良いなぁ』と思ってしまう。怒られ係になる」と察していく。これを受け、杉田さんは「この仕事を始めた頃、最初の現場では、理不尽なことで怒られていた。内心では『いやいやいや…』と」と思い出していた。

 

 

最後に、井浦さんは「全国の映画館で、十三のように『福田村事件』『止められるか、俺たちを』『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』の3作が上映されている映画館はなかなかない。1作目を観ていない方は、2作目を観てから1作目を観る不思議な流れも、世界線も時代も違いますが楽しめます」と一味違った映画の楽しみ方を提案。井上監督は、自身の昨年ベスト1である『さよなら ほやマン』や本作のパンフレットやTシャツやクリアファイルやサウンドトラックをお薦め。杉田さんは「元気をもらえて、前に進める映画。初めてミニシアターに来た方が1人でもいると僕達も嬉しい。そういう人をもっと増やしたい。もっと多くの人に観てもらいたい」と伝えていく。芋生さんは「井上さんが書いた脚本ですが、皆が主人公になっている映画です。皆さんの人生の中でも”いつ上手くいくんだろう”という葛藤だったり、”ずっと躓いているなぁ”という自分に対する怒りを感じると思うんですが、失いたくないものや守りたいものがある中で必死に頑張っている皆さんだと思うので、映画の中では皆が主人公だったように、皆さん1人1人が主人公だと思っています。悔しいことがあると思うんですけど、一緒に頑張りましょう」とエールを送り、舞台挨拶は締め括られた。

 

青春ジャック 止められるか、俺たちを2』が全国の劇場で公開中。関西では、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田や十三の第七藝術劇場、京都・烏丸の京都シネマ、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開中。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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