ケチな棺桶職人と夢見る栗売りの寓話『栗の森のものがたり』がいよいよ関西の劇場でも公開!
©NOSOROGI – TRANSMEDIA PRODUCTION – RTV SLOVENIJA – DFFB 2019
第2次世界大戦の影響が残る1950年代を舞台に、息子を待つ老人と戦地へ行った夫を待つ妻を描く『栗の森のものがたり』が10月27日(金)より関西の劇場でも公開される。
映画『栗の森のものがたり』は、イタリアとユーゴスラビアの国境に位置する広大な森を舞台に、ケチな棺桶職人と夢見る栗売りの人生を絵画のような映像美でつづった大人の寓話。1950年代、美しい栗の森に囲まれた国境地帯の小さな村。長引く政情不安から多くの人々が村を離れていく中、老大工マリオは家を飛び出したまま戻らない息子からの連絡を待ち続けていた。一方、栗売りのマルタは、戦争へ行ったまま帰ってこない夫からの手紙と数枚の写真を手がかりに、現在夫が住んでいると思われるオーストラリアへ旅立とうとしている。ある日出会ったマリオとマルタは互いの境遇を語りあい、やがてマリオはマルタにある提案を持ちかけるが…
本作では、フェルメールやレンブラントといったオランダ印象派の画家に影響を受けたというスロベニア出身の新鋭グレゴル・ボジッチ監督が、ロシアの文豪アントン・チェーホフの短編にインスピレーションを受け、人生の機微をメランコリックに描き出す。
©NOSOROGI – TRANSMEDIA PRODUCTION – RTV SLOVENIJA – DFFB 2019
映画『栗の森のものがたり』は、関西では、10月27日(金)より大阪・梅田のシネ・リーブル梅田や京都・烏丸御池のアップリンク京都、11月18日(土)より神戸・元町の元町映画館で公開。
イタリアと旧ユーゴスラビアの国境、現在ならイタリアとスロベニアの国境辺りが舞台の本作。第二次世界大戦後の世界では、まだ戦地から戻っていない者がおり、息子や夫の帰りを待つ親や妻がいるわけだ。家族の事情があって家から動くことが出来ず、ひたすらに待っている者がいれば、いるであろう土地に向かいたくても金銭的なことから動けないものがいる。事情が違えど動くことが出来ない者がいる中で、季節は否応なく進んでいく。そんな移りゆく季節の情景を本作では独特の美しさを以て表現していた。ストーリーは第三者の視点から寓話的に描いている。一種の格言を伝えているかのようでもあるが、そんなことはない。淡々と彼等が直面していることを伝えていく。時折、幻想的でファンタジーを描いたようなシーンが垣間見られ、本作が寓話であることを示している。辛い物語が描かれているようにも感じてしまうかもしれないが、最終的には一筋の光が射したようにも感じられた作品だ。リリカルな小さな作品であれど、じっくりと味わえる映画だった。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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