Twitterを見ていると、知らない人の人生や自分には遠い世界のように思える経験が流れてゆく。そして、道端で人とすれ違うぐらいの気軽さと光のような速さで瞬く間に広がっていった。刺激的なジェットコースターを楽しむような感覚で共感や反発で埋め尽くされていく。本作で描かれる、アザイア “ゾラ” キングが経験したスリリングな２日間を綴った１４８のツイートも、またその一つだ。この話を映画にしたくなるのも頷ける。誰もが自分事のように捉え、何かを言わずにはいられなくなってしまう。

ストリッパーのゾラは、出会ってすぐ意気投合したストリッパー仲間のステファニと共にフロリダへ出稼ぎ旅行に出かけることになる。しかし、待っていたのは、ステファニの秘密と知りたくなかった世界だ。足を踏み入れたら戻って来られないような領域が身近に存在し、親しい友人には自分の知らない側面がある。自分が知らないだけでゾッとするような悪意や考えたくもない搾取の構造があることに誰もが憤りや恐怖を感じてしまう。

そして、時間を飛び越えて深い繋がりを感じていた友人の裏切りや拗れた関係性は多くの人々に刺さる。ゾラを演じるテイラー・ペイジとステファニを演じるライリー・キーオが、万華鏡の中のような空間でメイクしたり、見つめ合ったりするシーンでは２人の強い絆を感じさせてもらった。しかし、物語が進むにつれて２人の絆は粉々に打ち砕かれて冷め切ったものになっていく。必然とはいえ、なんとも切ない。今作には、普遍的な人間関係のもつれから社会問題まで、ひと夏の失敗談から幅広いテーマが広がっていた。

また、今作の作風は、他の作品では見られない味わい深さがある。フィルム撮影で切り取られた映像は往年の名作映画のような雰囲気を連想してしまう。だが、ＳＮＳ時代特有の直接的でギラギラした表現が飾り付けられている。なんだかアンバランスにも見えた。しかし、フィルム撮影が持つ普遍性とＳＮＳ的表現が持つ現代性を同時に担保しているように見える。ミカ・レヴィの劇伴も相変わらず独特で忘れられなかった。