目の前に対峙する男や人間に対して、そこに存在する女でいたい…『土手と夫婦と幽霊』カイマミさんに聞く!
葬式の帰り道に、土手沿いに住む女と出会った小説家が体験する世界を、モノクロ映像で淡々と描き出す『土手と夫婦と幽霊』が関西の劇場でも3月12日(土)から公開。今回、カイマミさんにインタビューを行った。
映画『土手と夫婦と幽霊』は、インディーズ映画ならではの自由な視点で、普遍的なテーマを描き続けてきた渡邉高章監督が、男女のひとつの最終形として夫婦の姿にスポットを当てたドラマ。葬式に足を運んだ小説家の私。その帰りに私が高橋に誘われて向かったのは、土手沿いに暮らす女の家だった。目覚めた私は、記憶が思い出せずに帰る場所もわからず、女の家に居座ることになった。不味い食事、ぬるい風呂……輝きを失った女との時間。そして、その世界にはあるルールが存在した。
脚本執筆段階から、監督と関わっていたカイマミさん。過去作品はポップな印象があり「監督の世界観がいつもと違うな」と察した。仕上がって台本を読み「点がつながって線になる。やっぱり渡邉監督の作品だった」と実感。群衆の中にいる1人の女として役を意識しており「特別なことはせず、目の前に対峙する男や人間に対して、そこに存在する女でいよう」と心がけた。共演の星能さんは金沢在住であり、大阪在住のカイマミさんは、オンラインツールを用いて読み合わせを数回実施していく。「会っていないので難しいことがありましたが、なるべく目を瞑った状況で声を聴いて、自分の声を発することを中心にやりました」と振り返り「男性から表現されることに対して、自分が存在する感覚が最初からあった。波長を合わせた上で、現場でどうなるか、余白を残した状況で撮影に挑んだ」と明かす。
撮影現場では、温度や湿度や騒音などによって変化するため「余白の部分は、全ての状況下によって生じるナマモノだったかな」と言及する。大阪在住のため、淀川とロケになった多摩川との違いは感じながらも「終始一連した女性の感情ではなく、情緒不安な面を感じていた」と告白。感情を込み上げて涙するのは得意であり、電話ボックスでのシーンについて「様々な角度から撮っています。その間に涙をこぼし続けるので、馴染みの場所ではないことによる不安を表現できたかな」と自信がある。なお、食事シーンについて、本当はおいしいごはんが並んでおり「美味しいものを食べながら、不味いと表現するのは難しい」と苦笑い。
なお、カイマミさんが演じた女性が実在したら、と考えてみると「登場人物が皆どこかに傷を持っていた。私の中で辛いことや嫌な経験を握りしめていたら未来を掴めない」と受けとめながら「辛い痛みや過去から手を離した時に、やっと小さな希望を掴むことが出来るよ」とメッセージ。星能さん演じる男性に対しては「しっかりしいや。やりたいことに対して自信を持って良いんじゃない?前向きにしっかりと生きていこうぜ」と背中を押す。
カイマミさんは、13歳の頃、一人芝居の舞台を続けている新屋英子さんの舞台に衝撃を受けており「その後に、新屋英子さんの2人芝居のオーディションがあった。高校生役だったが、役が出来なくても、どうしてもご本人に会いたくて、オーディションに伺い、合格させて頂いた」と振り返る。「私がもっと様々な経験をして、おばあちゃんになった時、新屋英子さんと共演してみたい」と、小さい頃からの夢を語ってもらった。
映画『土手と夫婦と幽霊』は、3月12日(土)より大阪・九条のシネ・ヌーヴォ、3月18日(金)より京都・九条の京都みなみ会館、4月23日(土)より神戸・元町の元町映画館で公開。なお、シネ・ヌーヴォでは、3月12日(土)に星能豊 さんとカイマミさんと押谷沙樹さん渡邉高章監督、3月13日(日)にカイマミさんと押谷沙樹さん渡邉高章監督を迎え舞台挨拶が開催される。
- キネ坊主
- 映画ライター
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