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思い出に出来る作品を撮りたい、そして、映画から声が聞こえてくるような作品を撮りたい…『フィア・オブ・ミッシング・アウト』河内彰監督に聞く!

2022年1月11日

SNSの普及により生まれた「とり残される不安・恐怖」を表すスラングを題に、親友を亡くした女性の姿を映しだす『フィア・オブ・ミッシング・アウト』と同時上映の『IMAGINATION DRAGON』が関西の劇場でも1月14日(金)から公開。今回、河内彰監督にインタビューを行った。

 

映画『フィア・オブ・ミッシング・アウト』は、『幸福の目』『光関係』などの作品により国内映画祭で注目を集める新鋭の河内彰監督が手がけた短編作品。親友を亡くした女性を主人公に、取り残されることの怖さと悲しみ、そしてその先に見えてくるものを描く。親友のイ・ソンを亡くしたユジンは、ボイスレコーダーに残されたイ・ソンの音声を見つける。そしてイ・ソンが亡くなって半年が過ぎたある夜、ユジンはイ・ソンの死の理由を追って友人とともに旅に出る。亡き親友に思いをはせながら車を走らせるユジン。友人や家族、さまざまな人たちの思い出と触れながら、次第に夜が明けていく。タイトルの「フィア・オブ・ミッシングアウト(Fear of Missing Out)」は、ネットやSNSを常時チェックしていないと情報を見逃してしまうのではないかという恐れや焦りを抱く心理を指す用語から作られている。

 

これまで映画を作り続けてきた中で「思い出に出来る作品を撮りたい」と考えてきた河内監督。また、本作の主演であるYujin Leeと出会えたことが大きく「偶然にも韓国人の方と出会いどんな作品が出来るだろう。映画から声が聞こえてくるような作品を撮りたい」とワクワクしていた。俳優ではない方だが、韓国人だと知らず偶然に出会い、魅力を感じ「共に作品を作れないか」と考えながら、出演者から受けた印象を基にしてストーリーを着想。物語にある時間軸を二つ置き「ユジンと友達のこうちゃんが夜から朝にかけて都心から田舎のお寺に向かっていく。もう一つは、ボイスメッセージが残されたイソンの声による過去の時間軸」と定義し、バランスを保ちながら二つの時間軸を行き来するようにした。印象的な小道具として、ICレコーダーが用いられており「当初、レコーダーをはっきり映すつもりはなかった。直接的に誰かを映さないで、そこに人がいると分かる世界を映し出す方法を考えていく中で、ICレコーダーのインジケーターの動きが、人間の生命線に見えるようにリンクさせたくて画面を繋いでいる」と工夫している。

 

映像作品としても観れる本作。河内監督は「一風変わった映画にしようという意識は一切ない」と話すが「自分の作りたいものを表現していく中で、次第に抽象的な映像に落ち着いていきます」と冷静に自作を俯瞰する。映画というメディアについて「なぜ映画になるのか、どうして映画として成立するのか」ということに興味があり「映画を分解し、構成している要素に対してそれぞれアプローチしている」と説く。今作では「描く物語の殆どは風景ですが、風景だけで映画が成立するか。登場人物に共感することでしか映画として成立しないのか」とチャレンジしており「映画を通して、誰かの思い出を見聞きしている時に生じる感情や隔たりに対してアプローチするために制作した映画です」と述べる。

 

事前に絵コンテを作り、ほぼ自身でカメラを構えており「人物を撮るより苦労しますが、人の声や気配を感じられる風景を撮りたい」という気持ちで沢山の風景を撮り、映画になるように繋いでいった。「映画の中で時間が流れているか」を一番に意識しており「観終わった時、映画の中で流れている時間が自分の中で続いているような映画体験を目指しています。1シーンだけでなく全体を見通して時間が感じられるか、人間の時間が存在するのか。違和感があれば、全て見返しています」と余念がない映画作りをしている。「

 

同時上映の映画『IMAGINATION DRAGON』は、東京都によるコロナ禍における映像企画として採択され、制作された。コロナ禍で休館を余儀なくされたアート施設を舞台に、「創造」や「想像」に対する願いを子どもたちの純粋な行動に託し、その様子をカメラに収めた。

 

視覚的な作品をコロナ禍において制作した河内監督。アートセンター3331 Arts Chiyodaにも人がいなくなり、アートの発信基地であるにも関わらず何も出来なくなり「もぬけの殻で閑散としてディストピアみたいな空間だった。そこからのメッセージを映画で表現できないか」と考えた時に「純粋な想像力が必要。画的に表現するには子供だ」と気づく。「こども一人一人に大きな空間で気になる場所で好きなことをやってもらい撮影し、そこから連想できる、子供の想像を後で話してもらおう」と映像とナレーションを組み合わせた作品を着想。一人の子供に対して、3,4箇所でアクションしてもらっており「子供を撮影していくにあたり、大まかな空間を用意し、シーン毎に子供が代わっていく構成は予め決めていました。最終的に、オチとなる部分を考えていきました」と明かす。現場では子供が騒いでいることが多く「本当は、子供が人の目を気にせず動いている静かな光景を撮りたかった。だが想定通りには出来ず声がけしている。アフレコが大変でした。子供達の純粋さによって映画になった」と一苦労しながら完成させた。

 

現在、長編映画を撮っており「映画は思い出だと考えると、長くなればなるほど観るのが大変になってしまいます。短い映像作品を集めていった長編映画になるように出来たら」と考えており「映画を思い出だと思って、展覧会のような長編映画になれば」と望んでいる。

 

映画『フィア・オブ・ミッシング・アウト』と『IMAGINATION DRAGON』は、関西では、1月14日(金)より京都・九条の京都みなみ会館、1月15日(土)より大阪・九条のシネ・ヌーヴォで公開。nなお、1月15日(土)のシネ・ヌーヴォと1月16日(日)の京都みなみ会館では河内彰監督を迎え舞台挨拶が開催される。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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