”世界で最も幸せな町”を作る!?色鮮やかでミニマムなSFファンタジー『チョンバル・ソシアル・クラブ』が第16回大阪アジアン映画祭のコンペティション部門で日本初上映
(c)Tiger Tiger Pictures, Bert Pictures, 13 Little Pictures
母親と暮らす心優しい青年が”世界で最も幸せな町”を作るためプロジェクトに参加する顛末を描く近未来SFコメディ『チョンバル・ソシアル・クラブ』が第16回大阪アジアン映画祭のコンペティション部門で日本初上映された。
映画『チョンバル・ソシアル・クラブ』は、常に笑顔を絶やさない寡黙な男アビーは、30歳になったのを機に母と住むアパートを離れ、世界で最も幸せなご近所コミュニティを作ると謳うチョンバル・ソシアル・クラブの住み込み従業員になる。クラブでは独自のアルゴリズムで従業員の幸福度が数値化され、その向上を推奨されていた。アビーは人工知能のBravo60から様々な提案を受けるが、猫好きのシニア客ニーに振り回され、値が落ちるばかり。幸福度が最下位になると失職することを知り落ち込むアビーだったが、ニーと打ち解け、幸福度トップの女性従業員ギョークと交流するうちに、幸福度が上がり始める。
本作は、リャオ・チエカイ監督のラブロマンス『あの頃のように』でプロデューサーを務めたタン・ビーティアム監督による長編デビュー作。色鮮やかでミニマムなSFファンタジーという独特の世界観を生み出している。
映画『チョンバル・ソシアル・クラブ』は、3月12日(木)18:30より梅田ブルク7のシアター7でも上映。
世界報告度ランキングは、対象国で実施した世論調査をもとに、自分の幸福度が0から10の10段階で自己評価した主観の平均を基に作られた。「一人当たりGDP」「健康的な平均寿命」「困ったときに助けてくれる友達・親族はいるかとの二元回答」「人生で何をするか選択の自由があるかとの二元回答」「GDPにおける寄付実施者の度合い」「政府機関に腐敗は萬栄しているかの二元回答」「昨日楽しかったかどうかの自己認知の度合い」「昨日楽しくなかったかの自己認知の度合い」の6つの説明変数で回帰分析し、寄与度も分析している。2020年においては、日本は62位だった。本作の舞台であるシンガポールは31位である。
本作においては「健康的な平均寿命」「困ったときに助けてくれる友達・親族はいるかとの二元回答」「人生で何をするか選択の自由があるかとの二元回答」「昨日楽しかったかどうかの自己認知の度合い」「昨日楽しくなかったかの自己認知の度合い」の変数を高めるために、マンションのコミュニティ部門のスタッフとなった主人公の姿を描いていく。数値をいち早く分析し、スタッフに提案してくのは人工知能。提案に従っていけば幸福度は上がるかもしれないが、本当に本人にとって喜ばしいことなのか。第三者の視点で観客は見せられるが、どこかシュールな笑いが漂ってしまう。スタッフの一人として集団心理に巻き込まれてしまい、不条理にも感じてしまった。元々は、企業の人事部門スタッフとして社員をポイント評価していく立場だった主人公は、評価される立場になって改めて人間の幸福について考えていく。社会の一員としての彼が最終的に選んだ人生がやはり良かったんだなぁ、と改めて実感させられた。
- キネ坊主
- 映画ライター
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