否定もしないし肯定もしないで、ただ見つめて寄り添う…『星の教室』桜田ひよりさんと小林虎之介さんと中川龍太郎監督を迎え公開記念舞台挨拶開催!
夜間中学を舞台に、義務教育を十分に受けられずに大人になった女性が、境遇の異なる仲間と出会い、共に希望への一歩を踏み出す姿を描く『星の教室』が全国の劇場で公開中。11月7日(土)には、大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマに桜田ひよりさんと小林虎之介さんと中川龍太郎監督を迎え公開記念舞台挨拶が開催された。
映画『星の教室』は、映画プロデューサー・監督として数々の名作映画を世に送り出してきた角川春樹さんが総監督を務めた青春群像劇。『みをつくし料理帖』シリーズで知られる小説家の髙田郁さんが漫画原作者時代に取材した夜間学級でのエピソードをもとに執筆した小説「星の教室」を原作に、『四月の永い夢』の中川龍太郎さんが監督を務めた。2001年1月、大阪の下町にあるレンタルビデオ店で働く潤間さやかは、店長から履歴書の提出を求められたことをきっかけに、近所の中学校の夜間学級に足を踏み入れる。中学時代にいじめが原因で不登校となったさやかは、卒業を拒否して“中学中退”を選択し、そのまま成人を迎えていた。そんな彼女が夜間中学で目にしたのは、校庭で夜空を見上げながら幸せそうに歌う、年齢も国籍もバラバラな生徒たちの姿だった。学校に行けなかったのは自分だけではないことに気づいたさやかは、夜間中学に入学することを決意し、先生やクラスメイトに支えられながら新しい道を歩きはじめる。桜田ひよりさんがさやか役で主演を務め、夜間中学の生徒役で浅野温子さん、中尾ミエさん、山本學さん、教師役で真木よう子さん、甲本雅裕さん、三戸なつめさん、レンタルビデオ店の店長役で原田泰造さん、夜間中学を取材する漫画家役で小泉孝太郎さん、さやかの両親役で仙道敦子さんと萩原聖人さんが共演している。
今回、上映後に桜田ひよりさんと小林虎之介さんと中川龍太郎監督が登壇。本作は大阪を舞台にした作品であることから、劇中の関西弁が自然に聞こえるかどうか、登壇者たちも気になっていた様子。そんな緊張も次第にほぐれ、作品の魅力が伝わる舞台挨拶が繰り広げられた。

昨日、劇場公開を迎えた今作だが、桜田さんは「この作品、実はそんなに日が空いていなくて…今年撮影していたので、僅かな期間しか空いていないので、新鮮な気持ちでいますねと、撮影から公開までの期間が短かったことを明かしていく。大阪には、舞台挨拶やスタイルブックの出版イベントで来ていたことから馴染みがあり「(ファンの)エネルギーが違います。元気をもらえます。普段、関東圏内で撮影することもあるので、私自身もすごくワクワクした気持ちで大阪でイベントを行うことも多いです。なかなか関東に出てこれないよ、という方も、その場でお会いできるので、新鮮な気持ちで皆さんとお話しすることができるな」と大阪でのイベントの魅力を語った。小林さんは岡山県出身ながら阪神タイガースのファン。今年のドラフト会議についても話題にするなど、野球への関心の高さをうかがわせる。中川監督は、本作の企画段階から何度も来阪しており「イメージとなる街の雰囲気を掴み、やれることはやりました。 その中で、大阪の人が大好きで、自分は、人生の中で、親友になる人はずっと関西人だったんですよね。 だから関西にもよく来ますし、今日も大阪に泊まるんですけど、大好きな街です。だからこそ大阪で撮りたい気持ちもあったし、大阪の持っている人のパワーは自分も分かるので、それを浅野さんとか皆に植え付けていくことが今回は大事だな、と思ってやっていました」と振り返る。
若手俳優とベテラン俳優が共演している本作について、中川監督は「桜田さんとか虎之介はめちゃくちゃ上手い。すごい落ち着いている。自分が導く、というより、助けていただいているばかりだったので、ベテランの俳優さんの方がむしろ手がかかって大変」と漏らし「 関西人じゃないので関西弁に悩んでる、とか言いながら、即興で関西弁をやりだす。メンタル強いな長生きしている人は…みたいな。おじいちゃんやおばあちゃんたちの方が大変でした。 最高でしたけども」と本音を打ち明けた。桜田さんは「なかなかない環境でのお芝居でした。今回は、同じ教室内のクラスメイト、という設定だったので、年齢も国籍もバラバラの皆さんが学ぶ、1つの目標に向かって同じ空気感で作り上げていくのは、映画作品の中でも珍しいことだった。 ただ、優しくて暖かくてユーモアに溢れた皆さんだったので、現場は終始和気あいあいとしていました」と思い返す。小林さんは、ベテラン俳優の方々を見ながら「皆さんはお芝居が好きなんだろうな。楽しんで現場にいる姿がすごく印象的でした」と思い出しながらも、先にクランクアップした山本學さんからの声掛けが、肩をトントンとして「うん、頑張れよ」とだけ言われたことが心残りだったようだ。

夜間中学が舞台である本作の台本を読み、桜田さんは、潤間さやかという人物について「ずっと学校に通いたい思いが残りながらも、過去のトラウマもあって前に進めない女の子が、人との出会いや温もりだったり、人との会話だったり、目からも耳からも、そして、肌感からも、人の温かさに触れることによって、徐々に自分のやりたいことや自分の家族の修復に向けて前に進んでいく姿は、私自身も観てくださる皆さんも応援してあげたくなるような女の子像を作っていけたらいいな、と思いながら演じていました」と話す。小林さんは、松峰健児について「愛くるしいキャラだなと思っていて… でも、その中にも陰りが欲しいな、とか色々と思いつつ…健児もさやかと同じ立場にいるけれど、彼女を支えるポジションでもある。一緒に頑張ろう、と隣に寄り添う部分では、すごいいい子だな」と受けとめていた。そんな2人について、中川監督は「桜田さんはすごい、と思いました。鋭いし的確で、ほとんどワンテイクでOK。泣いたり怒ったり、あるいはその中間にある感情を表現するのは難しいじゃないですか。そうした感情表現が常に的確だし、自分の想像を超える素晴らしさもあって、ありがたかったな。ほぼほぼ全部ワンテイクですごいな」と絶賛し「虎之介くんとは初めまして、だったんですけど、彼のことを素晴らしいと思ったのは、色気があるからなんですよね。寂しさとかを抱えている感じを出せる。あの青年は爽やかな感じに見えるんですけど、背景には色々と痛みがある。その痛みを自然と出せるのが虎之介くんの素晴らしいところなんだろうな」と讃え「これからもご一緒させていただきたい2人と出会えたな」と噛み締めていた。なお、角川春樹さんが総監督を務めており「春樹さんはご病気で倒れられて、あまり現場にはいらっしゃらなかった。けれども、魂の部分は、春樹さんがご自身のお子さんへの思いを込めてこの作品を撮りたい、ということだったので、そこの部分は自分も大事に…こういうものを世の中に届けなきゃいけない、と心のこもったものは、その1人の思いからこうやって作品を作ることは必ずしも多くない。商業的な作品なので、しっかりと回収できるように、ということで皆が頑張るのは当然なんですけど、春樹さんのパーソナルなものが詰まった作品ですよね。 だからこそ、春樹さんの個人的な思いをしっかり伝えられる作品にできたらな、と常々思いながらコミュニケーションをとっていました」と伝えていく。
さやかを演じていく中で嬉しかったシーンとして、桜田さんは「健児さんと雑巾を絞って会話している何気ない感じが、同級生というのもあって、さやか自身も心強い存在でもありました。異性というのもあって、緊張感がうっすらとしつつも、2人の会話が甘酸っぱい感じがした。さやかちゃんが本来経験したかったであろう感覚が漂っていて素敵なシーンだな」と挙げた。このシーンについては、小林さんも認識しており「恥ずかしい緊張感があって、絶対に寄らないぞ、と。ビデオ屋の前でも、恋愛っぽいところは寄らないようにしよう」と意識していたようだ。中川監督も「恋愛の方に話をミスリードしちゃいけない」と意識しており「あれぐらいの距離感で見ているからこそ、2人のときめきも見えるような気もした。あのシーンは虎之介も桜田さんも素敵で、逆に、引いているからこそ、自分としてはときめける」と説明する。小林さんは、山本學さん演じる遠見巌に怒られるシーンが印象に残っており「毎回、新鮮にくらって、戦争について考えさせられた」と記憶に残っていた。中川監督も、怒鳴るシーンについて「毎回、違う緊張感があった。激しいアクションに対してのリアクションがテストと本番で違った感じがした」と述べ「さやかは、暴力的なものは嫌いだけど、その気持ちは分かる、という芝居を細かくやられている」と分析。これを受け、桜田さんは「學さんが毎回新しいボールを私たちに投げかけてくださるので、新鮮な気持ちで、純粋に怖い。人に対してまだ恐怖心もある中で、自分が今まで一緒に過ごしてきた日々や背景が人物にはある、という前提で人と接しているさやかではあるので、体は拒否するけれど、自分の心の中としては、その場で向き合っていたい、その空気を感じていたい、という心と体の葛藤は感じていました」と思い返していく。改めて、そのシーンを思い出しながら、小林さんは「僕はさやかの後ろにいたので、その場の空気を感じていました。健児は周囲全体を見渡せる位置にいて、前から空気が引き締まっていくのを感じるんです。お芝居じゃなくて、そこに起きていることなんですよね。學さん、すごいな。でも、全員で作るものでもあるから、全員が集中していたな、とか思いますね。良かったな」と印象に残っていた。

中川監督は、本作について「俳優さんとは、”用意、スタート!”の前を作る仕事だと思っている。” 用意、はい”と言われてからは、演出や脚本に色々なものが書かれています。だけど、その前の、さやかならさやかの20年という時間、健児も20年ぐらいの時間があり、學さんも80年ぐらいの時間があり、それをしっかり背負って芝居できるのが、いい役者だと思う。皆が過去の時間を背負っている。その色が全部違う。その違いを肯定も否定もしない。なんでも肯定すればいいわけでもないと思っている。 肯定もしないし否定もしないで、ただ見つめて寄り添うことの大切さは、この映画に大事な部分としてあると思うんです。 いい人である必要が、今の社会で求められていることはあるのだろうか。いい人でなくても、そのままでいいことを、この映画では伝えたいな、と僕は思って作っていましたね」と話す。完成した作品について、桜田さんは「人には様々な過去もありますし、どういう風に人と向き合ってきたか、自分が見ていたわけじゃない。 ただ、その話を聞いていたり、空気を感じたりしながら、否定も肯定もしない。 ただ、話してくれたことに対して誠心誠意自分が聞いて、感じて、どのように受け止めるのか、は自分次第」と受けとめ「全部認めてあげて共感して、というわけではなく、理解してあげること、人の温かさにふれることが、この作品を見てくださる皆さんに届いたらいいな」と願っている。小林さんは「シンプルに考えること多くて…」と一言置きながら「この作品は、人との繋がりだな、と思うんですよね」と伝えた。
最後に、桜田さんは「この作品は、ここにいる3人だけではなく、一緒に作品を作り上げてくださったキャストの方やスタッフの方々の思いも載っているな、と思っていて… 撮影しながらも、スタッフの皆さんの表情が私たちの学校の空気感で変わっていったり、撮影しながら涙を流されている方もいて、人の感情を揺さぶったり、自分の過去だったり、大切な人を思い出せるような素敵な作品だな、と思っていました。今、私たちが20代で観ることと、作品が何十年経って學さんや浅野さんの年齢になって観ることで視点が変わる作品だな、と思いました。ずっと長く愛され続ける作品になるんじゃないかな、と確信しました。観てくださる皆さんが大切な人と観たいな、と思ってくれて、色んな人に観てほしいな、という思いで広がっていく映画だな、と思っているので、ずっと長く愛され続ける作品になることを願っております」と思いを伝え、舞台挨拶を締め括った。
映画『星の教室』は、全国の劇場で公開中。関西では、大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマや心斎橋のイオンシネマシアタス心斎橋や難波のTOHOシネマズなんばやなんばパークスシネマ、京都・二条のTOHOシネマズ二条や三条のMOVIX京都や九条のT・ジョイ京都、神戸・三宮のkino cinema 神戸国際や岩屋の109シネマズHAT神戸等で公開中。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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