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各々の技法を同一人物がやることでフレッシュな表現になれば、おもしろいんじゃないかな…『花緑青が明ける日に』四宮義俊監督を迎えQ&Aイベント開催!

2026年3月31日

立ち退きを迫られている花火工場に立てこもる青年と幼なじみを描く『花緑青が明ける日に』が全国の劇場で公開中。3月31日(火)には、大阪・梅田のT・ジョイ梅田に四宮義俊監督を迎え、Q&Aイベントが開催された。

 

映画『花緑青が明ける日に』は、日本画家としての活動を軸にジャンルを超えてさまざまな創作活動を行ってきた四宮義俊さんが長編初監督・脚本を手がけ、フランスの気鋭スタジオであるMiyu Productionsとの日仏共同製作で制作したアニメーション映画。森の中にある創業330年の老舗花火工場である帯刀煙火店は、町の再開発で立ち退きを迫られていた。そこで育った帯刀敬太郎は工場に4年間立てこもり、失踪した父の榮太郎に代わって幻の花火と呼ばれる”シュハリ”を完成させようと奮闘している。一方、敬太郎の幼なじみである式森カオルは、過去の事件をきっかけに地元を離れ東京で暮らしていた。市役所に勤める敬太郎の兄・千太郎から連絡を受けたカオルは、帯刀煙火店の立ち退きが翌日に迫った夏の終わりの日に帯刀家を訪れ、4年ぶりに敬太郎と再会を果たす。彼らは戻らない時間と失われた絆を取り戻すようにぶつかりあいながら、幻の花火の秘密に迫るべく驚きの計画を立てる。その鍵を握るのは、美しい青色の顔料”花緑青”だった。俳優の萩原利久さんと古川琴音さんが敬太郎役とカオル役でアニメ声優にそれぞれ初挑戦し、声優の入野自由さんが敬太郎の兄である千太郎役、俳優の岡部たかしが父の榮太郎役で声の出演。2026年の第78回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門に出品された。

 

今回、上映後に四宮義俊監督が登壇。様々な質問にたっぷりと答える監督の真摯さが伝わってくるイベントとなった。

 

建物好きの四宮監督は、久しぶりに大阪に来て「かで物をり、近代建築が楽しいところだな」と印象に残っている。また、本作で特殊映像を担当したSUKIMAKI ANIMATIONの鋤柄真希子さんに会うために京都まで来ていたことから感慨深げだ。公開から1ヶ月近くが経ち、熱烈なメールを受け取ったり、地元の友達から久々のメールをもらったりしており、様々な感想を読むことを楽しんでいる。なお、ベルリン国際映画祭でのレッドカーペットの映像からの反響は大きく、驚かれたようだ。

 

Q&Aとして、まずは、劇中に登場する狸について聞かれ「どういうところで狸が出ていたのか、解説すると、冒頭で、お父さんが表の玄関で敬太郎と喧嘩している時。商売をしているご家庭の敷地内にお稲荷さん置いたりするんですけど、一般的に狐なんです。それを劇中では敢えて狸にしているんです。信楽焼の狸の置物があり、最後にはどうなっているか、変化しているんですけど、土地そのものを象徴するようなものとして狸を設定し、お父さんの背景に絡むようなところに狸を入れており、」と解説。また、四宮監督が生まれ育った場所を舞台にしており、当時に初めて野生の狸を見た時の衝撃が大きく、劇中で狸を登場させたかったようだ。なお、映画祭で『平成狸合戦ぽんぽこ』との関連性を聞かれた機会が多かったようだが「原画マンに狸を書いてもらわなきゃいけないんですけど、作画の打ち合わせ資料で、ベトナムの方に”『ぽんぽこ』を観たことがありますか?”と。『ぽんぽこ』じゃないと説明できないな。ベトナムには狸がいないので、『ぽんぽこ』っぽくなることは作画上は避けられない」と明かし「テーマ的にも共通するところがあったと思いますので、そういった意味でも狸は様々な意味を含んだな」と感じていた。日本画家としての活動を軸にしていることから、モチーフの1つ1つに意味を込めたくなっており「帯刀家の中は様々な想像ができるように散りばめられている。面は出来るだけ地層が感じられるような地面にしている。時間を重ねて出来ている表現を感じてもらえたら、おもしろいな」と話し、趣向を凝らしていることが伝わってくる。

 

ひろしまアニメーションシーズンのワークショップに参加した方から、エンディングの意図について聞かれ、明確な回答を避けながら「映画を作る、もしくは、架空の人物を作り上げていくことは、どういうことか。終わってみて感じたのは、親目線になってしまうああいう状況に身を置いていることと、最後にああいう姿でいることの流れの中で、作り出した側としては、どうしても愛着があるんですよね。親目線で言ったのは、許してあげてほしい、と思える立場に対して、監督としては甘い判断なのかもしれない。作り出してしまったキャラクターに対して突き放し過ぎることもできないけど、社会的な制裁を受けていなきゃおかしい。そういった中で、社会的に描かなきゃいけない部分と、個人的に作り出した側として描かなきゃいけない部分のせめぎ合いがあの画だった。僕の気持ちが画になっている」と述べ「その中から、観ている側の皆さんが、どういうものだったか、と想像していただけるとすごくありがたいな」と伝えた。

 

 

パンフレットを拝読したお客さんから、タイトルの決め方について聞かれ、最初の仮タイトルは『新しい夜明け』であったことを明かし「”花緑青”という色を提案されたのはアスミック・エースさんの方からでした。『新しい夜明け』のまま現場は進んでいた。その中で、カンヌでプレゼンする機会があり、タイトルがまだ決まっておらず、英訳して『A NEW DAWN』になったんです」と振り返り「その後、結構な数のタイトル候補が出されて、花火屋さんの取材の中で出された”花緑青”という言葉と、が大学時代偶々見聞きしていた”花緑青”という絵の具が同一のものだった。僕の中では、物語が構築する中で、偶然なんだけど奇跡的な出会いがあって、そこがタイトルの案として出てきた時に、これなら受け入れられる」と感じられたようだ。”花緑青”と”新しい夜明け”の2つを残せたことで「インディーズ的なノリみたいなものやコアな部分を大事にするためにも、この2つが最終的にずっと残ったんだな」と受けとめていると共に「。”花緑青”と読めない人もいるぐらいの単語。映画のタイトルにすること自体がチャレンジング。映画らしいなって思える時もある。ある種の運命みたいなものは感じました」と話す。

 

今回で8回目の鑑賞となるお客さんから、数学用語や研究機構といった専門的な単語がちりばめられていることについて聞かれ「花火は生き物に例えられる」と挙げ「学生時代に、生命力の表象として表現する時、細かいニュアンスで生命力を感じ取っているんだ、と思うんです。生命が効率よくエネルギーを享受するための配列みたいなものが花火にも適用できるんじゃないか、と仮説を立てた時があった。それがまさに映画として、フィボナッチ数列に取り巻かれたモチーフの中で花開くところ。花火にフィボナッチ数列が仕組まれていて、それが宇宙を表象する形で花開くみたいなイメージも綺麗そうだな、と思った」と説く。

 

友人に薦められて鑑賞し感動したお客さんから、特別な手法を取り入れられていることについて聞かれ「絵柄が日本のアニメーションなので、可愛らしさがあり、誰でも入れるような入り口があり、その変な入口の先の最後に、実は現実の話をしていたんだ、と思う瞬間が来る映画。入口はすごくシンプルなんだけど、入っていくとどんどんと深く現実の問題が扱われていたり、最後は現実に持ち帰る要素がある映画が、僕の中では凄く良い映画なんじゃないかな」と持論を話す。また、技法に関して「今回、作画監督と美術監督と色彩設計を僕がやっているんですけど、アニメは所帯が大きくなればなるほど分業化が進むし、その中で1人でやるのは物理的に無理だ、という瞬間が必ず来る。寧ろそれがあるからこそ、日本のアニメは量産体制が整っているし、分業化があるが故にハイクオリティを出しているんだと思うんです。だけど、逆に云えば、コントロールを1人ができないスケールになってしまう」と鑑みており「CMやMVや平面絵画を描いてきた人間なので、自分でコントロールしたい。逆に云えば、セルと背景の美術は、普段は、別々の人が担当しているんですけど、それが勿体ないよな、とずっと思っているところがあった。同じ人がやれば親和性や没入感は、同じ価値観の下に纏まるはず。そこを成し遂げたい。長編映画としてはすごく短くて76分なんですけど、この短さの中であればギリギリ成立するんじゃないか。今回、同一人物がやることによって、フレッシュな表現になれば、おもしろいんじゃないかな、と思って取り組みました」と語った。

 

最後に、今回のQ&Aイベントについて「実は、こういう瞬間しか生の感想を聞く機会がなかった。 友達とは意外と遠慮して言えないこともあるので、すごく貴重な機会をいただけて、楽しくQ&Aイベントに参加させていただいています」と振り返りながら「まだ色んな劇場が増えたりしつつ、しばらくずっとやっていると思いますので、お友達やご家族に薦めていただけるようにしていただけると凄くありがたいです。 これからもよろしくお願いいたします」と伝え、イベントを締め括った。

 

映画『花緑青が明ける日に』は、全国の劇場で公開中。関西では、大阪・梅田のT・ジョイ梅田、心斎橋のkino cinema 心斎橋、京都・三条のMOVIX京都や九条のT・ジョイ京都、神戸・三宮のOSシネマズミント神戸等で公開中。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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