香港のレズビアンカップルが抱える問題を描いた『これからの私たち All Shall Be Well』がいよいよ劇場公開!
©2023 Mise_en_Scene_filmproduction
香港で長年連れ添った60代のレズビアンカップルが、パートナーの急逝により、法制度では彼女たちを家族と認めず、様々な日常の問題が壁となる様子を通じ、香港の同性愛の現状を映しだす『これからの私たち All Shall Be Well』が12月13日(土)より全国の劇場で公開される。
映画『これからの私たち All Shall Be Well』は、長年連れ添ったレズビアンカップルが、パートナーの急死によってさまざまな問題に直面する姿を描いたドラマ。60代のレズビアンカップル、パットとアンジーは、公私ともに順調で穏やかな日々を送っていた。しかしある時、パットが急死してしまう。アンジーはパットの親族とも親しくしていたが、葬儀の形式をめぐって意見が対立。さらに香港の法律に従い、親族であるパットの兄が彼女の遺産を相続することになる。それは、パットとの思い出が詰まったマンションを終の住処と考えていたアンジーにとって、到底受け入れられない現実だった。一方、暮らし向きが厳しいパットの兄夫婦とその子どもたちも、それぞれの事情を抱え、葛藤していた。
本作では、『ソク・ソク』でゲイカップルの老後問題を描いたレイ・ヨン監督が、同性愛に対する偏見が根強く残る香港の現状を見つめるとともに、深刻な住宅不足や就職難、経済格差といった社会問題も浮かび上がらせる。2024年の第74回ベルリン国際映画祭で、優れたLGBT映画に与えられるテディ賞を受賞。第43回香港電影金像奨で作品賞ほか5部門にノミネートされるなど高い評価を得た。『ソク・ソク』で香港金像奨助演女優賞を受賞したパトラ・アウがアンジー役を演じ、本作では香港金像奨主演女優賞にノミネートされた。パット役は、約30年ぶりの銀幕出演となったマギー・リーが務めた。

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映画『これからの私たち All Shall Be Well』は、12月13日(土)より全国の劇場で公開。関西では、12月20日(土)に大阪・九条のシネ・ヌーヴォで特別先行上映が行われ、主演パトラ・アウとレイ・ヨン監督を迎え上映後トークを実施。なお、シネ・ヌーヴォでは近日ロードショー公開予定。
長年連れ添ったレズビアンカップルにおいて、1人が亡くなってしまった時、彼女の遺書がなければ、残された1人は、家族として認められず、あくまで長く親交があった親友としか見られない。パートナーに関する法律が整備されていない国においてはこれほどまでに苦しむことになるのか、改めて認識させられ、本作を観ていると憤りを感じずにはいられない。親しくさせてもらっていた家族との間では、強弱はあれど理解してもらっていたはずだ。だが、あまりにも突然に亡くなってしまったら、それぞれの心の中に秘めていた想いや思惑が湧き出て来るのだろうか。そこで、法律に則った立会者が介入したり、風水師の判断を優先されてしまったりすれば、パートナーはどうすることも出来ないのだ。さらに、それぞれが抱える事情が徐々に露になってしまい、それらを否定することはできない。だが、長年連れ添ったパートナーと過ごした時間はかけがえのないものであり、法律や風水によって覆されたくないのが正直な本音である。そこに一筋の光が射してくれないか、と願うのはわがままであろうか。いや、そんなはずはない。最後までじっくりと観届けていたい一作である。今春に開催された大阪アジアン映画祭で日本初上映され、いよいよロードショー公開される本作、是非とも劇場でご覧になってみてはいかがでしょうか。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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