勤め先が倒産し、タクシー運転手に転身した女性のロードムービー『サムシング・ハプンズ・トゥ・ミー』がいよいよ劇場公開!
©UNA PRODUCCION DE QUE NADIE DUERMA AIE – AVANPOST
会社の倒産をきっかけに、タクシー運転手に転身した女性が、さまざまな客と出会い変化していく姿を描く『サムシング・ハプンズ・トゥ・ミー』が10月31日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『サムシング・ハプンズ・トゥ・ミー』は、スペインのアントニオ・メンデス・エスパルサ監督が手がけた異色のサスペンス。マドリードに暮らすルシアは、勤めていた会社の倒産を機にタクシー運転手へと転身する。そこで彼女を待っていたのは、個性豊かな乗客たちとの出会いだった。ルシアは、かつてオペラ「トゥーランドット」のアリア「誰も寝てはならぬ」に導かれるようにして、謎めいた男性と出会い、いまもその男性に思いを寄せていた。彼は自分を「トゥーランドット」に登場する王子になぞらえて”カラフ”と名乗り、こつ然と姿を消してしまった。ルシアは自らを姫に重ね合わせ、いつか彼が自分のタクシーに乗り込んでくることを夢見るが…
本作では、監督のアントニオ・メンデス・エスパルサは、2012年に『ヒア・アンド・ゼア』でカンヌ国際映画祭批評家週間グランプリ、2017年に『ライフ・アンド・ナッシング・モア』でインディペンデント・スピリット賞ジョン・カサベテス賞を受賞するなど、注目を集める俊英。主人公ルシアを演じたマレーナ・アルテリオは、本作でスペイン版アカデミー賞ともいわれるゴヤ賞で主演女優賞を受賞した。

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映画『サムシング・ハプンズ・トゥ・ミー』は、10月31日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のテアトル梅田、京都・烏丸御池のアップリンク京都、神戸・岩屋の109シネマズHAT神戸で公開。
日本版タイトルである”something happens to me”は、”何か(良くないこと)が私に起こる”という意味になる。本作の主人公、ルシアは、”良くないこと”が起こる度に人生を変化させていく。最初は、勤めていた会社でシステムの不具合に遭遇したこと。そして、いきなり会社が倒産してしまう。次の人生をどうしようか、と考えていく中で、偶然にもタクシー運転手に転身。また、同じマンションの別の部屋から聞こえてくる音楽の音色に誘われて、異性と出会うことに。これもある種の転機といえるだろうか。しかし、突如として、その男性は消えてしまう。そんなプライベートはさておき、タクシー運転手として良いお客さんと出会うことで、タクシーの外での人間関係も変化させていく。つまり、”良いこと”か”良くないこと”は紙一重ではないか、と思えてしまう。だが、最終的に、強烈なサムシングに遭遇していくのだから、如何ともし難い気持ちにならざるを得ない。その後、サムシングを起こしていく側へと”転身”していくのだから、人生はおもしろい。チャップリンの言葉「人生は近くで見ると悲劇だが遠くから見れば喜劇である」を言い表しているだろうか。なお、本作の英題は、「Something Is About to Happen」であり、「何かが起こりそう」「何かがまさに起きようとしている」という意味になる。そして、スペインでの原題は「Que nadie duerma」であり「誰も寝させないで」という意味であり、劇中に流れるアリア「誰も寝てはならぬ」(Nessun dorma)に近いニュアンスを込めていることが興味深い一作である。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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