子供が“小さな大人”として扱われるスポーツ界に問題意識を投げかける『ジュリーは沈黙したままで』がいよいよ劇場公開!

©2024, DE WERELDVREDE
将来有望なテニス選手の周囲で、コーチの指導停止をきっかけに不穏な空気が渦巻く『ジュリーは沈黙したままで』が10月3日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『ジュリーは沈黙したままで』は、指導停止となったコーチに関して沈黙を続ける15歳のテニスプレイヤーの少女の、揺れ動く心情を描いたドラマ。ベルギーのテニスクラブに所属する15歳のジュリーは、その実力で将来を有望視されていた。しかし信頼していたコーチのジェレミーが指導停止となり、彼の教え子であるアリーヌが自ら命を絶った事件をめぐって不穏な噂が立ちはじめる。ベルギー・テニス協会の選抜入りテストが迫るなか、クラブに所属する全選手を対象にジェレミーについてのヒアリングが実施され、彼と最も近しい関係だったジュリーに大きな負担がのしかかる。テニスに支障のないよう、日々のルーティンを崩さず、熱心にトレーニングに励むジュリーだったが、その一方でジェレミーに関する調査にはなぜか沈黙を続ける。
本作では、ベルギーの新鋭レオナルド・バン・デイルが長編初監督・脚本を手がけ、スポーツ界で子どもが”小さな大人”として扱われる現実に疑問を投げかけた。主人公ジュリー役には、実生活でもテニス選手として活躍するテッサ・バン・デン・ブルックを抜てき。ベルギーの映画作家ダルデンヌ兄弟が共同プロデューサー、テニス選手の大坂なおみがエグゼクティブプロデューサーに名を連ねた。
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映画『ジュリーは沈黙したままで』は、10月3日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のテアトル梅田、京都・烏丸の京都シネマ、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開。

本作は、タイトルの如く、劇中では明確に示されない事実について、ジュリーがひたすら沈黙したままでいることを映し続けている作品である。15歳のテニスプレイヤーであるジュリーが信頼していたコーチが指導停止となり、彼の教え子が自ら命を絶った事件が起こったならば、否が応でも、良からぬ出来事があったのではないか、と想起してしまう。誰もが真相を知りたくなるもので、ジュリーに視線が向けられるが、彼女は沈黙を崩さない。ならば、本作で映し出される画の随所から、想像するしかないのだ。まさに映画的な表現を以て構成されている作品だ。もしかしたら、このコーチも登場しないのではないか、と思っていたら、ジュリーとコーチが対峙するシーンも盛り込まれていく。翻って、ジュリーへの影響も気にならずにはいられない。将来有望なテニス選手として期待されている“小さな大人”として扱われることは、ジュリーにとってどれだけの重荷であろうか。同世代の少年少女にとっては想像を絶するだろう。そんな重圧の中でテニス協会の選抜入りテストに挑むジュリーの姿が或る種凛々しかったのがせめてもの救いだ。最終的に、ジュリーは沈黙を解くのだろうか…と思いながら、スクリーンを見つめるしかない作品であった。

- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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