ニューヨークに実在したシネフィルの聖地“キムズビデオ”が抱えていたビデオコレクションの行方をめぐるドキュメンタリー『キムズビデオ』がいよいよ劇場公開!

©Carnivalesque Films 2023
配信サービスによって閉店したNYのレンタルビデオショップ“キムズビデオ”のコレクションが、譲渡先のシチリアの村で杜撰な管理体制下にあると知り、奪還作戦が開始される『キムズビデオ』が8月8日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『キムズビデオ』は、映画ファンの聖地となっていたニューヨークのレンタルビデオ店”キムズビデオ”の膨大なビデオコレクションの数奇な運命を追ったドキュメンタリー。1987年、韓国系移民のキム・ヨンマンがニューヨークに開業したキムズビデオには、世界中から収集された5万5000本もの貴重な映像作品が取りそろえられ、多くの映画ファンたちが通い詰めていた。しかしビデオレンタルの時代は終焉を迎え、2008年に惜しまれながらも閉店。数年後、キムズビデオの元会員デビッド・レッドモンがコレクションの行方を捜索すると、イタリアのシチリア島にある村サレーミに移設されていたことが判明する。しかも、管理体制はずさんで、貴重なコレクションがホコリだらけの湿った所蔵庫に放置されていた。レッドモンは助けを求める映画たちの“声”にかきたてられ、唯一無二のコレクションを救い出すことを決意。架空の映画撮影を偽りながら、前代未聞の奪還計画に乗り出す。
©Carnivalesque Films 2023
映画『キムズビデオ』は、8月8日(金)より全国の劇場で公開。関西では、8月8日(金)より大阪・梅田のテアトル梅田や京都・烏丸御池のアップリンク京都、8月9日(土)より神戸・元町の元町映画館で公開。

”キムズビデオ”なるものを初めて知ったのは、本作のオフィシャルHPにもコメントを寄せている柳下毅一郎さんがLoft PlusOne Westでのイベントだった。そんな怪しきレンタルビデオ店があったんだなぁ、と感心していたら、山形国際ドキュメンタリー映画祭で本作が上映されたことを知る。そして、いよいよ日本の劇場でロードショー公開だ。そもそも、レンタルビデオ店のルーツは、なんらかの小売店等の軒先に少しのビデオカセットを置き、興味ある方はどうぞ、といった小規模なものだった。販売用のビデオカセットは1万円超えの高価なものだが、レンタルビデオとして安価に視聴できるなら、これはビジネスになると感づいた方が大々的に店舗展開していったのだ。”キムズビデオ”もそんなビジネスの1つ。世界中から収集された5万5000本もの貴重な映像作品がラインナップされているなら、まさに脅威そのもの。映画ファンを育てるにはうってつけの場所だ。そこから、現代の名監督も誕生している。とはいえ、そのラインナップの中には、本来は存在しているはずのないビデオ、すなわち海賊版もあるわけで、警察にも目をつけられてしまう。そして、現在の配信サービスが隆盛していくのなら、閉店するのは時代の流れといえようか。だが、そんな5万5000本のビデオをどうすればよいか。実は、イタリアのシチリア島にある村サレーミに移設されていたのだが、あまりにもずさんな状態で、創業者のキムさんも途方に暮れるほど。その裏側には、単純ではない闇も隠されている。そんな大量のビデオを”再生”させるための手段には、呆気に取られてしまった。ドキュメンタリー作品として劇場で公開されるのけど、映画に狂わされた人の極みである、と表現したい作品である。なお、本作は、日本の劇場で公開されると共に”ビデオ”で販売されるのだ。関西なら、テアトル梅田と元町映画館で販売されるので、この機会を逃す手はない!

- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
- 最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!