いじめられっ子の孤独な少年が父親の背中を追ってアイドルを目指す『無名の人生』がいよいよ関西の劇場でも公開!

©鈴木竜也
団地に暮らすいじめられっ子の少年が、転校生との出会いをきっかけに、アイドルを目指したことから始まる波乱に満ちた100年の人生を、全10章で描く『無名の人生』が5月23日(金)より関西の劇場でも公開される。
映画『無名の人生』…
仙台の団地で暮らす、いじめられっ子の孤独な少年。ある転校生との出会いをきっかけに、父親の背中を追ってアイドルを夢見るようになり、思いがけず成りあがっていく。生まれてから死ぬまでに源氏名や蔑称などさまざまな呼称で呼ばれながらも「誰からも本当の名前を呼ばれることのなかった男」の波乱万丈な100年の生涯を、高齢ドライバーや芸能界の闇、若年層の不詳の死、戦争といった社会問題を背景に、それぞれ主人公の「別名」を冠した10章で描く。
本作は、独学で制作した短編アニメ『MAHOROBA』が国内の自主映画祭で数々の賞を獲得した鈴木竜也監督が、個人制作で1年半かけて完成させた長編アニメーション監督デビュー作。ラッパーのACE COOLが主人公役で声優に初挑戦。鈴木監督が原案・作画監督・美術監督・撮影監督・色彩設計・キャラクターデザイン・音楽・編集を兼任し、脚本をあえて用意せず、章ごとにタッチや色彩を変化させながら変幻自在に描きだす。『音楽』で注目を集めたアニメーション監督の岩井澤健治さんがプロデュースを担当した。
©鈴木竜也
映画『無名の人生』は、関西では、5月23日(金)より京都・出町柳の出町座、5月24日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場、6月7日(土)より神戸・元町の元町映画館で公開。

PFFアワード2022に鈴木竜也監督の『MAHOROBA』を観た際には衝撃的だった。元々は、東北芸術工科大学映像学科を卒業し実写監督を志しながらもも流れ流れて歌舞伎町のオイスターバーの雇われ店長になり、コロナ禍によって時間が出来たこともあり、独学で作り始めた短編アニメーション映画であったことを知り、類稀なる才能に慄いてしまった。その後も短編アニメーション作品を制作しながら、いよいよ長編アニメーション映画の制作である。しかも、クラウドファンディングで制作費を集め、仙台の実家にこもり、1年半をかけて全て1人で描き上げたことに、またもや驚かされるばかり。1人の力で実現可能なことを最大限に発揮しながら、奇想天外なストーリーテリングによって、観る者は惹き付けられてしまう。特に本作冒頭で映し出されるプロローグから要注目だ。サイレントなアニメーションの中にストーリーの本筋に大きく影響を与える描写がたっぷりと成されているので、しっかりと読み解いておく必要がある。このプロローグがあるからこそ、本作の主人公に秘められた類稀なる才能の開花についてアンテナを立てることが出来るのだ。そして、気づけばプログレッシブで独特な世界観のあるアニメーションが繰り広げられていく。よくぞ、これを1人で手掛けたな、と驚愕するばかり。鈴木竜也監督が、無名の天才と呼ばれ続けないように、今こそ必見の作品である。

- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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