自分が面倒くさくて嫌だと思っていたことを、誰かが”大丈夫だよ、おもしろい”と言ってくれて生きやすくなる…『タイムマシンガール』葵うたのさんと木場明義監督を迎え舞台挨拶開催!

ある事件をきっかけに、驚くとタイムスリップする体質になったプロレス好きのOLの恋と友情を描く『タイムマシンガール』が3月29日(土)より大阪・十三のシアターセブンでも公開。初日には、主演の葵うたのさんと木場明義監督を迎え、舞台挨拶が開催された。
映画『タイムマシンガール』は、『サイキッカーZ』『エスパーX探偵社 さよならのさがしもの』等のインディーズ映画を手がける木場明義監督が、驚くと時間が巻き戻ってしまう特異体質になってしまった主人公が、元に戻るため奔走する姿を描いたSFコメディ。OLの可子(かこ)は、ひょんなことがきっかけで、ある特異な体質になってしまう。それは、不意に驚くことがあると、彼女を驚かせた相手と一緒に数十分ほど過去にタイムスリップしてしまうというものだった。そのため彼女は、なるべく他人との関わりを避けるようにしていた。しかし、おっちょこちょいな職場の同僚である千鶴にたびたび驚かされ、意図しないタイムスリップを何度もしてしまう。やがてその能力を利用しようとする者も現れはじめ、可子はタイムスリップの能力をなくそうと、体質改善のために奔走するが…
主人公の可子役は映画『レッドブリッジ』やテレビドラマ「パリピ孔明」等に出演し、本作が映画初主演となる葵うたのさん。可子と行動をともにする千鶴役は、アイドルグループ「君と見るそら」のメンバーで、バレリーナ、モデル、俳優などさまざまな分野で活躍する高鶴桃羽さん。そのほか遠山景織子さん、木ノ本嶺浩さん、女子プロレスラーの惡斗こと安川結花さん、「でんぱ組.inc」の鹿目凛さんら個性的な共演者が集う。
今回、上映後に主演の葵うたのさんと木場明義監督が登壇。なぜだか緊張ぎみの木場監督のおかげか和やかな雰囲気の中で舞台挨拶が繰り広げられた。
学生時代に友人と大阪に遊びに来ていた葵さんにとって御仕事での来阪は初めてで、現在の賑わいに驚いている。今回、キャスティングはオーディションで選んだ。前々作までは知り合いを通じたご縁で出演してもらっていた木場監督だが「仲間内だけだと、なあなぁの状態になってしまう。作品の質を上げるためにもオーディションで選ばせて頂いた」と明かす。オーディションを受ける段階から台本を読んでおり、葵さんは「おもしろぉ!よくこんなことを考えるなぁ」と感心。「タイムスリップものは今まで色々拝見させてもらいましたけど、ビックリして戻る、とか…それぞれの体質によって変わるタイムスリップの特性とか、凄くおもしろくて…過去にすごく惹かれたので…」と思い返してた。これを受け、木場監督は「何回も聞いちゃう。嬉しいですね」と喜んでいる。オーディションの際、葵さんは、グレイの上下セットアップスーツを購入し着て参加しており、木場監督は「オーディションの時、一際地味だったんですよ。応募者は一通りに目を通して資料や演技動画を探していたけど、印象と全然違って…すっげぇ地味なんだ、この子…」と驚いた。とはいえ、お客さんに対して「観ていただいた通り、上手なんで。しっかりと地味な演技をする。しかも、人見知りする」とアピールしながら「よくよく考えたら、地味にしてきているんだ。地味な人の役だもんな。なるほどねぇ…と思ったら一番良くて。カメラマンとキャスティング・ディレクターら4人が葵さんと高鶴さんと満場一致」と振り返る。葵さんも高鶴さんとの共演について「良いコンビだったなぁ」と印象深く、木場監督も「高鶴さんも良いキャラ。性格と違うことをやらせた。真面目な子なんだけど、脚本的には、ギャルで書いている。”いいっスねぇ”〇〇っスぅ~”といった言葉で。バレエでロシア留学しプロになろうと思ったけど、戦争が始まって日本に帰国して芸能活動を始めた特殊な経歴の子なんだけど、真面目な子だから”〇〇っスぅ~”と言ったことなかった」と明かした。
1週間という短期間で撮った今作。葵さんは、木ノ本嶺浩演じる井手泰人との悪口を千鶴と喋るシーンの撮影を楽しんでおり「映画で初めてリアクションの顔を見たんですけど…悪いことしたなぁ。凄い傷ついていたから…」と後悔してしまう。また「遠山景織子も、最後に驚かせるシーンとか…」と添えていく。特別出演の遠山さんについて、木場監督は「遠山さんも応募してくれた方。『笑う犬』とかでコントをやっていたので、コメディが好きなんですって。舞台ではシリアスな役が多いから”こういう役をやりたい。変な役だから楽しみです”。”ワッ”と言うのも最初と最後だけ小さめにするのも遠山さんが考えた演技プラン。あれは出なかったなぁ。流石だなぁ」と感心していた。とはいえ、1週間で効率よく撮影しており「皆が本当に優秀。台詞を間違えない人達が集まった。僕としては凄く助かった」と感謝しているが、台詞覚えについて、葵さんは「一通りを何回も読んで、撮影前日に撮る分を改めて細かく覚える。おもしろかったので、一語一句味わって…」と話し、楽しんだようだ。特に、目の前で先輩がプロレス技を掛けられるシーンを葵さんは気に入っており、木場監督は「僕自身がプロレス好き。僕は日常会話をなかなか書けなくて…結局、好きなことを書かないと筆が進まないので…登場人物、だいたいプロレス好き設定なんですけど、役者さんはプロレス知らないことを考えない」と打ち明けていく。そこで、葵さんとしては「祖父がプロレス好きで、家で流れていました。男性だけだったので、女性プロレスは観たことなくて…」と正直に話す。
なお、寿司屋のシーンで、大将を演じているのは、ホラー映画で有名な清水崇監督。自身で台本にある長台詞の中に書き足した部分もあるようだ。さらには、少しだけ映る娘を演じたのは、『ミンナのウタ』や『あのコはだぁれ?』に出演している穂紫朋子さん。実は、木場監督自身も清水監督のご縁があり、『あのコはだぁれ?』に出演しているそうだ。とはいえ「どうやって出演させようか」と困惑しながら、穂紫さんが着ていた学生服を松竹から借りることができ「エンドロールに”松竹”と入れられる」と気づいて、箔が付くことも意識している。
木場監督自身、東京以外での集客には毎回大変で、今回、初めてTikTokで予告動画をアップロードして宣伝活動することにも励んでいった。動画が流れるエリアを指定することもでき、そのおかげで、今日の部隊挨拶にいらっしゃった方もおり「頑張った甲斐あったねぇ」と感慨深げだ。最後に、葵さんは「私、この映画が本当に凄く大好きで…自分で観ても、こんなに笑える、救われる、ってビックリしたんです。自分が面倒くさくて嫌だと思っていたことを誰かが”大丈夫だよ、おもしろい”と言ってくれて生きやすくなることも自分に重ねて凄く楽しかったので…皆さんも一緒に笑っていただけていたらな」と願いを込め、舞台挨拶を締め括った。

- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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