麻薬カルテルのボスが、性別移行によって女性として新たな人生を歩む『エミリア・ペレス』がいよいよ劇場公開!

©2024 PAGE 114 – WHY NOT PRODUCTIONS – PATHE FILMS – FRANCE 2 CINEMA
女性として人生を再出発させた麻薬王と、その計画を支えた弁護士の運命が、思わぬ方向へ転がる『エミリア・ペレス』が3月28日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『エミリア・ペレス』は、メキシコの麻薬カルテルのボスが過去を捨て、性別適合手術を受けて女性として新たな人生を歩みはじめたことから起こる出来事を、クライム、コメディ、ミュージカルなどさまざまなジャンルを交えて描いた。メキシコシティの弁護士リタは、麻薬カルテルのボスであるマニタスから「女性としての新たな人生を用意してほしい」という極秘の依頼を受ける。リタは完璧な計画を立て、マニタスが性別適合手術を受けるにあたって生じるさまざまな問題をクリアし、マニタスは無事に過去を捨てて姿を消すことに成功する。それから数年後、イギリスで新たな人生を歩んでいたリタの前に、エミリア・ペレスという女性として生きるマニタスが現れる。それをきっかけに、彼女たちの人生が再び動き出す。
本作は、『ディーパンの闘い』『君と歩く世界』『預言者』等でフランスを代表する名匠として知られるジャック・オーディアールが手がけた作品。2024年の第77回カンヌ国際映画祭では審査員賞とアドリアーナ・パス、ゾーイ・サルダナ、カルラ・ソフィア・ガスコン、セレーナ・ゴメスの4人が女優賞を受賞。特にエミリア・ペレス/マニタス役を演じたカルラ・ソフィア・ガスコンは、カンヌ国際映画祭において初めてトランスジェンダー俳優として女優賞を受賞した。第97回アカデミー賞でも作品賞や国際長編映画賞をはじめ、非英語作品としては史上最多となる12部門13ノミネートを果たし、助演女優賞(ゾーイ・サルダナ)と主題歌賞の2部門を受賞。カルラ・ソフィア・ガスコンもトランスジェンダー俳優として初の主演女優賞ノミネートとなった。
©2024 PAGE 114 – WHY NOT PRODUCTIONS – PATHE FILMS – FRANCE 2 CINEMA
映画『エミリア・ペレス』は、3月28日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマやテアトル梅田や難波のなんばパークスシネマ、京都・三条のMOVIX京都や烏丸御池のアップリンク京都、神戸・三宮のkino cinema 神戸国際やシネ・リーブル神戸等で公開。

実に素晴らしい才能と正義感を持ちながらも、ボスに利用されてしまい不遇の日々を送っていた女性弁護士の視点を以て描かれていく冒頭からのシーン。彼女の前に立ちはだかったのは、麻薬カルテルのボス。告げられたのは、女性として生きていきたい、ということ。危険な街で育ちながらも頂点にまで上り詰めたが、実はトランスジェンダーであり、本来の性を以て生きたい、ということだった。あらすじを知らなければ、驚かされる展開である。そして、無事に性別適合手術が成功した後には、全く別の人生を歩んでいくのだから、驚かされるばかりだ。近年、多くの映画でメキシコには危険なエリアがあることが表現されてきた。本作においては、多様性を以て、実にユニークな物語として展開していくことは興味深い。さらには、クライム作品でありながら、ミュージカル映画としても作り上げられており、各々の女性の中で渦巻いている感情を実に豊かな歌唱力を以て体現していた。様々な要素を含めているにも関わらず、1本の映画として成立させたことに慄いてしまう。これぞ、カンヌ国際映画祭の常連とも云える巨匠、ジャック・オーディアールならではの手腕だろうか。実に最後の最後まで見応えのある作品に仕上がっており、この世界観を是非とも劇場で思い切り堪能してほしい。

- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
- 最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!