停滞するカザフスタンの社会を鋭い視点とブラック・ユーモアで描く『バイクチェス』が第20回大阪アジアン映画祭のコンペティション部門でアジア初上映!

停滞するカザフスタンの社会を鋭い視点とブラック・ユーモアで描く『バイクチェス』が第20回大阪アジアン映画祭のコンペティション部門でアジア初上映された。
映画『バイクチェス』…
テレビ局の記者として働く主人公は、仕事に恋愛に充実の毎日を送っていた。しかしプロパガンダになっていく報道、妻のいる男との恋愛、レズビアンで活動家の妹の面倒に次第に疲れていく。鋭い視点とブラック・ユーモアで描く人間ドラマ。
映画『バイクチェス』は、3月9日(土)12:50よりABCホールでも上映。

この『バイクチェス』という謎めいたタイトル、作品ポスターが示す通り、エアロバイクに乗りながら、チェスをするスポーツを指している。本当にこんな競技が実在するか定かではない。だが、この画が示すように、シュールレアリスムな笑いが漂ってしまう。本作は、このような凍てついた笑いのネタをたっぷりと詰め込んだブラック・コメディでもある。基本的には、テレビ局の記者として働く女性の主人公が、様々な現場で遭遇する滑稽な出来事の様子を伝える…いや伝えないことが多いか…どうしようもない現場を目の当たりにしながら、カザフスタンの社会がソ連時代の遺制を引きずっていることを示していく。それは、体制側が腐敗していることで、不可解な権力による縦社会が未だにあることも表現していた。だが、体制に対して右に倣え、の国民だけではない。多様性への理解が深められていないことに対する静かな抗議活動も描かれていく。とはいえ、最後まで観終えると、旧態依然とした社会が明確に覆らないことに憤りを感じてしまう。ウィットに富んだあることブラック・ユーモアも込められているのがせめてもの救いだろうか。

- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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