普通の生活の大切さを犬が取り戻してくれる…『少年と犬』西野七瀬さんと瀬々敬久監督を迎え大阪舞台挨拶付き特別試写会開催!

震災で職をなくした青年と秘密を抱えて暮らす女性が、震災で飼い主を亡くした犬との交流を通して心を通わせていく『少年と犬』が3月20日(木)より全国の劇場で公開される。3月7日(金)には、大阪・梅田のTOHOシネマズ梅田に西野七瀬さんと瀬々敬久監督を迎え、大阪舞台挨拶付き特別試写会が開催された。
映画『少年と犬』は、小説家の馳星周さんによる直木賞受賞作「少年と犬」を、『ラーゲリより愛を込めて』の瀬々敬久監督が映画化。様々な事情を抱える人々と1匹の犬が織りなす交流を短編連作小説としてつづった原作の複数のエピソードをもとに、オリジナル要素を加えて描く。震災から半年後の宮城県仙台市。職を失った青年の和正は、震災で飼い主を亡くした犬の多聞と出会う。聡明な多聞は和正とその家族にとって大切な存在となるが、多聞は常に西の方角を気にしていた。やがて家族を助けるため危険な仕事に手を染めた和正は事件に巻き込まれ、その混乱の中で多聞は姿を消してしまう。時が流れ、多聞は滋賀県で暮らす女性・美羽のもとで過ごしていた。悲しい秘密を抱える美羽は、多聞と過ごすことで平和な日常を取り戻していく。そんな彼女の前に多聞を追ってきた和正が現れ、2人と1匹の新たな生活が始まる。傷ついた人々に寄り添いながらも、たった1匹で西を目指して歩く多聞には、ある少年との約束があった。多聞とともに旅をする和正を高橋文哉さん、多聞に命を救われる美羽を西野七瀬さんが演じる。
今回、上映前に西野七瀬さんと瀬々敬久監督が登壇。大阪に馴染みのある2人から大阪で過ごした思い出や本作の関西ロケを存分に語ってもらう舞台挨拶が繰り広げられた。
大阪府出身の西野さんは、実は、あまり梅田に来たことがなく「偶に、家族や親戚と夜ごはんを食べよう、と言う時に来ていたので、特別感のある場所。基本、地元周りで普段は遊ぶことが多かったので、梅田に行くとなると、お出かけ感が強かったな」と話す。大分県の国東半島で育った瀬々監督は、浪人時代に大阪で1年過ごしていたことがあり「土佐堀にあった予備校に行っていたんですけど、その寮が大正区鶴町四丁目で地下鉄の駅がなく市バスで通っていたんです。当時も映画が好きだったので、大毎地下劇場という名画座によく通っていました。青春の街ですね」と懐かしんでいた。また、最近のお気に入りとして、西野さんは、阪神百貨店の地下1Fにある「大学芋くりよりや」を挙げ「めちゃくちゃ美味しい。大阪に来たら必ず買います。最近ハマっている。去年、舞台公演で大阪にいたので、その時に両親が買ってきてくれた。美味しくてビックリした。お仕事で来た時はできれば持って帰りたいスイーツですね」と紹介。瀬々監督は、予備校時代にお好み焼き定食があることに「凄いな」と驚きながらも「けっこういけるクチでしたよ」と思い出していた。
滋賀県内で10ヶ所以上も撮影された本作。ほとんどの撮影を滋賀県内で行った西野さんは「今回、言葉も滋賀弁ではあるんですが、関西弁とベースはほぼほぼ同じだったので、自分の持っているベースと方言指導の方にちょいちょいと直していただいた。そうやって映画でガッツリとやったのは初めてで、凄いやりやすかったです」と振り返る。瀬々さんは、滋賀に膳所公園や膳所高校があることを挙げ「僕の祖先のルーツはそこだ!という噂がある。大学の時に一度歩いたことがあるんですが、何も見つかりませんでしたが」と明かしながら、親近感があり「今回も、びわ湖バレイとか素敵な場所がいっぱい映っていますので、是非そちらも堪能してください」とお薦めしていく。なお、琵琶湖は天候が変化しやすい場所であるが「びわ湖バレイが素敵なシーンがあるんですけど、前日まで大雪で凄かった。雪を掻きだしていた。撮影当日も朝から曇りだったんですけど、上手い具合に晴れてくれました」と安堵している。
西野さんが演じた美羽という役について、瀬々監督は「たいした話はしていません」と嘘を言いながら「基本は、放置プレイなんで…」と申し訳そうになりながらも「西野さんは、場所に行くと馴染んでくれる。化学反応が凄い。そこに住んでいる女子に直ぐなれる。その場に収まりが良い。そことアンテナを張った巫女さん的な感じがしたんです」と思い返す。これを受け、西野さんは「撮影中、監督と演出以外の会話がほぼなかった。監督がそういう風に思ってくださっていたんだ」と気づかされる。西野さん自身は「過去や今を取り巻いている環境を考えて、映画の中で描かれていない部分も想像で補う。現場に行ってみて、役の雰囲気を作っていきたいタイプなので」と自らの役作りについて説く。また、瀬々監督は「犬とのふれあいが多かった。それが良い影響を与えてくれている、と見ていて思っていた。多聞とふれあっているところで感情が出て来る。映画と同じように助けてくれている」と話し、西野さんも「人間同士だと起こりえないような、言葉がないんですけど、目だけのやりとりが多聞(犬の”さくら”さん)だった。犬だけの特別な能力を凄く感じました」と驚いている。
共演相手である高橋文哉さんについて、西野さんは「和正という役、ちょっとウザい感じの人柄なんです。可愛らしい、チャーミングですね。憎めない可愛らしさが、美羽的には最初は凄くウザったいんですけど、逆にそういうものに救われるような場面もあるので、和正を演じている高橋さんは素敵だな。イメージにないような、おちゃらけな感じが、明るい感じで描かれている」と印象深い。瀬々監督は「高橋君は、誠実な好青年でやらないといけない、と頭で考えていたみたいだ。そこを”ドジな風に演じてくれ、チャーミングに”と言ったけど、チャーミングという言葉が高橋訓には伝わらなかった。おじいさんみたいだと思いました」と正直に話す。とはいえ「高橋君は、そういう風に考えて作っていくタイプの俳優だと感じた。今風の顔をしているけど、古風な役作りをする人だと思った」と感じており「西野さんとはまるで違うタイプの俳優が合わさって化学反応で出来た映画です」と断言する。
短編集である原作を1本の映画にした本作。瀬々監督は「最初に、東北の震災から始まっているんですけど、そういう中でも日常生活を送っていて、喜怒哀楽もあり、普通の生活の大切さを犬が取り戻してくれる。それを伝えたいな」という思いがあると同時に「生きる、死ぬ、というテーマも犬との関係の中で描いていけたらな」と、本作を作ったことへの思いを話す。撮影中以外の多聞について、西野さんは「クールな子でした。誰にでも、撫でてぇ~、と向かうような子では全くない。現場でも、スッと静かに凛としている。役者さんです。待ち時間も同じようにスッと座って待っている」と驚いていた。瀬々監督も「トレーナーの方がずっと付きっきりなんです。滋賀での撮影時は、ホテルに泊められないので、キャンプ場にある一軒家で生活を共にして暮らしていた。親身にトレーナーの方と一体となって生活をされていた。素晴らしく感じました」と感心していた。
最後に、瀬々監督は「滋賀でいっぱいロケしています。これを観て、滋賀の素晴らしさを改めて感じられると思います。是非、観終わったら、どこで撮影したのかな、と実際のロケ地を巡るのも楽しいことだと思います。関西に馴染みの深い映画ですので、是非堪能して下さい」とメッセージを伝えていく。そして、西野さんは「約1年前に撮影をしました。始まる前から、きっとこれは凄く大変になるだろうな、挑戦になるだろうな、と思っていたんです。やはり、想像を上回る撮影期間の大変さ、心をすり減らしがら、毎日悩みながら、良いものを撮りたい気持ちを皆一つにしていました。ずっと一緒に撮ってくれていたさくらも一緒にみんなで一生懸命に作った作品です。好きなように感じて頂けたら一番嬉しいです。是非存分に楽しんでもらえたら」と思いを込め、舞台挨拶を締め括った。
映画『少年と犬』は、3月20日(木)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のTOHOシネマズ梅田や大阪ステーションシティシネマや難波のTOHOシネマズなんば、京都・二条のTOHOシネマズ二条や三条のMOVIX京都や七条のT・ジョイ京都、神戸・三宮のOSシネマズミント神戸等で公開。

- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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