ホロコーストを生き延びた建築家の半生を描く『ブルータリスト』がいよいよ劇場公開!

© DOYLESTOWN DESIGNS LIMITED 2024. ALL RIGHTS RESERVED. © Universal Pictures
第2次大戦下のホロコーストを生き延び、渡米した建築家を数々の困難が襲う『ブルータリスト』が2月21日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『ブルータリスト』は、ホロコーストを生き延びてアメリカへ渡ったハンガリー系ユダヤ人建築家の数奇な半生を描いたヒューマンドラマ。ハンガリー系ユダヤ人の建築家ラースロー・トートは第2次世界大戦下のホロコーストを生き延びるが、妻エルジェーベトや姪ジョーフィアと強制的に引き離されてしまう。家族と新しい生活を始めるためアメリカのペンシルベニアに移住した彼は、著名な実業家ハリソンと出会う。建築家ラースローのハンガリーでの輝かしい実績を知ったハリソンは、彼の家族の早期アメリカ移住と引き換えに、あらゆる設備を備えた礼拝堂の設計と建築を依頼。しかし母国とは文化もルールも異なるアメリカでの設計作業には、多くの困難が立ちはだかる。
本作では、『戦場のピアニスト』のエイドリアン・ブロディが主演を務め、『博士と彼女のセオリー』のフェリシティ・ジョーンズが妻エルジェーベト、『メメント』のガイ・ピアースが実業家ハリソンを演じた。『ポップスター』のブラディ・コーベット監督がメガホンをとっている。2024年の第81回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞し、第97回アカデミー賞でも作品賞ほか計10部門にノミネートされた。
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映画『ブルータリスト』は、2月21日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のTOHOシネマズ梅田や心斎橋のkino cinema 心斎橋や難波のTOHOシネマズなんば、京都・二条のTOHOシネマズ二条や九条のT・ジョイ京都や烏丸の京都シネマ、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸等で公開。

本作のタイトル『ブルータリスト』のベースとなっている「ブルータリズム」は、装飾を極力排して素材やテクスチャそのものに重きを置いた建築様式。コンクリートが剥き出しで、華やかな装飾を見せるようにするのではなく、建築の構造そのものを見せる手法である。無機質な芸術性を前面に押し出しており、評論家の間でも、一般の人々の間でも、賛否両論にさらされてきており、ブルータリズムの美学を称賛し難いと感じる人は多いようだ。そんなブルータリズムの建築様式に則った”ブルータリスト”が本作の主人公である。ホロコーストを生き延びたハンガリー系ユダヤ人は、アメリカの大地に立ち、他の方とは異なった”アメリカン・ドリーム”を掴もうとする。著名な実業家によって、自らのブルータリズムが認められ、苦難を経ながらも礼拝堂の設計と建築を依頼されるまで至った。だが、本当の苦難は、実際に建築する過程にあった。現実的には予算の問題があり、自らの美学を押し通すにはどれだけ苦しいものであるか思い知らされる。自らの営みを削いでいくしか実現の可能性を見出せないのは、なんとも心苦しい限りだ。そんな主人公を演じるのは、『戦場のピアニスト』のエイドリアン・ブロディ。フィクションであることは分かっていても、慈愛に満ちながらも魂のこもった演技には圧倒される。そして、対峙する実業家をガイ・ピアーズが演じており、主人公に対し威厳を以て接していく演技にも魅了されていく。215分もかけてじっくりと丁寧に描かれていくストーリーテリングに導かれ、主人公と共に苦節の人生を経ていく極上の体験に臨んでみてはいかがでしょうか。

- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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