もしコレを自分が思いついていたら、ガッツポーズものだな!『死に損なった男』水川かたまりさんを迎え舞台挨拶開催!
殺伐とした日々に疲れ、駅のホームから飛び込もうとするも、タイミング悪く死に損なった男性の数奇な運命を描く『死に損なった男』が2月21日(金)より全国の劇場で公開される。1月28日(火)には、大阪・梅田のT・ジョイ梅田に空気階段の水川かたまりさんを迎え、舞台挨拶付き上映会が開催された。
映画『死に損なった男』は、お笑いコンビ「空気階段」の水川かたまりさんが映画初主演を務め、死に損なったうえに幽霊にとり憑かれて殺人を依頼された男の数奇な運命を描いたオリジナルストーリー。長編監督デビュー作『メランコリック』が国内外で数々の映画賞を受賞した田中征爾さんが、監督・脚本を手がけた。お笑いの道にあこがれて構成作家になったものの、殺伐とした社会と報われることのない日々に疲弊してしまった関谷一平は、駅のホームから飛び降りる決意をする。しかし、隣の駅で人身事故が起こったことにより、一平の状況が一変する。死に損なった一平の前に男の幽霊が現れ、「娘に付きまとっている男を殺してくれないか?」と、一平に殺人依頼を持ちかける。しかも、男を殺すまで幽霊は一平にとり憑くという。幽霊にとり憑かれてしまう主人公の一平役を水田かたまりさんが演じた。そのほか正名僕蔵さん、唐田えりかさん、喜矢武豊さん、堀未央奈さん、森岡龍さんら個性的なキャストが共演している。
今回、上映前に水川かたまりさんが登壇。初主演ならではの興味深い体験を聞くことが出来る機会となった。
初めての映画主演である本作。オファーを受ける前の頃に、空気階段のスケジュールをマネージャーと共有しているGoogleカレンダーに、先々のスケジュールに「かたまり主演映画撮影(仮)」と書いてあることを発見し「嘘だろう…ドッキリだろう…」と疑ってしまった水川さん。「多分ドッキリだろう。僕は、この日に大人に酷いことをされて、ゲラゲラ笑われて惨めな気持ちで家に帰るんだろう」と高を括り、にわかには信じられず。実際に、台本を渡され読んでみると、おもしろくて「ドッキリで偽の台本で、こんなおもしろいのを作らないだろう。マジなのかな」と次第に信じはじめたが、まだ疑念が払拭されず。衣装合わせにうかがい、ゴールデンボンバーの喜矢武豊さんと一緒になり、素顔を見ても「本当に喜矢武豊なのかな」と調べてしまう。そして、初日の撮影現場に向かい、しっかりとした数の大人を見て「これは本当に映画なんだ。主演なんだ」とようやく確信した。それまでは、監督についても偽物だと思っていたようだ。とはいえ「もし本当の映画だったら、台詞を覚えていないと凄く怒られる。しっかりと初日の台詞は覚えていきました」と明かす。
相方の鈴木もぐらさんからは、映画のポスターが公開された時、その映し出されている情報だけでストーリーの考察をされてしまい「凄く迷惑でした」と本音をポロリ。その考察は「幽霊が憑りつくんだよな、お前に。嫌だ嫌だ、と言うよな。でも、お前は結局死なねえんだよな」といった内容で「的を得つつ、的外れなこともありつつ、な持論を展開してきましたね」と迷惑ぎみ。とはいえ「気にはしているのかもしれないですけど…多分この映画を観ることはない、と思います。非常に不愉快な考察をされたので、映画館の方には、もぐらを映画館に入れないでほしい。出禁で」と断言する。
演じるにあたり、涙を流すシーンの難しさを挙げ「そんなやったことがないので、手腕が問われるところだな」と察した。台本を読んだ際、特殊なキャラクターの設定について「もしコレを自分が思いついていたら、ガッツポーズものだな。もし監督が自分の息子だったら、頭を撫でてあげます、でかしたぞ、と」絶賛。演じた関谷一平について「神経質でナイーブな人間なんだろうな。自分と近しいな」と共感しながら「僕、普段はまばたきが多いんですけども、台本を読んだ時に、関谷一平もまばたきが多いだろうな。まばたきを映画の中でも凄くしているので、気になり始めたら止まらないので、今の時間に僕のまばたきを見慣れといてもらうと見やすい」と提案。また「僕も人生に絶望することがあります。芸人をやっておりますと、蠅が集るぐらいスベってしまう時があります。”もう芸人を辞めようかな”、”なんだよ、ふざけんな、いい加減にしろ”、”もう辞めてやるよ”と思う時もありますけども、さすがに死のうとは思わない」と自身と違うところも指摘。むしろ、スベった後はサウナに行って心を整えるようにしており「バラエティー番組の収録中、あまりにもスベリ過ぎた時は、収録のことではなく、サウナのことばかり考えるようにしている。翻ってごほうびでもあります」と話す。
完成した作品を観て「ずっと自分が映っているのが違和感でしなくて…恥ずかしいじゃないですか。自分が2時間ずっとここ(スクリーン)に映っていたら、気まずいじゃないですか。正直、集中できなくて…変な妄想が働いちゃう。正名僕蔵さんが画面の向こうから客席の僕に向かって”これは全部嘘だ、ばぁか”と言ってくる妄想に憑りつかれていた。最初に観た時は全然おもしろくなかった」と漏らす。後日、冷静な状態で観て「おもしろかった」と気に入っている。
なお、撮影現場では非常に緊張してしまったようで「出演者・スタッフ含め、どう考えても明らかに僕が映画の経験値が少なかった。社会科見学に訪れている感覚。知らないワードが飛び交うんです」と当時を思い返す。現場では、カメラマンが「パンケーキ持ってきて」と言っているのを聞き「おなか空いているのかな。おやつかな」と思ってしまったが、カメラの下に敷く板だと教えてもらった。初共演の正名さんとは初日に会った際に、膨大な台詞の覚え方について聞き、台本にある自身の台詞以外を声で録音し、自身の台詞は空白にしておいて、それを聴きながら覚えている方法を伝授してもらい、自ら実践して全ての台詞を覚えていったようだ。また、好きな映画の話や家族の話をしたり、水川さんの妻が妊娠して出産する頃であった頃から子育ての話をしていった。改めて「正名さんがいなかったら、僕は途中で飛んでいた、と思います」と話すほどに助けられたようだ。また、同じ吉本興業所属の芸人とも共演しており「基本的に、芸人は僕1人の日が多かったので、僕以外が役者さんで映画に慣れているスタッフだと、ずっと心細かった。芸人が一緒の撮影日は、アメリカで日本人に会ったような感覚になった。それは凄く安心した」と漏らす。とはいえ「劇場で会っている方が現場に来られた時、”こいつ、俳優ぶっているな”と思われるのが嫌で、凄くふざけていましたね、恥ずかしくて」と芸人ならでは心境もあったようだ。
幽霊に憑りつかれてしまう役を演じた水川さん。逆に憑りつくことを想像してみると「ヴィッセル神戸のイニエスタが大好きなので、イニエスタの奥さんに憑りついて、イニエスタのユニフォームを2,3枚持ってきてくれ、と頼もうかな」とリクエスト。なお、大阪には、なんばグランド花月やよしもと漫才劇場での出番で月に1,2回は来ることがあり「合間の時間が出来たら、ヒルトンホテルに入っているヘアサロン大野で散髪をするのと、劇場の近くにありますサウナ&カプセルAMZAに行くのと、劇場近くにある天政に行って肉うどんとかやくご飯のセットを食べたり、劇場の近くにあります一芳亭でしゅうまい定食を頂いたり、劇場の近くにあります松屋で油かすうどんを頂いたりとか、等の過ごし方をしてます」と紹介。なお、ヘアスタイルは「男前にしてください」とオーダーにお任せしているようだ。
改めて、撮影について振り返り「撮影の終盤、路上で撮影撮影しているシーンがあり、過密な日程で朝から晩まで至っており、晩に疲弊して休憩を入れ近くを散歩していたら、偶々ファンの方が声をかけてくれた。僕は疲弊していたので、映画のあるまじきネタバレ・とんでもない情報漏洩をしてしまった。この日まで情報が漏れ伝わることなく、この日を迎えられたので、彼に凄く感謝しています」と弁明し「ファンの民度が高いな。コイツはバカだから言っちゃったんだろうな、と察してくれた」と感謝している。
最後に、注目ポイントとして「ポスターのビジュアルとかタイトルとか予告映像を観てくださった方は、ホラー映画なんじゃないか、という認識を抱いているかもしれないですけど…ジャンルとしては、ホラー映画というではなく、コメディ映画というわけでもなく。ジャンルとしては、分かりづらい。TSUTAYAにDVDを置くとしたら、何処に置いたらいいんだろう、というような作品。様々な角度からも楽しめる作品になっていると思います。観終わった後に、フッと肩の力が抜けるような、明日ちょっと頑張ってみようかな、とフッと気持ちが楽になるような映画になっていると思います」とネタバレを注意しながら、これから作品を鑑賞するお客さんに向けて思いを届け、舞台挨拶を締め括った。
『死に損なった男』が2月21日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のT・ジョイ梅田やなんばパークスシネマ、京都・三条のMOVIX京都や七条のT・ジョイ京都や烏丸御池のアップリンク京都、神戸・岩屋の109シネマズHAT神戸等で公開。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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