2人の思いや時間が永遠に続けばいいな…『きみといた世界』政成和慶監督と南川あるさんを迎え舞台挨拶開催!
クラスメイトに恋心を抱く孤独な男子高校生が、彼女と迷いこんだ謎の世界から元の世界に戻るために試行錯誤する『きみといた世界』が1月11日(土)より大阪・十三のシアターセブンで公開。初日には、政成和慶監督と主題歌を担当した南川あるさんとプロデューサーの赤間俊秀さんを迎え舞台挨拶が開催された。
映画『きみといた世界』は、コミュニケーションが苦手な男子高校生と、彼があこがれるクラスの人気者の女子が、誰もいない世界に迷い込み、元いた場所へ戻るため心を通わせようとする姿を描く青春SFラブストーリー。高校3年生の水野卓は、クラスメイトの吉川碧衣にひそかな恋心を抱いていた。しかし、碧衣はいつも親友や陽キャな男子生徒に囲まれている、スクールカーストの一軍。コミュ障でぼっちの卓は、遠くから眺めていることしかできない。そんなある日、卓と碧衣は他に誰もいない謎の世界に迷い込んでしまう。困惑する2人の前に現れた謎の男が、元いた世界に戻るには2人が「心を合わせる」ことが必要だと教えてくれる。二人は、試行錯誤を繰り返すが…
フリーの映像ディレクターとして活動する政成和慶さんがメガホンを取り、政成監督と幼なじみでもあるイラストレーターのarawakaさんと共同で原作・脚本を担当したオリジナルストーリー。映画版を政成監督が手がける一方、arawakaさんによる漫画版がXなどのSNSで配信されている。碧衣役はファッション誌「ニコラ」のモデルとしてデビューして以降、さまざまな作品に出演してきた中川可菜さん、卓役は映画「パラフィリア・サークル」などに出演してきた高橋改さんが務めた。
上映後、プロデューサーの赤間俊秀さんがMCを担い、 政成和慶監督と南川あるさんが登壇。作品の世界観が伝わってくる舞台挨拶が繰り広げられた。
本作の音楽を担ったKengoさんが所属する事務所の中で主題歌に関するコンペが行われた後に、南川さんが選ばれた。作曲をKengoさんが担い、南川さんが作詞を担当している。主題歌の「永遠であれと」を聞いた政成監督は「映画の世界観直球の詞とメロディが合うかな。そして、声が良かった」とお気に入り。なお、CGが完成していない状態の作品を観てもらった上で作詞をしてもらっており、南川さんは「物語に沿って、卓君の心の移り変わりに注目して書いた作品です」と明かす。政成監督としては「よくここまで世界観を広げて作詞して頂いたなぁ」と感心している。そこで、南川さんは「映画の冒頭と最後には同じシーンがあり、台詞と合わせて印象的だった。観終わった瞬間に、2人の思いや時間が永遠に続けばいいな、と感じられた。2人の思いが印象に残っていたので、キーにしておとなしくなるサビから取り掛かった。あのシーンを基に書いて、そこから主人公の卓君が碧衣ちゃんの視界に入っていない世界から、2人だけの世界になって、卓君と碧衣ちゃんが少しずつ心を通わせる様子、そして2人の気持ちが永遠に続きますように、と書いた。映画のストーリーに沿って、卓君の日記のような歌詞が書けたんじゃないかな」と作詞の経緯を語った。
作中では、視点を変える展開となっていくが、政成監督は「脚本から映像につないだ時、変わってはいない。でも、映像を繋いだ時には視点が変わったな、と思った瞬間はありました。脚本段階では、途中で視点を変える意図はなかった。途中で意図を変えて繋ぎ直した」と説く。南川さんは、好きなシーンとして最初と最後のシーンを挙げると共に、クライマックス前のシーンも取り上げ「心が苦しいですけど、心が動く好きなシーンですね」とお気に入り。政成監督は意識的に劇中での音楽を多く取り入れており「ラストシーンの音楽はずっと流れているので、自然にもっていきたい。そこから南川さんの曲が流れるまでは全体のバランスが良くなるように、音楽を多めに。劇伴のメロディはKengoさんが手掛けており、南川さんの曲もKengoさんがプロデュースしている。全体的に一つの世界観を大事にしたい」と話すと共に「映画は音楽を流し過ぎると評価されないので、迷いながらではありました」と打ち明けた。南川さんとしては「1回目に観た時は、ストーリーや表情に集中してしまう。2回目には音楽が入ってくる。シーンと音楽がマッチしている」と気づき、ご覧になったお客さんに向けて「その時に流れているBGMにも着目して意識しながら観て頂けると、違った楽しみ方があるんじゃないかな」と提案していく。
南川さん自身は、子役出身で芸歴25年目を迎えている。俳優活動をずっとしており「作中で歌ったり、ミュージカルへの出演も一度あったりしたが、歌と芝居が出会ったら、こんな相乗効果があるのか、と感動したのをきっかけに音楽に対する気持ちが高まった。中高では合唱部に入部し音楽漬けの毎日だった。大学ではStreet Corner Symphony(ゴスペラーズを輩出したとアカペラサークル)に所属し、4年間は歌だけ唄っていた。卒業後も芸能の道に進みたかったので、音楽だったら1人でもここまま続けていけるかもなぁ」とシンガーソングライターとしての活動に方向転換していった。女優業を辞めて歌手になったわけではなく「歌も演技も両方できるようになっていきたいな」という思いで活動中だ。なお、2022年にはメジャーデビューしており、オリジナル楽曲も15曲程度も携えている。
「同じ物語で漫画と映画を作りたい」という発想をした政成監督。漫画を担ったarawakaさんとは小学校からの幼馴染で、芸大志望向け予備校に一緒に通っていたこともあった。正月には地元の広島で再会することもあり、とある夜に2人でドライブに出かけ、夜から朝にかけて河川敷で語り合った際に「(同じ原作で)映画と漫画を作ろう」と着想。それ以来、10年もかかりながらの制作に至っている。「漫画と映画にすることによる考え方の違いや、お互いの好みもある。あら筋が決まっても、脚本の書き方は違う。お互いがやりたいことを実現するには時間がかかった」と振り返り「10年といえど、お互いに仕事をしている。週に1度は打ち合わせを出来れば…と話していたけど、出来ない期間もあった。コツコツ続けてきた。挫折しそうになったこともある」と思い返す。とはいえ「冒頭とラストの台詞は変わっていない。そこに至るまでの試行錯誤の日でした」と打ち明け「最初は、空気を読み過ぎてしまう女の子がイケメンの男の子と迷い込む話だった。そこから、コミュ障の男の子が一軍女子の子と迷い込む話に変えた。ラストシーンは、arawakaさんの妻からのアイデアだった」と明かす。
最後に、普段はシンガーソングライターとして活動している南川さんからバースデイツアー(南川ある BIRTHDAY TOUR 2025「あるは芸歴25年目。」1月19日(日)@神戸 C-Lump&UP)を紹介。政成監督は「自由な感想をSNSで書いてもらって広めて頂けたら嬉しいな」とお願いし「東京のお客さんとは感想が違うんじゃないかな」と反応を楽しみにしていた。
映画『きみといた世界』は、関西では、大阪・十三のシアターセブンで公開中。なお、1月12日(日)には政成和慶監督とプロデューサーの赤間俊秀さん、1月18日(土)には、中川可菜さんと高橋改さんと政成和慶監督、1月19日(金)には政成和慶監督を迎え舞台挨拶を開催予定。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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