面白かった！これはアイディアと情熱の勝利である。敵は少女の姿をした謎の怨念。迎え撃つのは認知症気味のおばあちゃん。そして彼女は霊能力者でもなんでもない、ただの後期高齢者なのだ。

『呪怨』を連想するような禍々しい一軒家を舞台にした白石晃士監督の作品とくれば、我々の記憶に蘇るのはあの大傑作『貞子vs加耶子』だ。思い出すな、が無理である。「シャナナナナナ！」と叫びが聞こえてくるはずだ。今回は「バケモンにはバケモンをぶつけんだよ！」ならぬ、ぶつけるのはオバアチャン。呪いの家での攻防が繰り広げられ、尋常ではないテンションと常軌を逸したエネルギーにずっと笑いながら観てしまう。

祖母と孫が呪いと戦う際のルール設定も面白い。人を呪い殺す超常の力にどうやって対抗するのか。「それでいいんだ！？」というパラダイムシフト的な感動すらある。監督の過去作品には霊に金属バットで殴りかかる人物もいたが（物理攻撃が効く、という驚き）、独自の楽しい世界観と今回も地続きになっているのが嬉しい。また、監督のセルフパロディと言うべきメタな小ネタも散りばめられており、長年応援してきたファンには隅々まで楽しめるようになっている。ある名前のキャラの登場シーンとその扱いには、ある作品が大好きな者にとっては、大笑いしてしまうレベルだ。強いて注意点を挙げると、ほんの一部でややインパクトの強い性的なフレーズが何度か飛び交うことに少しギョっとするかもしれないが、そこは苦笑いしつつ受けとめていただきたい。また、意外と白石監督作品において、１０代の少年少女による純情な（「純情な」がとても重要なポイント）ハイスクール・ラブが盛り込まれているのは、本作が初めてのはず。甘酸っぱい青春ドラマとしても楽しめる、人は沢山死んでしまうけど…

公開されている予告への映画ファンの反応はすこぶる良いようで、期待の声がSNS上で多く聞かれており、裏切らない娯楽大作だ。観終わった後味も、白石監督の歴代の作品群で遭遇したような、観客を絶望に叩き落す破滅的なオープンエンドに比べると、かなり爽快ではないだろうか。人は沢山死んでしまうけど。監督自身が「この原作コミックを映画化するのは自分しかいない！」という思い入れで作り上げたというだけあり、白石ワールドが大炸裂である。とはいえこれが監督の作品初体験という一見さんも大丈夫、ハロウィンムービーのようなグロさとナンセンスさで楽しめる、エンタメホラーである。

fromNZ2.0@エヌゼット