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マダガスカルで遺骨を運んでいる人に遭遇した経験を映画化したい…!『ヴァタ~箱あるいは体~』亀井岳監督に聞く!

2024年8月2日

マダガスカルの小さな村を舞台に、出稼ぎ先で亡くなった少女の遺骨を持ち帰る男たちの旅路を、マダガスカルのミュージシャンたちを起用し、神秘的な風景と共に描く『ヴァタ~箱あるいは体~』が8月3日(土)より全国の劇場で公開される。今回、亀井岳監督にインタビューを行った。

 

映画『ヴァタ~箱あるいは体~』は、『ギターマダガスカル』の亀井岳監督が、音楽によって祖先と交わってきたマダガスカルの死生観をもとに、全編マダガスカルロケで撮りあげたロードムービー。亡くなった人物の遺骨を、同郷の者が故郷へ持ち帰るしきたりのあるマダガスカル南東部の村。タンテリとザカ、スル、離れ小屋の親父の4人は、出稼ぎ先で亡くなったタンテリの姉ニリナの遺骨を取りに行くよう村の長老に命じられる。片道2、3日の距離にある村を目指し、それぞれ楽器を手に旅に出た彼らは、その道中で、出稼ぎに行ったまま消息不明になった家族を捜して旅するルカンガの名手レマニンジと出会う。『ギターマダガスカル』に出演したミュージシャン・トミノの一族の3人がタンテリ、ザカ、スルを演じ、離れ小屋の親父役にはバンド「タリカ・サミー」のサミー、レマニンジ役にはマダカスカルの各地方を代表するミュージシャンで結成された「Ny Maragasy Orkestra」のメンバーに選出されたアンタンルイ族のレマニンジを起用。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022で長編部門の観客賞を受賞した。

 

『ギターマダガスカル』撮影時、マダガスカル各地のミュージシャンを追っていた亀井監督。南東部での撮影に向けて移動していた際、長く険しい道のりの中で、箱を担いで運んでいる人達を発見。「ちょっと待って!ちょっと止めてください。何なんやろ?」と尋ねると「骨を運んでいるんだよ」と応えてもらった。詳しく伺うと「遠くで亡くなった親戚の骨を運んでいる」と聞き、印象深く心に響くものになっていく。そこで、『ギターマダガスカル』の作中にも映像が残っているが、それ以上追求することはなかった。その後、作品が完成し、2016年にマダガスカルの首都アンタナナリブで上映する機会があった。改めて、箱を運んでいた人を思い出して再訪し「この出来事をストーリーにして映画にしたいな」と構想。「ドキュメンタリーとして彼等を追わず、目に見えないようなものをファンタジーにして、世界観を表現することにチャレンジしたい」と考え、長編劇映画を作ることにした。

 

脚本に関しては、自身で一通り書き上げ、全カットの画も書き、ストーリーブックとして出来上がっている。亀井監督自身はマダガスカル語を話すことは出来ず、現地の方に理解してもらうには全ての画が必要だった。脚本に関しては、現地の方とも話しており、必要であれば修正も行っている。ロケハンは2回も行っており、その中でキャスティングも実施しており「現地のスタッフにも探してもらいながら苦労を重ね、実際に見たり会ったりしながら決めましたね」と思い返す。「レマニンジは、どうしてもこの人じゃないとダメだった。ニリナは比較的早く決まっていたが、タンテリとかザカやスルがなかなか見つからなかった。良さそうな人はいたけど、どことなく違う」と紆余曲折がありながら、自身の感覚を信じながら、時間をかけて決めていった。

 

撮影では、予想だにしていなかったことを幾つも遭遇することに。あまりにも静かなために、音声スタッフが持つマイクを通じて300~400m離れているところで行われている日常会話まで収録されてしまい、音だけでも容易ではなかった。とはいえ、現地の空気にのみこまれ、皆が意気揚々としていたが、2週間が経過した頃を境に限界となり体調を崩す方が続出。復活したところから撮影を再開することを繰り返しながら取り組んでいくことに。野外での撮影がほとんどであり、雨が降れば撮ることが出来ず、天気にも悩まされる日々だった。基本的に、首都アンタナナリボから遠く離れた南部のエリアで撮っており、首都からやって来たスタッフだけでは無理があり、南部独特のニュアンスを伝えて演出が出来る人にも協力してもらっている。「現地出身のザカでもスルにも演技指導をしてもらいながらやっていましたね。一発OKにするような演技は少なく、時間がかかってでも演じてもらいました」と振り返りながら「タンテリが良かった。抑えた演技を理解して取り組んでいましたね。今でも、凄いな、って思いますね」と感心していた。

 

編集作業に関しては何年もかけて取り組んでおり「商業映画ではないので、締め切りは決まっておらず、何年もかかってしまいましたね」と打ち明け「この映画で起きている出来事を自分で咀嚼していた。それを納得してアウトプットするのにどれだけ時間がかかったのかな。やり尽くした後に、これ以上はないというところにまで行きついたのかな」と本作が完成したことを冷静に振り返る。出来上がった作品は、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022でプレミア上映された。会場では、マダガスカル人やマダガスカル大使館の方に鑑賞して頂いており「とても喜んでくれましたね。マダガスカル人が考えたような映画だ。『これは本当にあなたが考えたのか』と言われることが多いですよね」と初長編劇映画でありながらも手応えを掴んでいる。今回、物語がある作品を初めて制作し、そのおもしろさを実感しており、更なる作品作りを楽しみにしていた。

 

映画『ヴァタ~箱あるいは体~』は、8月3日(土)より全国の劇場で公開。関西では、8月24日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場で公開。また、京都・烏丸の京都シネマでも公開予定。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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