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みらいファームで働く人達の魅力を撮らせて頂きたい…『フジヤマコットントン』青柳拓監督迎え舞台挨拶開催!

2024年4月6日

山梨県の甲府盆地にある、障害福祉サービス事業所みらいファームに集う人々の日常を追ったドキュメンタリー『フジヤマコットントン』が4月6日(土)より関西の劇場でも公開。初日には大阪・十三の第七藝術劇場に青柳拓監督を迎え舞台挨拶が開催された。

 

映画『フジヤマコットントン』は、富士山が見守る甲府盆地の中心部にある障害福祉サービス事業所「みらいファーム」で働く人々の姿を見つめたドキュメンタリー。山梨県中巨摩郡の「みらいファーム」では、温かい雰囲気の中で、さまざまな障害を持つ人たちが思い思いの時間を過ごしている。彼らの日常に目を凝らし、仕事に取り組む姿を見つめていると、花の世話をしたり、絵を描いたり、布を織ったりする手つきに“その人らしさ”が見えてくる。友情、恋心、喪失とそこからの回復など、他者との関わりの中で醸成されていく感情と言葉を丁寧に記録し、時に人生に思い悩みながら生きる彼らの等身大の姿を魅力的に映し出す。監督はコロナ禍に手がけたドキュメンタリー『東京自転車節』が話題となった青柳拓さん。

 

上映後、青柳拓監督が登壇。  監督の思いが真摯に伝わってくる舞台挨拶が繰り広げられた。

 

本作の舞台である、みらいファームは青柳監督の母親が勤めている職場。20年以上も営んでおり、監督の母親は2年目から勤めている。監督自身が母親に連れられて遊びに行っていた場所だ。監督にとっては「障碍者福祉施設であるんですが、障碍者という認識で接していなかった。お世話になっていた先輩、面倒見てもらっていたお兄ちゃんやお姉ちゃんみたいな感覚。お世話になっている関係です」と話す。とはいえ、現場にカメラを持っていくので「違和感や異物感がある」と認識していたが「わりとすんなりと受け入れて頂けました」と安堵。「母が関係性を紡いでいた。日常的に(私の)近況を雑談で話していた」と分かり「その子がいよいよウチに来たのか、ということで、喜んでいただけたのかな」と受けとめている。

 

撮影は、2022年の1年間で行われ「今回の映画は、なんてことない緩やかな日常の中の小さな変化や発見を撮り重ねていくことをしたかった」と振り返り「みらいファームの活動はルーティンなので、なかなか描きづらい。その時に四季の変化があり、みらいファームは綿を使った仕事が多く、種からの成長までの縦軸で1年が大前提として撮り始めました」と思い返す。1年間の撮影は、3人の撮影者で実施している。毎月2週間程度で山梨に通いアパートを借りて合宿しており「楽しかったですよ。1日毎に撮れたものをラッシュで映像の確認をして、明日はどうしようか、と計画していった。アパートは、みらいファームの知り合いを通じて貸してもらった。ゆったりした場所で自分達もリラックスしながら撮り重ねていけたのかな」と懐かしんでいた。

 

3人による撮影にあたり「今回は、みらいファームの日常を複数の人達で撮りたい。同時多発的に起きる出来事を1人では追いきれない。ならば、3人で撮る方法を選びました。僕が大好きな映画『隣る人』は、児童養護施設を3人で撮ったドキュメンタリー。3人で撮る方法が良いなぁ」と言及。基本的な撮影は、カメラ・録音・監督で行う手法があるが「3人が場所と利用者さんと主体的に関わることが大事。撮影者の3人それぞれが興味のある対象を選んで、その場所に伺いコミットする。カメラとその人自身がいることを受け入れてもらいながら、関わるように撮る形式が大事なんじゃないか」と検討。なお、青柳監督と共に伺った2人の撮影者にとっては初めての現場であり、福祉施設に初めて伺う人もおり「撮り手も緊張していますが、撮られる人達も緊張している」と認識し「最初は僕が紹介しながら繋いでいく」と気遣った。さらに「関係性が変容する過程を感じて頂けたらいいなぁ。居させてもらえる場所を探る中で感じ取り、見つけていった。次第に関係性が縮んでいくことを感じてもらえるかなぁ」と提案。青柳監督以外の視点が入っている作品となり「そこに居させてもらって、それぞれが主体的に相互関係を作る。撮るだけでなく、相手からも貰うし、こちらからも日常的な相談や雑談をさせてもらった。主体的に関わることが大事なポイント」と説く。

 

 

みらいファームは賑やかな場所であり「子供の頃は、僕の面倒を見てもらっていたので、色々知っているお兄さん方だった」と覚えていたが、青柳監督が大人になり「興味を持って話を聞いていくと、変わらない部分がある一方で、それぞれに家族の変化による悩みがある」と気づかされた。本作を撮りながら「一緒に作らせてもらえたな」と実感しており「東京の舞台挨拶では、みらいファームの皆が来てくれた。その時に『ボクの映画を観てくれて、ありがとうございました』って言ってくれた」といった出来事が印象深い。なあ、映画の完成前には、関係者向け試写会として、利用者や家族に観てもらっており「喜んでくれる声が多かった。みらいファームの日常を撮れたことが伝わり、良かった」と感慨深げだ。現代においては「福祉の現場に関りがなく、知らない方が多い。知識はあるけど、身体を通した関わりはないかな」と受けとめており「この作品を通して疑似体験で、関わるように映画を観て頂くと嬉しいなぁ」と期待している。

 

映画を撮るきっかけとして「元々、魅力を知っていたので、撮りたい思いが生まれた」と話すと同時に「2016年に起きた相模原障害者施設殺傷事件で植松死刑囚の『障碍者には価値があるかどうか』という言説には、NOなんだ!と言える。一方で、その言説自体がSNSを中心に拡がらせていることに対する違和感と危機感を感じた」と告白。「僕にとっては、のっぴきならないこと。標的にされたような思いを感じて、植松死刑囚に対して何か表明したい」という思いが湧き上がり、みらいファームに足を運んだが「社会的な思いが吹っ飛びました」と明かす。「どんな社会的正義を掲げても、被写体と相対した時、メッセージを伝えるために皆さんを使ってしまうこと自体が失礼に値するんじゃないか。それ以上に、この人達には魅力がある」と感じ「そこにいる人達の魅力を撮らせて頂くことが出来ないか」と願った。最後に「皆さんの身近にある日常の豊かさを再発見して頂けるように」と思いを伝え、舞台挨拶は締め括られた。

 

映画『フジヤマコットントン』は、大阪・十三の第七藝術劇場で公開中。そして、4月12日(金)より兵庫・豊岡の豊岡劇場、4月19日(金)より京都・出町柳の出町座、4月20日(土)より神戸・元町の元町映画館で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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