東京・渋谷でトイレ清掃員として働く男の日々を描いた『PERFECT DAYS』がいよいよ劇場公開!
©2023 MASTER MIND Ltd.
清掃員として働きながら静かな日々を送っていた男が、再会をきっかけに過去に目を向けていく様子をドキュメンタリータッチで描く『PERFECT DAYS』が12月22日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『PERFECT DAYS』は、東京・渋谷を舞台にトイレの清掃員の男が送る日々の小さな揺らぎを描いたドラマ。東京・渋谷でトイレの清掃員として働く平山。淡々とした同じ毎日を繰り返しているようにみえるが、彼にとって日々は常に新鮮な小さな喜びに満ちている。昔から聴き続けている音楽と、休日のたびに買う古本の文庫を読むことが楽しみであり、人生は風に揺れる木のようでもあった。そして木が好きな平山は、いつも小さなフィルムカメラを持ち歩き、自身を重ねるかのように木々の写真を撮っていた。そんなある日、思いがけない再会を果たしたことをきっかけに、彼の過去に少しずつ光が当たっていく。
本作では、『パリ、テキサス』『ベルリン・天使の詩』等で知られるドイツの名匠ヴィム・ベンダースが、役所広司さんを主演に迎えた。東京・渋谷区内17ヶ所の公共トイレを、世界的な建築家やクリエイターが改修する「THE TOKYO TOILET プロジェクト」に賛同したベンダースが、東京、渋谷の街、そして同プロジェクトで改修された公共トイレを舞台に描いた。共演に新人の中野有紗さんのほか、田中泯さん、柄本時生さん、石川さゆりさん、三浦友和さんら。2023年の第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、役所さんが日本人俳優としては『誰も知らない』の柳楽優弥さん以来19年ぶり2人目となる男優賞を受賞した。また、カンヌ国際映画祭では男優賞とあわせ、キリスト教関連の団体から、人間の内面を豊かに描いた作品に贈られるエキュメニカル審査員賞も受賞している。
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映画『PERFECT DAYS』は、12月22日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマや難波のTOHOシネマズなんば、京都・二条のTOHOシネマズ二条や七条のT・ジョイ京都や烏丸の京都シネマ、神戸・三宮のkino cinema 神戸国際やシネ・リーブル神戸等で公開。
渋谷でトイレの清掃員として働く平山の日々を淡々と追いかけていく本作…と聞くと、ジム・ジャームッシュ監督の『パターソン』のような作品!?かと思っていたが…そこは、ドイツの名匠ヴィム・ベンダースが手掛けると、一味違った作品だと気づかされてしまう。まずは、平山による丁寧なトイレ清掃というお仕事に注目。これだけ事細かで丁寧に掃除して頂けたら、心地良くトイレが使えそうだ。とはいえ、トイレは日々不特定多数の人々が使用する施設。掃除中も様々な人が訪れるが、相手にどう思われようとも、気づかれることがなくとも、失礼のない仕事ぶりだ。そんなお仕事の中でも、ちょっとした楽しみや驚きがあるから、仕事に飽きることがないのだろう。そして、仕事以外でも、決して派手なことをせず、ミニマリストの如く、欲を出さず、周囲にある小さな営みを楽しんでいる。すると、彼は如何にしてこのような生活を営むことになったのか気になってしまう。気づけば、平山の過去がうっすらと見え隠れする。ひょっとしたら、こんなことがあったのかな、と思いを巡らしてしまう。それでも、今の彼がこの生活に満足しているなら、何も問題はないのかもしれない。彼が仕事に向かう傍らには、ルー・リード、ザ・ローリング・ストーンズ、ザ・キンクス…といったアーティストの穏やかで安らぎにも感じられる楽曲がカセットテープを通して寄り添っていく。その中には、金延幸子さんまであり、ヴィム・ベンダースの選曲には脅かされるばかり。是非とも、名盤のカセットテープによるジャケットがスクリーンに映ることも音楽好きは楽しみにしておいてほしい。こんな充実した日々を見せてもらうと、決して毎日が同じではなく、新しきことをいくらでも見出す日々を送ることが出来るのだからこそ『PERFECT DAYS』というタイトルが見事に合っていた。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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