ピンク映画業界で生きる映画監督と脚本家志望だった男が女優との奇縁によって交錯していく『花腐し』がいよいよ劇場公開!
©2023「花腐し」製作委員会
廃れゆくピンク映画界の映画監督と脚本家志望の男、彼らが思いを寄せる女優の人生が交錯する様を描く『花腐し』が11月10日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『花腐し』は、ふたりの男とひとりの女が織りなす切なくも純粋な愛を描く。廃れつつあるピンク映画業界で生きる監督の栩谷は、もう5年も映画を撮れずにいた。梅雨のある日、栩谷は大家からアパート住人に対する立ち退き交渉を頼まれる。その男である伊関はかつて脚本家を目指していた。栩谷と伊関は会話を重ねるうちに、自分たちが過去に本気で愛した女が同じ女優である祥子であることに気づく。3人がしがみついてきた映画への夢が崩れはじめる中、それぞれの人生が交錯していく。
本作は、『火口のふたり』の荒井晴彦監督が綾野剛さんを主演に迎え、芥川賞を受賞した松浦寿輝さんの小説を実写映画化。原作に“ピンク映画へのレクイエム”という荒井監督ならではのモチーフを取り込んで大胆に脚色している。綾野さんが栩谷を演じ、『火口のふたり』にも出演した柄本佑さんが伊関役、『愛なのに』のさとうほなみさんが祥子役で共演した。
©2023「花腐し」製作委員会
映画『花腐し』は、11月10日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田や難波のなんばパークスシネマ、京都・烏丸御池のアップリンク京都、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸等で公開。
芥川賞を受賞した松浦寿輝さんの小説が原作となった本作。小説では、友人に裏切られて会社倒産の危機に直面している、という設定の栩谷が主人公となっている。荒井晴彦さんは、大胆に脚色し、5年も新作を撮れずにいたピンク映画の監督という設定にした。荒井さんならではの映画愛を込めているように思えてしまう。荒井さんと実際に話してみたら、フッと笑っていそうだけど。そして、栩谷が出会う伊関という男は、バブルで巨額の借金を負いながらも、”幽霊屋敷”のようなアパートに住み続けている、という設定。本作では、今となっては”幽霊”のような存在となった祥子に思いを馳せるしかない脚本家志望の男という設定になっており、なんとも趣深いキャラクターであった。この2人が、祥子という存在によって偶然のような運命のような邂逅をしていく物語を綴っていくのが興味深いストーリーテリングだ。双方の物語を見せながらも、2人の関係性がどうなっていくのか、それを想像しながら本作を観ていくと、実に味わい深い芸術作品であると気づかされる。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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