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2017年に起きた実際の事件を基に、追い詰められた高校生の労働環境を探る『あしたの少女』がいよいよ劇場公開!

2023年8月21日

©2023 TWINPLUS PARTNERS INC. & CRANKUP FILM ALL RIGHTS RESERVED.

 

大手通信会社の実習生の少女の死と、死の真相を追う刑事の姿を描く『あしたの少女』が8月25日(金)より全国の劇場で公開される。

 

映画『あしたの少女』は、ごく普通の少女が過酷な労働環境に疲れ果て自死へと追い込まれていく姿をリアルに描いた社会派ドラマ。高校生のソヒは、担任教師から大手通信会社の下請けであるコールセンターを紹介され、実習生として働き始める。しかし会社は従業員同士の競争を煽り、契約書で保証されているはずの成果給も支払おうとしない。そんなある日、ソヒは指導役の若い男性が自死したことにショックを受け、神経をすり減らしていく。やがて、ソヒは真冬の貯水池で遺体となって発見される。捜査を開始した刑事ユジンはソヒを死に追いやった会社の労働環境を調べ、根深い問題をはらんだ真実に迫っていく。

 

本作では、『私の少女』のチョン・ジュリ監督とペ・ドゥナが再タッグを組み、2017年に韓国で起こった実在の事件をモチーフに描く。ペ・ドゥナが刑事ユジンを演じ、少女ソヒ役には新進女優キム・シウンを抜擢。2022年の第23回東京フィルメックスのコンペティション部門で審査員特別賞を受賞した。

 

©2023 TWINPLUS PARTNERS INC. & CRANKUP FILM ALL RIGHTS RESERVED.

 

映画『あしたの少女』は、8月25日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・心斎橋のシネマート心斎橋、神戸・三宮のkino cinema 神戸国際等で公開。

観ているうちに感情移入が募っていき、ラストではただ溜息が漏れる。とても丁寧に作られた、誠実さと力強さを感じる作品だと感じた。今年に鑑賞した韓国映画の中でベスト入りの一本だ。

 

物語は大きく2つのパートで構成されている。舞台は2017年、前半では就職斡旋のため大手企業のコールセンターで実習生として働き始める高校生ソヒを主人公として、10代の少女が劣悪な労働環境で心を病んでいく様子を、何かが狭い箱にゆっくりと押し込められていくように、小さな描写を積み上げながら描いていく。そして、後半では、事件の捜査が始まる。ユジン刑事を演じるペ・ドゥナが最初に現れるシーンが絶妙で、ミステリー映画や小説好きな方なら主人公の登場シーンの演出にゾクゾクするはずだ。ソヒはどこで誰と会い、何を感じて悩んでいたのか。少女の辿った軌跡を追い、プロファイラーのような捜査をするユジン。事件の詳細を知っていくにつれて、変化していく彼女の表情を表現するペ・ドゥナの演技が素晴らしい。

 

ユジンは、実際にこんなに正義感のある刑事がいるのだろうか?というほどに真っすぐに事件に切り込んでいく。当たり前の正しいことを、しかし現実では誰もが言いにくい、行動に起こしにくいことを代弁してくれる勇敢な姿は、そのままチョン・ジュリ監督からのメッセージなのだと受け止めたい。コールセンター業務の厳しさは、近年の韓国映画『おひとりさま族』等でも同様に描かれている。顔の見えない顧客が(恐らくは対応するのが若い女性であるのをいいことに)、対等の相手ならありえないような高圧的な態度で接してくる。大きなストレスを受ける業務だが、それでも働き手の需要は常にあり、離職者も多いためさらに次の誰かがこの仕事に就く…という事情は現実の問題なのだろう。

 

前作『私の少女』でも、緊張感に満ちた社会派のストーリーながら、サスペンスドラマとしても観客を魅了したチョン・ジュリ監督とペ・ドゥナが再び共に作り上げた作品ということでファンには期待度は高いが、前作を未見の方もできれば鑑賞しておくことをお勧めしたい。物語に『私の少女』との直接のつながりはなく登場人物も別物だが、前作を観ておくと監督の一貫してブレないテーマがより強く響くだろう。誰か特定の悪意のある個人のせいではなく、社会全体の搾取構造と利己的な個人の行動、その歯車たちのかみ合わなさが軋んでいき、そこに巻き込まれる弱者たちの苦しみを描き切る語り口は本当に見事だ。

 

原題は韓国語で「次のソヒ(다음 소희)。英語タイトルも「next Sohee」である。ソヒのような思いをする子どもが二度と出ないように、という切実な思いを感じると共に、次のソヒのような存在はすぐそこに、どこにでも居るのだ、という警告にも思えて胸が痛む。必見の力作だ。

fromNZ2.0@エヌゼット

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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