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バンドが動いているロードムービーを松尾さんは作りたかったんじゃないかな…『ドキュメント サニーデイ・サービス』曽我部恵一さんに聞く!

2023年7月9日

©2023 ROSE RECORDS / SPACE SHOWER FILMS

 

CDデビューから30年を迎えるロックバンド、サニーデイ・サービスを2020年の春から追ったドキュメンタリー『ドキュメント サニーデイ・サービス』が関西の劇場でも7月21日(金)より公開。今回、曽我部恵一さんにインタビューを行った。

 

映画『ドキュメント サニーデイ・サービス』は、2023年にCDデビュー30周年を迎えたロックバンド「サニーデイ・サービス」のドキュメンタリー。1992年に曽我部恵一さんと田中貴さんらを中心に結成されたサニーデイ・サービス。1994年にメジャーデビューを果たし、翌1995年にはファーストアルバム「若者たち」を発表。その後、怒涛の楽曲制作と突然の解散、ソロ活動、インディレーベル設立、再結成、そしてメンバーとの死別や新メンバー加入など、波乱万丈な道を歩んできた。今回、「キャノンボール」シリーズのカンパニー松尾監督が、2020年春から2021年秋までの活動を追う。さらに、メンバーや関係者によるバンドの歴史と解説、初公開映像を含む新旧ライブシーンを織り交ぜながら、サニーデイ・サービスの1990年代から現在までを振り返る。小泉今日子さんがナレーションを担当した。

 

以前、LIVE映画のようなものを自身で制作し期間限定でYouTubeで公開した曽我部さんは「これを映画館で上映できないか」とスペースシャワーTVに相談してみると「ドキュメンタリーを制作してみませんか?」と提案を受けた。さらに「監督は、カンパニー松尾さんが良いんじゃないか」とプロデューサーの高根順次さんから挙げてもらい、ドキュメンタリーの部分を増やし、新たな作品の制作を決断する。2019年に川本真琴さんの「新しい友達 II」のMVに曽我部さんが出演した際に、カンパニー松尾さんが監督しており、そこで、2人は初めて一緒に仕事をした。曽我部さんは以前からカンパニー松尾さんを存じていたが、初めて仕事をした時に「松尾さんの仕事ぶり、映像の作り方やディレクションの仕方を初めて見た。無茶苦茶丁寧な方なんだな」と知り「映像制作をする方は様々で、感性で作る方もいる。松尾さんはバランスが良く、総合的に丁寧に制作する方。僕には意外だった。天才肌で、感覚的な人だと思っていたが、ロジカルで丁寧で情熱的かつ人間的な映像作家だと知った」と振り返る。本職はAV監督であるカンパニー松尾さんだが「そういう方がバンドを撮るとなったら、ドキュメンタリー映画監督やMV監督が撮る時とは違う特別な科化学変化が起こる」と可能性を感じ、どういった作品になるか未知数の中で撮ってもらうことになった。

 

撮影を始めるにあたり「何でも撮ってください」と伝えており、曽我部さんが自宅で寝ている姿を撮られても構わない心意気で臨んでいる。「インタビューというより、松尾さんと世間話をしていた」という感覚で撮られており「これがそのまま使われるとは思っていなかった」と驚いた。サニーデイ・サービスの過去についても聞かれており「もっと作品に入れられるかな」と思っていたが「意外とあっさりしていた」という手応えであり「当時の僕は、バンドの内情を隠さないといけないとは思っていなかった。十分に考えた上で、松尾さんが持っているサニーデイ・サービスの姿を見せてくれているのかな」と察している。「様々な深い話をしたけど、松尾さんの中のバランスで作り上げてくれている。抉る感じはない。どろどろとした話がなかったわけではないが、そういった作品にはならなかった」と好印象で「楽しいドキュメンタリーになっている。バンドを深く掘り下げて、バンドの様々な葛藤に光を当て過ぎない。バンドが動いているロードムービーを松尾さんは作りたかったんじゃないかな」と受けとめていた。

 

2020年春から始めた撮影だが、いきなりコロナ禍になり緊急事態宣言が発令される頃から始まることとなり、曽我部さん含めスタッフの誰も皆が想定外の状況を迎えることに。「ツアーが始まり松尾さんが付いてきてくれて、LIVEや移動の様子を撮ってもらい1本のドキュメンタリーが仕上がる」と思っていたら、全く何も出来ず「それは大変でしたね。どうしたらいいんだろう。映画どころではなかった」と困惑。だが、松尾さんはカメラを回しており「そこから始まっていく。徐々にLIVEが出来るようになり今は普通に戻った。その過程も松尾さんは全部撮っている」と信頼を寄せている。なお、最初に撮影期間を決めておらず、松尾さんは「自分が『撮れた!』と思ったら終わりです」と伝えており、曽我部さんは「松尾さんの中でココというのがあったんでしょうねぇ」と思い返す。「最初は、ツアーを1周したら終わり、と皆が思っていた。だか、そういうものにはならなくなった。コロナ禍があり、バンドが止まったところからスタートする」と認識し「松尾さんの中では、ここまで撮りたい、というものがあり、しつこく2年半もずっと撮ってくれていた」と感慨深い。

 

また、サニーデイ・サービスを知る多くの関係者からバンドの歴史や逸話が語られている本作。特に、やついいちろうさんは真正面からのコメントを放っている。曽我部さんは、やついさんが芸人としてデビューする前の駆け出しの頃から存じており「当時、お笑いをやっているファンがいる、ということから知り合った。学生時代からお笑い芸人として一般に認知されていく過程も全部知っている」と明かす。同時に、やついさん自身が、サニーデイ・サービスが解散し曽我部さんがソロ活動を始め、ROSE RECORDSを起ち上げる頃も知っており「再結成から現在に至るまで現場に近いところで全て知っている人。知り合った時は、ファンの一人だったが、今作の中では、バンドが駄目になっていく様をやついさんが語る役を担ってくれた。解散前について語っている内容は事実」だと説く。関係者の方々がそれぞれに関する話をしたが、今作ではやついさんが語った内容が使われている。関係者の中で誰にインタビューするか、についても松尾さんが選んでおり、曽我部さんは「こちらから全てお任せしており、依頼はしていない。皆、長く撮らせてもらい、上手く使われている。きっと様々な話を聞いているはず」と話す。なお、曽我部さん自身のことについては本作には収録されていない。「僕のドキュメンタリーではなくバンドのドキュメンタリー。バンドを語る時、僕を語ることが多くなる」と認識しているが「そうじゃなく、松尾さんは、バンドのドキュメンタリーに拘ったんじゃないかな。僕の生活や人生をそこまでフィーチャーしなかったんじゃないかな」と考えている。

 

2年半の撮影を経て、松尾さんによる編集作業が行われた。曽我部さんは、編集作業中に直しの依頼等含め一切口出しをしていない。完成直前に粗編集版を見せてもらい「これは、おもしろいっすねぇ。こういうものが出来るんだ。やっぱり松尾さんで良かったな」と感心。出来上がった作品を拝見し「素晴らしいです。ありがとうございました」という気持ちしかなかった。「自分のドキュメンタリーは冷や冷やする。恥ずかしい部分もある。格好いいものになってしまう可能性もある。バンド像が自分達から離れていってしまう可能性もある」と冷静になりながらも「そういったことが一切なく楽しい、おもしろい。良かったなぁ。」と大いに気に入っている。曽我部さん自身が映画好きで「自分の中で特別なもの」と位置付けており「自分が映画になることが不思議。映画館で上映されることは緊張しますね」と今から楽しみだ。

 

本作を観るファンに向けて「今のバンドの姿がある。CDデビューして30年経ちますが、30年経ったバンドの姿がここにある。等身大の姿はなかなか観られない。LIVEは等身大だけど、自分達は自信がある。そういうものをでっかいスクリーンで大きい音で楽しんでもらえたら嬉しいな。是非劇場で観て下さい」とメッセージも頂いた。現在の心境として「アルバムを作ってツアーをしたいなぁ、とこれまでも今もずっと思っている。今はツアー中ですが、また次のアルバムをすごいものを作りたいな、というのが一つの夢」と述べ「毎回良い曲を作ってアルバムにして皆に楽しんでもらって喜んでほしいし、びっくりしてほしいことをいつも考えてやっている。バンドとしては、良い作品を1枚でも多く作りたいことしかない」と未来を楽しみにしている。

 

映画『ドキュメント サニーデイ・サービス』は、関西では、7月21日(金)より大阪・心斎橋のシネマート心斎橋や京都・九条の京都みなみ会館、7月22日(土)より神戸・元町の元町映画館で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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